18:15 〜 19:30
[SEM33-P10] 日本における誘導電磁場の分布
キーワード:電磁誘導, 地磁気誘導電流, インピーダンステンソル
日本は中緯度帯に位置するため地磁気誘導電流の振幅は小さいと考えられており、これまで地磁気誘導電流による災害の報告例はない。しかしながら、日本は海に囲まれており、海岸付近では海水と岩石が接して電気伝導度が急激に変化するため大きな電位差が誘導されることが予想される(海岸線効果)。社会インフラが整った過去数十年間には体験したことがないような大規模な地磁気擾乱が発生した場合に、どこでどのような地磁気誘導電流が生じるのか、あらかじめ調べておく必要がある。そのために、まずは、地表に誘導される電磁場の現実的な分布を調べることにした。
我々は、Uyeshima and Schultz (2000)の有限差分法コードを利用して、磁気圏の地磁気変化が3次元的な電気伝導度分布を持つ地球表面に誘導する地磁気・地電場を周波数領域で計算した。計算に用いた周期は、200秒、800秒、3600秒である。グリッドに関しては、日本地域の詳細な地磁気・地電場分布を調べるのが目的であるので、25oN-50oN、125oE-150oEの範囲については12.5km x12.5kmの一様グリッド、この範囲外では徐々に大きくなるグリッドを用いている。
地球の電気伝導度分布については、海底地形データ(ETOPO1)と堆積物の厚さ分布データ(Laske and Masters, 1997)を用いて地表面から深度12.5kmまでの3次元的な電気伝導度分布を求め、12.5km以深については成層構造を仮定した。深度12.5kmまでは、海水と堆積物の電気伝導度をそれぞれ3、0.1S/mとし、岩石の電気伝導度は0.01、0.001S/mの2通りを用いて、グリッド内に異なる物質の境界があるときにはグリッド内でコンダクタンスが保存するように電気伝導度を定めた。
誘導源となる地磁気擾乱は、地球半径の10倍の位置に環電流を置いた場合に生じる磁場を用いた。赤道環電流であれば、日本地域には南北方向の変動をもたらすことになる。あらゆる方向の変動に対応させるために、環電流の方向を赤道面に対し30度あるいは60度傾けた場合の計算も行った。
周期ごと、岩石の電気伝導度ごとに、ある場所において、すべてのソース電流パターンでの計算の中から最も振幅が大きな誘導電場を選び、それらを統合して、日本地域の最大誘導電場分布図を作成した。それによると、日本の海岸を縁取るように大きな振幅の誘導電場が得られ、岩石の電気伝導度が0.01S/mよりも0.001S/mの場合のほうが振幅が大きかった。電場の最大振幅は、0.001S/mで半無限一様な地球の場合と比べて、約2倍となる。また、振幅は短周期のほうが大きい場合が多い。これは海岸線効果から予想される誘導電場と調和的である。特に、津軽~渡島半島、富山湾、伊豆半島、南九州東岸において大きな誘導電場が得られたが、これらの地域では、いずれも海が遠浅ではないという特徴があった。加えて、(1)ソース磁場が海岸線の方向と平行なときに海岸線沿いに大きな振幅が現れる、または、(2)湾型構造の走行がソース磁場と平行なときに湾奥で電流の集中が起こる、という現象が見られた。
磁場について分布を見ると、電気伝導度の不均質を反映して、非一様な分布となった。赤道環電流ソースの場合、日本の地表面での東西方向の磁場変化は非常に小さいが、鉛直方向には海岸線を中心とし振幅が大きな場所が見られる。南北成分については、海岸線が南北方向に分布する東北や九州では一様電気伝導度の場合に似ているが、関東~中国地方にかけて一様な場合よりも弱められている。
続いて、計算で得られた地磁気・地電位からインピーダンステンソルを計算し、日本地域での分布を求めた。このモデルでは地形と堆積物分布による不均質しか考慮していないにも関わらず、複雑な応答関数分布が得られ、海水・堆積物の分布が誘導電磁場に非常に大きな影響を及ぼしていることがわかる。例えば、北海道では、道南、道北、日高・十勝、道東のように、インピーダンステンソルの振る舞いがブロック化されており、ネットワークMTによる電場分布の特徴(Uyeshima et al., 2001)を大雑把に表現しているように見える。全体的に、磁場ソースが海岸線に平行な場合と垂直な場合で応答関数の振る舞いが異なっており、結果的に地方ブロックが構成されている。日本での構造探査における3次元的な観測や解釈の必要性が改めて示された。
柿岡、鹿屋、女満別のMT応答関数の実測(Fujii et al., submitted)と比較すると、定性的には特徴を再現できているが、振幅や項ごとの振る舞いには差があることがわかった。各地域の正確な地磁気・地電場が必要な場合は、より詳細な3次元モデルが必要であると考えられる。そのためには、日本各地の電気伝導度分布のデータベース化が望まれる。
我々は、Uyeshima and Schultz (2000)の有限差分法コードを利用して、磁気圏の地磁気変化が3次元的な電気伝導度分布を持つ地球表面に誘導する地磁気・地電場を周波数領域で計算した。計算に用いた周期は、200秒、800秒、3600秒である。グリッドに関しては、日本地域の詳細な地磁気・地電場分布を調べるのが目的であるので、25oN-50oN、125oE-150oEの範囲については12.5km x12.5kmの一様グリッド、この範囲外では徐々に大きくなるグリッドを用いている。
地球の電気伝導度分布については、海底地形データ(ETOPO1)と堆積物の厚さ分布データ(Laske and Masters, 1997)を用いて地表面から深度12.5kmまでの3次元的な電気伝導度分布を求め、12.5km以深については成層構造を仮定した。深度12.5kmまでは、海水と堆積物の電気伝導度をそれぞれ3、0.1S/mとし、岩石の電気伝導度は0.01、0.001S/mの2通りを用いて、グリッド内に異なる物質の境界があるときにはグリッド内でコンダクタンスが保存するように電気伝導度を定めた。
誘導源となる地磁気擾乱は、地球半径の10倍の位置に環電流を置いた場合に生じる磁場を用いた。赤道環電流であれば、日本地域には南北方向の変動をもたらすことになる。あらゆる方向の変動に対応させるために、環電流の方向を赤道面に対し30度あるいは60度傾けた場合の計算も行った。
周期ごと、岩石の電気伝導度ごとに、ある場所において、すべてのソース電流パターンでの計算の中から最も振幅が大きな誘導電場を選び、それらを統合して、日本地域の最大誘導電場分布図を作成した。それによると、日本の海岸を縁取るように大きな振幅の誘導電場が得られ、岩石の電気伝導度が0.01S/mよりも0.001S/mの場合のほうが振幅が大きかった。電場の最大振幅は、0.001S/mで半無限一様な地球の場合と比べて、約2倍となる。また、振幅は短周期のほうが大きい場合が多い。これは海岸線効果から予想される誘導電場と調和的である。特に、津軽~渡島半島、富山湾、伊豆半島、南九州東岸において大きな誘導電場が得られたが、これらの地域では、いずれも海が遠浅ではないという特徴があった。加えて、(1)ソース磁場が海岸線の方向と平行なときに海岸線沿いに大きな振幅が現れる、または、(2)湾型構造の走行がソース磁場と平行なときに湾奥で電流の集中が起こる、という現象が見られた。
磁場について分布を見ると、電気伝導度の不均質を反映して、非一様な分布となった。赤道環電流ソースの場合、日本の地表面での東西方向の磁場変化は非常に小さいが、鉛直方向には海岸線を中心とし振幅が大きな場所が見られる。南北成分については、海岸線が南北方向に分布する東北や九州では一様電気伝導度の場合に似ているが、関東~中国地方にかけて一様な場合よりも弱められている。
続いて、計算で得られた地磁気・地電位からインピーダンステンソルを計算し、日本地域での分布を求めた。このモデルでは地形と堆積物分布による不均質しか考慮していないにも関わらず、複雑な応答関数分布が得られ、海水・堆積物の分布が誘導電磁場に非常に大きな影響を及ぼしていることがわかる。例えば、北海道では、道南、道北、日高・十勝、道東のように、インピーダンステンソルの振る舞いがブロック化されており、ネットワークMTによる電場分布の特徴(Uyeshima et al., 2001)を大雑把に表現しているように見える。全体的に、磁場ソースが海岸線に平行な場合と垂直な場合で応答関数の振る舞いが異なっており、結果的に地方ブロックが構成されている。日本での構造探査における3次元的な観測や解釈の必要性が改めて示された。
柿岡、鹿屋、女満別のMT応答関数の実測(Fujii et al., submitted)と比較すると、定性的には特徴を再現できているが、振幅や項ごとの振る舞いには差があることがわかった。各地域の正確な地磁気・地電場が必要な場合は、より詳細な3次元モデルが必要であると考えられる。そのためには、日本各地の電気伝導度分布のデータベース化が望まれる。