16:45 〜 17:00
[SSS30-22] 2011年東北地方太平洋沖地震の余効すべりに伴う小繰り返し地震の出現・規模変化・消失
キーワード:繰り返し地震, 2011年東北沖地震, 震源再決定, 条件付き安定領域, 余効すべり
ほぼ同じ場所で繰り返し発生する性質を持つ小繰り返し地震は,断層面の小固着域が繰り返し破壊することにより発生すると考えられている.しかし,固着域の詳細な構造や,規模や繰り返し間隔の不規則性の原因については不明なことが多い.
Chen et al. (2010) とUchida et al. (2015) は,それぞれParkfieldと東北沖で,大地震の余効すべり域において,本震後の小繰り返し地震のマグニチュードが系統的に大きくなった事例を報告している.このようなふるまいの解釈の1つとしては,余効すべりにより小繰り返し地震を発生させる固着域へのloading rateが速くなったことによって,固着域の周囲に存在する条件付き安定領域が地震性すべりを起こすようになり,地震時すべり域が大きくなったことが考えられる.条件付き安定領域のふるまいがこのような応力擾乱によってどのように変化するかを知ることは,プレート境界地震の発生メカニズムを解明するために重要である.
本研究では,岩手県宮古市沖の小領域について震源再決定を行い,2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)前後における地震活動の経時的変化の特徴を調べた.小領域は,深さ約40kmのプレート境界付近で発生している繰り返し地震クラスターを中心として設定した.また,この地域は東北沖地震による余効すべりが非常に大きかったと考えられている(e.g., Ozawa et al., 2012).
震源再決定には,Double Difference法 (Waldhauser and Ellsworth, 2000) を用いた.はじめに,気象庁の読み取り値を用いて比較的広域の震源を再決定した上で,クラスターに含まれる地震を選定した.次に,選定した地震について,波形のクロススペクトルにより求めた到達時刻差を用いて,より高精度に震源再決定を行った.
東北沖地震以前は,M2.5-2.9の地震(Group A)がほぼ同じ場所で繰り返し発生しており,その繰り返し間隔は9~12ヶ月程度で安定していた.また,その周りおよそ5kmでは,M2.0以上の地震は発生していなかった.
東北沖地震以後,地震活動に以下の3つの大きな変化が見られた.
(1) 東北沖地震以前に繰り返し発生していたGroup Aと同じ場所で,M3.0を超える地震が非常に短い時間間隔で繰り返し発生するようになった(2011年3月から12月の間に11回).
(2) 東北沖地震以前に地震が発生していなかった領域で,東北沖地震後に繰り返し地震が発生するようになった.具体的には,Group Aの北西でM3.2-3.9の地震(Group B),北東でM2.2-4.4の地震(Group C)が発生していた.Group A-Cのセントロイドは,互いに1km以内に存在していた.
(3) これらの繰り返し地震は時間の経過とともにマグニチュードが小さくなっていく傾向があった.また,Group Cは,2012年1月1日のM2.2の地震を境に起こらなくなった.
(1) の現象は,Chen et al. (2010) やUchida et al. (2015) でも報告されており,loading rateが速くなったことにより,東北沖地震以前に地震時すべりを起こしていた領域に加えて,その周りの条件付き安定領域も一緒にすべったと考えられる.(2) の現象は,今回新たに見つかった現象で,東北沖地震前は非地震性すべりのみが生じており,地震性すべりを起こさなかった条件付き安定領域が,loading rateが速くなったことによって地震性すべりを起こすようになったと解釈できる.(3) の現象は,本震からの経時的なloading rateの減速と共に,条件付き安定領域の中で地震性すべりを起こす部分が小さくなっていったことを示すと考えられる.
Loading rateの違いによるプレート境界のすべり様式の変化は,規模の変化だけではなく,時には繰り返し地震の出現や消失をも引き起こすようだ.このことは,東北沖のプレート境界のモデル化に大きな制約を与えるものである.
謝辞:本研究では,気象庁一元化カタログを使用しました.また,東北大の観測点に加え,防災科学技術研究所のHi-net,北海道大,弘前大の観測点で得られた波形を使用しました.
Chen et al. (2010) とUchida et al. (2015) は,それぞれParkfieldと東北沖で,大地震の余効すべり域において,本震後の小繰り返し地震のマグニチュードが系統的に大きくなった事例を報告している.このようなふるまいの解釈の1つとしては,余効すべりにより小繰り返し地震を発生させる固着域へのloading rateが速くなったことによって,固着域の周囲に存在する条件付き安定領域が地震性すべりを起こすようになり,地震時すべり域が大きくなったことが考えられる.条件付き安定領域のふるまいがこのような応力擾乱によってどのように変化するかを知ることは,プレート境界地震の発生メカニズムを解明するために重要である.
本研究では,岩手県宮古市沖の小領域について震源再決定を行い,2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)前後における地震活動の経時的変化の特徴を調べた.小領域は,深さ約40kmのプレート境界付近で発生している繰り返し地震クラスターを中心として設定した.また,この地域は東北沖地震による余効すべりが非常に大きかったと考えられている(e.g., Ozawa et al., 2012).
震源再決定には,Double Difference法 (Waldhauser and Ellsworth, 2000) を用いた.はじめに,気象庁の読み取り値を用いて比較的広域の震源を再決定した上で,クラスターに含まれる地震を選定した.次に,選定した地震について,波形のクロススペクトルにより求めた到達時刻差を用いて,より高精度に震源再決定を行った.
東北沖地震以前は,M2.5-2.9の地震(Group A)がほぼ同じ場所で繰り返し発生しており,その繰り返し間隔は9~12ヶ月程度で安定していた.また,その周りおよそ5kmでは,M2.0以上の地震は発生していなかった.
東北沖地震以後,地震活動に以下の3つの大きな変化が見られた.
(1) 東北沖地震以前に繰り返し発生していたGroup Aと同じ場所で,M3.0を超える地震が非常に短い時間間隔で繰り返し発生するようになった(2011年3月から12月の間に11回).
(2) 東北沖地震以前に地震が発生していなかった領域で,東北沖地震後に繰り返し地震が発生するようになった.具体的には,Group Aの北西でM3.2-3.9の地震(Group B),北東でM2.2-4.4の地震(Group C)が発生していた.Group A-Cのセントロイドは,互いに1km以内に存在していた.
(3) これらの繰り返し地震は時間の経過とともにマグニチュードが小さくなっていく傾向があった.また,Group Cは,2012年1月1日のM2.2の地震を境に起こらなくなった.
(1) の現象は,Chen et al. (2010) やUchida et al. (2015) でも報告されており,loading rateが速くなったことにより,東北沖地震以前に地震時すべりを起こしていた領域に加えて,その周りの条件付き安定領域も一緒にすべったと考えられる.(2) の現象は,今回新たに見つかった現象で,東北沖地震前は非地震性すべりのみが生じており,地震性すべりを起こさなかった条件付き安定領域が,loading rateが速くなったことによって地震性すべりを起こすようになったと解釈できる.(3) の現象は,本震からの経時的なloading rateの減速と共に,条件付き安定領域の中で地震性すべりを起こす部分が小さくなっていったことを示すと考えられる.
Loading rateの違いによるプレート境界のすべり様式の変化は,規模の変化だけではなく,時には繰り返し地震の出現や消失をも引き起こすようだ.このことは,東北沖のプレート境界のモデル化に大きな制約を与えるものである.
謝辞:本研究では,気象庁一元化カタログを使用しました.また,東北大の観測点に加え,防災科学技術研究所のHi-net,北海道大,弘前大の観測点で得られた波形を使用しました.