[M-IS34] 古気候・古海洋変動

[MIS34-P15] 岐阜県郡上市で採集された石筍OT02の酸素同位体気候記録

ポスター講演3分口頭発表枠

*狩野 彰宏¹、森 大器¹、曽根 知実²、沈 川洲³、柏木 健司⁴ (1.九州大学、2.マリンワークジャパン、3.台湾大学、4.富山大学)

岐阜県郡上市で採集した長さ13cmの石筍OT02は，最終氷期の長いハイアタスを境に，上部5.3cmが完新世に，下部7.7cmが Marine isotopic stage 3 (MIS-3) に形成したものである。完新世とMIS-3の酸素同位体比の値を比較すると，M1S-3の方が0.5-1.0パーミルほど高く，この差は中国南部の石筍と同等である。郡上市における降水量は７-９月に最も多くなっていることから，この石筍記録は夏期モンスーン時の降水強度の影響を受けている可能性がある（ケース１）。しかし，近隣の大垣市で採集した雨水の同位体比は冬季に低いという明瞭な傾向を示す。すなわち，OT02の記録は酸素同位体比が低い冬の降水が占める割合の変化である可能性もある（ケース２）。
　この石筍で最も顕著な特徴は，上部に約650の周期性が，下部に数千年オーダーの変動が現れることだ。完新世の変動は太陽強度の増減に応答した冬季降水の割合の変化に原因が求められる（ケース２）。一方，下部石筍に記録された55-35 kaにおける合計８回の増減はダンスガード・オシュガーイベントに対応すると思われる。高い酸素同位体比のバンドは日本海堆積物に記録された暗色層の出現頻度と一致する。１つの周期の中で，方解石は上方へとゆるやかに透明度を増し，次の周期との境界で急激に褐色を帯びる。酸素同位体比も同様にゆるやかに増加し，次の周期との境界で急激に減少する場合が多い。OT02に記録された数千年スケールの変動は，細部ではグリーンランド氷床や中国石筍の周期性と合わないものの，ダンスガード・オシュガーサイクルの汎世界性を支持する。下部OT02の酸素同位体比はケース２よりもケース１で解釈できる。すなわち，ゆるやかな寒冷化の時期に降水量が減少し，急激な温暖化の時期に降水量が増加したことになる。