12:18 〜 12:21
[SVC47-P10] 蔵王火山,御釜-五色岳火山体形成初期噴出物の岩石学的特徴
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:蔵王火山, 安山岩質溶岩, 火砕サージ, アグルチネート, カルクアルカリ系列
・はじめに
蔵王火山は東北日本火山フロントの中心に位置する第四紀成層火山であり,約1Maから現在まで活動を続けている。五色岳はその中央付近に位置し,蔵王火山の中で最も新しく形成された小規模の山体である。本火山では,2013年以降,火山性微動が繰り返し観測されるなど火山活動の高まりが認められている。
これまでの研究によって,本火山体は約2千年前に活動を開始したことと,噴出物は主に火砕サージ堆積物とアグルチネートからなること,噴出物は5つの地質ユニット (ユニット1~5) に大きく分けられることが報告されている。本研究では本火山体形成初期のユニット1を対象として,より詳しい層序と記載岩石学的特徴を明らかにしたので,その結果を報告する。
・御釜-五色岳火山体形成初期噴出物
御釜-五色岳火山体形成初期噴出物は,振子滝溶岩,五色岳南方溶岩及び火砕岩類,五色岳南部火砕岩類,五色岳東部火砕岩類に細分類される。振子滝溶岩は,現在の五色岳山頂から約250m北方の,五色岳山体底部付近から流出した溶岩流が固結したものである。流下距離は約750m で幅およそ20~30mの細長い形状を示し沢に沿って分布している。五色岳南方溶岩及び火砕岩類は,五色岳の南の濁沢を挟んだ対岸の一部分に分布している。下部は凝灰角礫岩,上部が水冷破砕岩からなる。下部の凝灰角礫岩はハイアロクラスタイト様の岩相を示す。上部の水冷破砕岩は概ね垂直方向の粗めの節理に加え,その節理から垂直方向に細かめの節理が多数延びているのが認められる。偽枕状溶岩状の形状を有している部分も認められる。溶岩の発泡度は低い。五色岳南部火砕岩類は火砕サージ堆積物と火道角礫岩からなり,五色岳山頂の南方約500m 付近に見られる。火砕サージ堆積物は火山弾を少量含む火山礫凝灰岩~火山角礫岩からなる。多数のラミナが見られ,その多くは側方方向に連続性が悪い。層厚は約10mである。火道角礫岩は全部で三本あり,幅2~8mで高さ5~8mである。その伸長方向は概ね北東-南西方向でほぼ垂直に火砕サージ堆積物を切っている。いずれも淘汰の悪い凝灰角礫岩であり,外形が丸い~20cm の火山弾がある程度含まれる。五色岳東部火砕サージ堆積物は五色岳の東部に点々と認められる。層厚の変化が激しく厚いところで約35m,薄いところで約6mである。成層構造が発達した凝灰岩~火山礫凝灰岩~凝灰角礫岩を主体としていて,火山弾も認められる。
・岩石学的特徴
いずれの噴出物も普通輝石-斜方輝石安山岩である。斜長石斑晶はパッチ状構造や汚濁体を持つものが多い。但し、振子滝溶岩と五色岳南方溶岩及び火砕岩類では,汚濁帯を持つものはほとんどない。斜方輝石斑晶と単斜輝石斑晶は自形性の強いものが多く,その半数はコア部にまばらにガラス包有物を含む。なお,単斜輝石斑晶は融食形を示すものも見られる。また、五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩に含まれる火山弾のみ他の噴出物に比べて単斜輝石の割合が高い。輝石斑晶の組織にユニット毎の差異は認められない。
本噴出物は全て,中間カリウム,カルクアルカリ系列に属する。全岩SiO2量は56~58wt%と変化幅が狭い。SiO2組成変化図では,どのユニットも概ね一連のトレンドに乗る。より詳細に見ると,振子滝溶岩と五色岳南方溶岩はSiO2= 57.5~58wt%にまとまっている一方で,その他の噴出物は56~57.7wt% である。また,五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩中の火山弾のみ,他の噴出物に比較してFeO, TiO2量などがやや低くMgO 量などがやや高い傾向を示す。
振子滝溶岩と五色岳南方溶岩及び火砕岩類の斜方輝石のコアの組成はMg#64~65であり,五色岳東部火砕岩類はMg#65前後である。また,五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩に含まれる火山弾はMg#62~69と組成幅が広い。単斜輝石のコア部の組成幅は全てのユニットでMg#64~70である。斜長石のコアの組成はAn62~92と組成幅が広い。振子滝溶岩と五色岳南方溶岩及び火砕岩類ではAn68~70とAn78前後にピークを持ち,またAn90程度に小ピークが見られる。五色岳東部火砕岩類ではAn64~66とAn76~78前後にピークを持ち,An90程度に小ピークが見られる。五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩中の火山弾ではAn62~66とAn 74~76にピークが認められる。
蔵王火山は東北日本火山フロントの中心に位置する第四紀成層火山であり,約1Maから現在まで活動を続けている。五色岳はその中央付近に位置し,蔵王火山の中で最も新しく形成された小規模の山体である。本火山では,2013年以降,火山性微動が繰り返し観測されるなど火山活動の高まりが認められている。
これまでの研究によって,本火山体は約2千年前に活動を開始したことと,噴出物は主に火砕サージ堆積物とアグルチネートからなること,噴出物は5つの地質ユニット (ユニット1~5) に大きく分けられることが報告されている。本研究では本火山体形成初期のユニット1を対象として,より詳しい層序と記載岩石学的特徴を明らかにしたので,その結果を報告する。
・御釜-五色岳火山体形成初期噴出物
御釜-五色岳火山体形成初期噴出物は,振子滝溶岩,五色岳南方溶岩及び火砕岩類,五色岳南部火砕岩類,五色岳東部火砕岩類に細分類される。振子滝溶岩は,現在の五色岳山頂から約250m北方の,五色岳山体底部付近から流出した溶岩流が固結したものである。流下距離は約750m で幅およそ20~30mの細長い形状を示し沢に沿って分布している。五色岳南方溶岩及び火砕岩類は,五色岳の南の濁沢を挟んだ対岸の一部分に分布している。下部は凝灰角礫岩,上部が水冷破砕岩からなる。下部の凝灰角礫岩はハイアロクラスタイト様の岩相を示す。上部の水冷破砕岩は概ね垂直方向の粗めの節理に加え,その節理から垂直方向に細かめの節理が多数延びているのが認められる。偽枕状溶岩状の形状を有している部分も認められる。溶岩の発泡度は低い。五色岳南部火砕岩類は火砕サージ堆積物と火道角礫岩からなり,五色岳山頂の南方約500m 付近に見られる。火砕サージ堆積物は火山弾を少量含む火山礫凝灰岩~火山角礫岩からなる。多数のラミナが見られ,その多くは側方方向に連続性が悪い。層厚は約10mである。火道角礫岩は全部で三本あり,幅2~8mで高さ5~8mである。その伸長方向は概ね北東-南西方向でほぼ垂直に火砕サージ堆積物を切っている。いずれも淘汰の悪い凝灰角礫岩であり,外形が丸い~20cm の火山弾がある程度含まれる。五色岳東部火砕サージ堆積物は五色岳の東部に点々と認められる。層厚の変化が激しく厚いところで約35m,薄いところで約6mである。成層構造が発達した凝灰岩~火山礫凝灰岩~凝灰角礫岩を主体としていて,火山弾も認められる。
・岩石学的特徴
いずれの噴出物も普通輝石-斜方輝石安山岩である。斜長石斑晶はパッチ状構造や汚濁体を持つものが多い。但し、振子滝溶岩と五色岳南方溶岩及び火砕岩類では,汚濁帯を持つものはほとんどない。斜方輝石斑晶と単斜輝石斑晶は自形性の強いものが多く,その半数はコア部にまばらにガラス包有物を含む。なお,単斜輝石斑晶は融食形を示すものも見られる。また、五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩に含まれる火山弾のみ他の噴出物に比べて単斜輝石の割合が高い。輝石斑晶の組織にユニット毎の差異は認められない。
本噴出物は全て,中間カリウム,カルクアルカリ系列に属する。全岩SiO2量は56~58wt%と変化幅が狭い。SiO2組成変化図では,どのユニットも概ね一連のトレンドに乗る。より詳細に見ると,振子滝溶岩と五色岳南方溶岩はSiO2= 57.5~58wt%にまとまっている一方で,その他の噴出物は56~57.7wt% である。また,五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩中の火山弾のみ,他の噴出物に比較してFeO, TiO2量などがやや低くMgO 量などがやや高い傾向を示す。
振子滝溶岩と五色岳南方溶岩及び火砕岩類の斜方輝石のコアの組成はMg#64~65であり,五色岳東部火砕岩類はMg#65前後である。また,五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩に含まれる火山弾はMg#62~69と組成幅が広い。単斜輝石のコア部の組成幅は全てのユニットでMg#64~70である。斜長石のコアの組成はAn62~92と組成幅が広い。振子滝溶岩と五色岳南方溶岩及び火砕岩類ではAn68~70とAn78前後にピークを持ち,またAn90程度に小ピークが見られる。五色岳東部火砕岩類ではAn64~66とAn76~78前後にピークを持ち,An90程度に小ピークが見られる。五色岳南部火砕岩類の火道角礫岩中の火山弾ではAn62~66とAn 74~76にピークが認められる。