日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地震観測・処理システム

2015年5月24日(日) 16:15 〜 18:00 202 (2F)

コンビーナ:*中村 洋光(防災科学技術研究所)、座長:木村 武志(防災科学技術研究所)、松岡 英俊(気象庁地震火山部)

17:51 〜 17:54

[STT53-P08] 太平洋赤道域におけるミクロネシア地震観測アレーの構築

ポスター講演3分口頭発表枠

*石原 靖1田中 聡1末次 大輔1大林 政行1利根川 貴志1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:広帯域地震観測, オンジャワ海台

近年の地震観測ネットワークの発展により大陸や島孤での観測は充実してきたのと比べて海域特に大洋域での観測は未だに貧弱な状況である。海洋プレートとその直下の構造イメージングや駆動メカニズムそして大洋域下の深部ダイナミクスの理解には大洋海域での観測網の充実が必要である。我々が着目しているミクロネシア海域ではOHP/Pacific21(海半球観測網)やUSGSの固定観測点が数点ずつ稼働しているのみである。ミクロネシア諸島は地球上で最大級であるオンジャワ海台の北端側に位置している。JAMSTECと地震研究所はこのオントンジャワ海台の生成プロセスの解明を目的とした広帯域地震計による長期海底観測を2014年10月から展開している。それと連携して観測網を補完する形で既存の固定観測点の空白地点に新規に臨時観測点を設置し、ミクロネシア地震観測アレーを構築した。本講演ではその概要とデータ取得状況およびデータ品質について報告し、この地球深部観測アレーとしての可能性について議論する。
この観測プログラムで推進している項目は以下の3点である。(1)マーシャル諸島マジュロ観測点の再起動(2)ミクロネシア諸島チューク島、コスラエ島での臨時観測点の設置(3)パラオ観測点の移設。マジュロ観測点は観測点用地の使用許可の事情で長期にわたって欠測をせざるを得なかったが、代替地の準備が整い再開に至っている。マジュロ島が環礁の島であり、新たな観測点は環礁の中の小島にある。波浪によるノイズは避けられないが、その場所には主要道は無く結果として短周期人工ノイズは無いに等しい。チューク島およびコスラエ島では現地住民の方に協力を受け静穏な場所の提供を受けている。パラオ観測点は従来の地点が居住地域にあるためにノイズレベルが高い課題があった。4年ほどの時間をかけて非居住地域の適地を探しだし、STS-1地震計を移設して現在安定した観測の段階に入っている。新地点は通信回線の整備が難しいので従来の地点も継続して運用し、リアルタイム観測網のひとつとして運用している。
これらの設置した観測点はすべて電源を太陽光発電を用いていることと、オフライン収録であり定期的な管理がなくデータがすべて現地に保管されている。データ回収は年2回程度保守に併せておこなう。様々な理由により収録が停止する可能性があり、欠測期間を最小にすべくすべての観測点にそれぞれ2式の計測システムを設置することとした。
今回臨時観測点として設置したチューク島およびコスラエ島については昨年12月に最初のデータ回収を実施した。計測システムの二重化の効果は早速あり、連続データの取得を実現している。海洋島の観測点であるため、一般的には大陸のデータと比較するとデータの品質はかなり劣る例が多い。一方でこの観測の目標を達成するには遠地深発地震の実体波波形の良質なデータも求められる。取得したデータのノイズを分析すると脈動が大きいのはやむを得ないが、海洋島観測点としては低いレベルのノイズである。特にチュークは設置地点の地盤条件が良く水平動成分においても長周期成分でも安定した信号が取得されている。また遠地深発地震のPKP相も明瞭に計測されており、今後のデータの蓄積が期待される。イギリスのグループが海台の南側にあたるソロモン諸島・パプアニューギニアでの観測網を展開しており今後連携を図る予定である。