日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS29] 大気電気学

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 A01 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、牛尾 知雄(大阪大学大学院工学研究科情報通信工学部門)、座長:芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)

09:15 〜 09:30

[MIS29-02] 夏季正極性落雷の放電進展様相

*大谷 拓1森本 健志1中村 佳敬2林 清孝3林 雅明3 (1.近畿大学、2.神戸高専、3.中部電力)

キーワード:正極性落雷, 広帯域干渉計, LLS, 夏季雷

雷放電とは、雷雲内で分離された正電荷と負電荷とが放電に伴い中和される現象である。雲内の電荷が大地に放電するものを対地放電(落雷)と呼ぶ。夏季に見られる対地放電の90%以上は雲内の負電荷を中和する下向き負極性落雷であるとされている。電磁界観測において、正リーダの進展に伴い放射されるVHF帯電磁波が弱いため、正極性落雷の放電進展様相はほとんど明らかになっていない。しかし双方向性リーダの概念によると正リーダと同時に進展を開始する負リーダが存在する。正極性落雷ではこの負リーダを中心に議論が行われることになる。本研究では、落雷時に発生する電磁波の到来方向と時刻を検出し、落雷位置を標定する落雷位置標定システムLLS、および雲内を含めた雷放電の進展様相を可視化するVHF帯広帯域干渉計で観測された正極性落雷について詳細に解析し考察を行う。本稿では、2014年岐阜県東濃地方において行った雷観測データのうち、瑞浪と恵那観測所に設置してある2組の干渉計がデータを記録した正極性落雷4例を対象とする。

2014年7月20日19:56:50に記録した雷放電では、雲内から大地に向かい下向きに進展する正リーダは可視化されていないが、同時に進展を開始したと思われる負リーダが標定されている。帰還雷撃は普通、先行するリーダ内の電荷を中和するように進展する。しかしこの事例では、帰還雷撃直後に発生したリーダは、先行するリーダとは異なる放電路を進展している。雲内に存在する別の電荷領域を中和する放電が継続したようである。更に帰還雷撃後の放電進展に注目すると、一度リーダが進展した放電路を、時間をおいて再び進展する様子が見られ、正極性落雷では稀である多重落雷を記録したものであると考えられる。

解析対象とした他の3事例のうち、1例では帰還雷撃前に雲内を進展する負リーダと、大地に向かい下向きに進展する正リーダが共に標定された。他の2例は共に、帰還雷撃前にリーダ進展が標定されなかった。前者は、後者に比べ観測点からの距離が近い。電磁波の減衰が少なかったため正リーダの進展様相が標定できたと考えられる。

 以上のように、本研究では、干渉計とLLSで観測された夏季の正極性落雷の放電進展様相を詳細に解析した。正極性落雷では稀である多重落雷の進展や、双方向性リーダの負リーダだけではなく正リーダの進展様相も知ることできた。