日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM33] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2015年5月26日(火) 11:00 〜 12:45 102A (1F)

コンビーナ:*神田 径(東京工業大学火山流体研究センター)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、座長:畑 真紀(東京大学地震研究所)

12:33 〜 12:36

[SEM33-P12] 固気液3相を考慮した多孔質体モデルの比抵抗値の直接計算

ポスター講演3分口頭発表枠

*竿本 英貴1片桐 淳1高田 尚樹1高橋 学1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:比抵抗, 多孔質体, 有限要素法, X線CT, 屈曲度

比抵抗を利用した地下のイメージングは,物理探査の分野で従来から活発に行われており,地盤内における液状化領域の推定や地下水流動に伴う地下汚染領域の推定,薬液注入による地盤改良領域の確認など,その簡便さと面的情報を得られる利点から幅広い用途に用いられてきた.多孔質体である岩石や地盤材料の比抵抗値は,間隙に流体が混入されていることから,間隙率や飽和度,多孔質体を構成する粒子の形状,間隙流体の比抵抗値など,多くの物性に依存することが知られている.
この依存関係を利用して,得られた比抵抗値からこれまでの実測結果や室内実験結果との対比や経験式との比較によって,比抵抗値の分布が岩石や粘土といった地盤材料種別の分布や,地盤の飽和度の分布として変換される.当然ながら,実測した条件や経験式が成り立つ範囲内では比抵抗からの変換は有効であるが,適用範囲外である場合には注意が必要である.上記の依存関係は,基本的には多孔質体内における電流の流れ方に依っているため,間隙率や飽和度が変わることによって多孔質体内の電流密度分布がどのように変化するのかを把握することは重要である.
 ここでは比抵抗値と間隙率や飽和度といった地盤物性の依存関係を,微細構造を考慮した上で定量的に把握することおよび経験式の適用範囲外における比抵抗値に関する知見を得ることを目的として,多孔質体の微細構造を考慮した数値解析によって比抵抗値を直接算出することを試みる.具体的には,これまで著者らが蓄積してきた高解像度X線CTに基づく詳細な3次元多孔質体モデルに対し,定常電流場の方程式を数値的に解くことで多孔質モデル内の電流密度分布を把握し,電流密度分布の体積平均とオームの法則を用いることで,マクロ物性としての比抵抗値を求める.
このアプローチは,微細構造をX線CTなどの何らかの方法で事前に入手しておく必要があるものの,電磁気学に基づいて決定論的・定量的に多孔質体の比抵抗値を求めることができるという利点がある.加えて,微細構造を把握しているため,経験式中のパラメータと微細構造の関連性を考察しやすい点,境界条件を変更して通電する方向を変化させることにより比抵抗の異方性を議論できる点なども特長として挙げられる.
 本報告では,多孔質体の微細構造を有限要素メッシュによって表現し,間隙比,飽和度,通電方向を変化させた場合についてのパラメトリックスタディーを行い,これらのパラメータの変化とともに比抵抗がどのように変化するのかを求めた.得られた数値解析結果を既往の実測結果と比較・検討することで本手法の妥当性を検証した.また,微細構造内の電流密度分布や電流線解析を併せて実施し,実験では取得できない情報の抽出を試みた.