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[SVC45-09] 阿蘇山における長周期微動の規模別頻度分布にみられる段階的変化
キーワード:火山性微動, 長周期微動, 規模別頻度分布, ストロンボリ式
はじめに
阿蘇山は頻繁に火山噴火を繰り返している,国内でも有数な活動的火山である.特に周期15秒の長周期微動は阿蘇山特有の現象であり,火口直下浅部のクラック状の火道内部において,ガスや火山灰などの高温の火山性流体と地下水の熱水反応が引き起こす圧力擾乱が,火山性流体と火道壁との相互作用により伝わり,クラック状の火道が固有振動を起こすことによって,長周期微動が発生することが明らかにされている.今回我々は,2014年11月25日のストロンボリ式噴火を含む約3年間の長周期微動の活動をモニタリングし,その活動が段階的に時間変化していることを見出した.
長周期微動活動モニタリング
まず,近傍の広帯域地震計記録の波形相関性を用いて阿蘇山からの長周期微動を検出し,震源決定を行った.防災科学技術研究所の広帯域地震観測網F-netのうち,九州地方7観測点で記録された2011年10月初旬から2014年12月下旬まで上下動成分の広帯域記録を用い,以下のような自動処理によって阿蘇山を震源とする長周期微動を系統的に検出した.まず,阿蘇山に近い砥用(N.TMCF)観測点において10-20秒周期帯のエンベロープ振幅が極大となる波群のうち,閾値を超えるものを微動候補として検出した.次に,各微動候補について,F-net観測点間の波形相関から得られる到達時間差を求め,位相速度を3.5km/sに仮定したグリッドサーチにより震源を決定した.グリッドサーチにより到達時間差を十分に説明できた震源のうち,その場所が阿蘇山中央火口周辺に推定された波群を阿蘇山の長周期微動として最終的に選別した.
検出された微動活動は,2014年の噴火に対応して急激に変化する様子が確認された.まず,2014年の8月ごろまでは,集中的に長周期微動が発生することが時折あったが,比較的静穏な期間が続いた.2014年8月下旬以降に活動が急激に活発化し,短い微動停止期間の後の最大振幅の急激な上昇を繰り返し,段階的に振幅レベルが上昇した.その後も高い振幅レベルの微動が断続的に発生していたが,11月25日のストロンボリ式噴火の約3時間前には振幅レベルは大きく低下した.噴火直後には再び振幅の大きな微動が頻発したが,その振幅レベルは噴火の5,6日後には急激に低下した.すべての期間で合計65,942回の長周期微動を検出したが,そのうち98.2%(64,786個)が噴火前後123日に発生した.
規模別頻度分布とその時間変化
さらに詳しく長周期微動活動の特徴を調べるため,長周期微動の規模別頻度分布を調べた.本研究では,2014年8月以降の阿蘇山の長周期微動の活動期を,段階的な振幅レベルの変化と11月25日のストロンボリ式噴火を基準に5つの短い期間に分割し,各期間における規模別頻度分布を求めた.その結果,(1)噴火前の3つの期間はいずれも指数分布を示すが,特徴的振幅スケールが段階的に上昇すること,(2)噴火直後の5,6日間は一時的にベキ乗分布を示すこと,(3)その後の期間では,再び指数分布を示すことがわかった.
これまでの複数の火山における火山性微動の規模別頻度分布を調べた研究では,火山性微動の規模別頻度分布はベキ乗分布よりも指数分布に近い分布を示すことが指摘されており,その特徴的振幅スケールは火道やマグマ供給源のサイズに関係すると考えられていた.しかし,本研究では,阿蘇山の長周期微動の特徴的振幅スケールは,段階的に変化し,さらにストロンボリ式噴火によって特徴的振幅スケールが失われるといった時間変化を示すことが初めて明らかになった.このような長周期微動活動の時間変化は,阿蘇山直下の火道や熱水系の状態の変化に密接に関連していると考えられるため,長周期微動の規模別頻度分布の時間的推移を調べることにより,阿蘇山の火山噴火予測につながる可能性があることが示された.
阿蘇山は頻繁に火山噴火を繰り返している,国内でも有数な活動的火山である.特に周期15秒の長周期微動は阿蘇山特有の現象であり,火口直下浅部のクラック状の火道内部において,ガスや火山灰などの高温の火山性流体と地下水の熱水反応が引き起こす圧力擾乱が,火山性流体と火道壁との相互作用により伝わり,クラック状の火道が固有振動を起こすことによって,長周期微動が発生することが明らかにされている.今回我々は,2014年11月25日のストロンボリ式噴火を含む約3年間の長周期微動の活動をモニタリングし,その活動が段階的に時間変化していることを見出した.
長周期微動活動モニタリング
まず,近傍の広帯域地震計記録の波形相関性を用いて阿蘇山からの長周期微動を検出し,震源決定を行った.防災科学技術研究所の広帯域地震観測網F-netのうち,九州地方7観測点で記録された2011年10月初旬から2014年12月下旬まで上下動成分の広帯域記録を用い,以下のような自動処理によって阿蘇山を震源とする長周期微動を系統的に検出した.まず,阿蘇山に近い砥用(N.TMCF)観測点において10-20秒周期帯のエンベロープ振幅が極大となる波群のうち,閾値を超えるものを微動候補として検出した.次に,各微動候補について,F-net観測点間の波形相関から得られる到達時間差を求め,位相速度を3.5km/sに仮定したグリッドサーチにより震源を決定した.グリッドサーチにより到達時間差を十分に説明できた震源のうち,その場所が阿蘇山中央火口周辺に推定された波群を阿蘇山の長周期微動として最終的に選別した.
検出された微動活動は,2014年の噴火に対応して急激に変化する様子が確認された.まず,2014年の8月ごろまでは,集中的に長周期微動が発生することが時折あったが,比較的静穏な期間が続いた.2014年8月下旬以降に活動が急激に活発化し,短い微動停止期間の後の最大振幅の急激な上昇を繰り返し,段階的に振幅レベルが上昇した.その後も高い振幅レベルの微動が断続的に発生していたが,11月25日のストロンボリ式噴火の約3時間前には振幅レベルは大きく低下した.噴火直後には再び振幅の大きな微動が頻発したが,その振幅レベルは噴火の5,6日後には急激に低下した.すべての期間で合計65,942回の長周期微動を検出したが,そのうち98.2%(64,786個)が噴火前後123日に発生した.
規模別頻度分布とその時間変化
さらに詳しく長周期微動活動の特徴を調べるため,長周期微動の規模別頻度分布を調べた.本研究では,2014年8月以降の阿蘇山の長周期微動の活動期を,段階的な振幅レベルの変化と11月25日のストロンボリ式噴火を基準に5つの短い期間に分割し,各期間における規模別頻度分布を求めた.その結果,(1)噴火前の3つの期間はいずれも指数分布を示すが,特徴的振幅スケールが段階的に上昇すること,(2)噴火直後の5,6日間は一時的にベキ乗分布を示すこと,(3)その後の期間では,再び指数分布を示すことがわかった.
これまでの複数の火山における火山性微動の規模別頻度分布を調べた研究では,火山性微動の規模別頻度分布はベキ乗分布よりも指数分布に近い分布を示すことが指摘されており,その特徴的振幅スケールは火道やマグマ供給源のサイズに関係すると考えられていた.しかし,本研究では,阿蘇山の長周期微動の特徴的振幅スケールは,段階的に変化し,さらにストロンボリ式噴火によって特徴的振幅スケールが失われるといった時間変化を示すことが初めて明らかになった.このような長周期微動活動の時間変化は,阿蘇山直下の火道や熱水系の状態の変化に密接に関連していると考えられるため,長周期微動の規模別頻度分布の時間的推移を調べることにより,阿蘇山の火山噴火予測につながる可能性があることが示された.