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[SSS24-05] ホームサイスモメータの普及状況と計測データ利活用に関する検討
キーワード:ホームサイスモメータ, 緊急地震速報, MEMS
1.はじめに
堀内・他(2007),Horiuchi et.al(2009)は,現在の緊急地震速報は観測点密度が25kmであることや,Hi-netのデータ伝送遅延から震源から約30km以内の地震の場合には情報配信が間に合わないことを指摘し,直下型地震にも対応できるように緊急地震受信装置にMEMS型加速度計とA/Dコンバーターを付加した「ホームサイスモメータ」の普及により観測点密度を数10倍以上に増加させ,地震災害軽減のための情報提供を行う計画について指摘した.
また,山本・他(2007)は地震計組み込み型のホームサイスモメータの試作機の製作について記述しており,中村・他(2008)は住宅内にこの試作機を配置し,試験観測を行った結果について報告している.さらに,堀内・他(2008)は地震波とノイズを識別するアルゴリズムの開発を行い,このノイズ識別処理を搭載したホームサイスモメータが株式会社エイツーから,緊急地震速報と内蔵地震計によるP波検知を併用した速報性の高い情報配信を行うサービスとして販売されている.
今回,このホームサイスモメータの普及状況をまとめるとともに,緊急地震速報受信端末内蔵地震計によって記録された計測データを利活用する方法について検討を行った結果について報告する.
2.ホームサイスモメータの普及状況について
株式会社エイツーによるサービス提供開始から7年が経過した2014年末時点で,ホームサイスモメータの稼働台数は約4,000箇所となっている.設置箇所の分布は日本全国を均質に覆っているわけではなく,関東平野,大阪平野,濃尾平野等の都市部に集中しているほか,自治体単位で導入を行っている和歌山県・徳島県等で設置密度が高い.一方,島嶼部や山間部等,設置密度が低い地域も存在する.
3.計測データについて
全国に設置されたホームサイスモメータにより計測された高密度な地震記録を用いて,都市域の高精度な地震被害推定,及びリアルタイム地震防災情報配信の高度化等の研究目的に利活用するため,防災科研は株式会社エイツーから7年間にわたりホームサイスモメータにより計測された約8,700回分の地震記録の提供を受けた.ただし,端末の設置箇所の地盤や建物の構造,設置方法,周辺の振動,センサーの自己ノイズ(約±1gal程度)等,様々な条件がある中で,ばらつきを持った多数の地震記録を活用していく方法については検討が必要である.
今回,試みとして全国のホームサイスモメータにより取得された複数の地震記録について,縦軸に計測震度(相当値)を,横軸に震央からの距離をとり,K-NETおよびKiK-netにより取得された記録と重ねてプロットしたところ概ねトレンドが一致したが,ホームサイスモメータによる観測データのばらつきが大きいことが分かる(Fig.1).
しかし,都市部等,既存の強震観測施設に比べて,ホームサイスモメータの設置密度が多い地点においては,既存の強震観測データを補間するデータとして利用することにより,より詳細な被害状況の記録や,リアルタイム情報配信の高度化に活用できる可能性があるものと思われる.
今後も継続して観測データのばらつきを少なくする手法の開発やリアルタイム情報配信への活用可能性を探っていきたい.
参考文献)
堀内茂木・他:ホームサイスモメータ普及計画,日本地球惑星科学連合2007年大会.
Shigeki Horiuchi et.al.: Home seismometer for earthquake early warning, Geophysical Research Letters, Vol.36 No.5. L00B04, 2009.
山本俊六・他:ホームサイスモメータの製作とその機能,日本地球惑星科学連合2007年大会.
中村洋光・他:ホームサイスモメータの測定性能と実住宅における実証実験の概要,日本地球惑星科学連合2008年大会.
堀内茂木・他:ホームサイスモメータのための地震波とノイズとの識別機能の開発(2),日本地球惑星科学連合2008年大会.
堀内・他(2007),Horiuchi et.al(2009)は,現在の緊急地震速報は観測点密度が25kmであることや,Hi-netのデータ伝送遅延から震源から約30km以内の地震の場合には情報配信が間に合わないことを指摘し,直下型地震にも対応できるように緊急地震受信装置にMEMS型加速度計とA/Dコンバーターを付加した「ホームサイスモメータ」の普及により観測点密度を数10倍以上に増加させ,地震災害軽減のための情報提供を行う計画について指摘した.
また,山本・他(2007)は地震計組み込み型のホームサイスモメータの試作機の製作について記述しており,中村・他(2008)は住宅内にこの試作機を配置し,試験観測を行った結果について報告している.さらに,堀内・他(2008)は地震波とノイズを識別するアルゴリズムの開発を行い,このノイズ識別処理を搭載したホームサイスモメータが株式会社エイツーから,緊急地震速報と内蔵地震計によるP波検知を併用した速報性の高い情報配信を行うサービスとして販売されている.
今回,このホームサイスモメータの普及状況をまとめるとともに,緊急地震速報受信端末内蔵地震計によって記録された計測データを利活用する方法について検討を行った結果について報告する.
2.ホームサイスモメータの普及状況について
株式会社エイツーによるサービス提供開始から7年が経過した2014年末時点で,ホームサイスモメータの稼働台数は約4,000箇所となっている.設置箇所の分布は日本全国を均質に覆っているわけではなく,関東平野,大阪平野,濃尾平野等の都市部に集中しているほか,自治体単位で導入を行っている和歌山県・徳島県等で設置密度が高い.一方,島嶼部や山間部等,設置密度が低い地域も存在する.
3.計測データについて
全国に設置されたホームサイスモメータにより計測された高密度な地震記録を用いて,都市域の高精度な地震被害推定,及びリアルタイム地震防災情報配信の高度化等の研究目的に利活用するため,防災科研は株式会社エイツーから7年間にわたりホームサイスモメータにより計測された約8,700回分の地震記録の提供を受けた.ただし,端末の設置箇所の地盤や建物の構造,設置方法,周辺の振動,センサーの自己ノイズ(約±1gal程度)等,様々な条件がある中で,ばらつきを持った多数の地震記録を活用していく方法については検討が必要である.
今回,試みとして全国のホームサイスモメータにより取得された複数の地震記録について,縦軸に計測震度(相当値)を,横軸に震央からの距離をとり,K-NETおよびKiK-netにより取得された記録と重ねてプロットしたところ概ねトレンドが一致したが,ホームサイスモメータによる観測データのばらつきが大きいことが分かる(Fig.1).
しかし,都市部等,既存の強震観測施設に比べて,ホームサイスモメータの設置密度が多い地点においては,既存の強震観測データを補間するデータとして利用することにより,より詳細な被害状況の記録や,リアルタイム情報配信の高度化に活用できる可能性があるものと思われる.
今後も継続して観測データのばらつきを少なくする手法の開発やリアルタイム情報配信への活用可能性を探っていきたい.
参考文献)
堀内茂木・他:ホームサイスモメータ普及計画,日本地球惑星科学連合2007年大会.
Shigeki Horiuchi et.al.: Home seismometer for earthquake early warning, Geophysical Research Letters, Vol.36 No.5. L00B04, 2009.
山本俊六・他:ホームサイスモメータの製作とその機能,日本地球惑星科学連合2007年大会.
中村洋光・他:ホームサイスモメータの測定性能と実住宅における実証実験の概要,日本地球惑星科学連合2008年大会.
堀内茂木・他:ホームサイスモメータのための地震波とノイズとの識別機能の開発(2),日本地球惑星科学連合2008年大会.