12:15 〜 12:30
[MIS22-13] 惑星大気大循環モデルの構築 - 鉛直一次元設定での数値実験
キーワード:惑星大気, 大気大循環モデル, 地球, 火星, 鉛直一次元モデル
太陽系内外の惑星の多様な循環構造および表層環境の維持機構を理解することを目指して, 地球を含めて様々な惑星大気の数値実験を行うことができる惑星大気大循環モデル, DCPAM (http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam/), の構築に取り組んでいる. 本発表では, 惑星大気の計算の一部として実施してきた, 鉛直一次元実験 (SCM (Single Column Model) 実験) について報告する. このような実験は, 構築したモデルの各種パラメタリゼーションが適切に実装されていることの確認や, その実装されたパラメタリゼーションの性質の確認に有用である. また, 主に地球の条件を想定して定式化されたパラメタリゼーションが地球と異なる惑星条件下でどのように振る舞うのかを調べるためにも有用である. なお, 本研究は, 理研 AICS のグループや気象庁のグループと協力して進めている共通物理過程ライブラリの構築の試みの一環として進めている.
DCPAM は, 地球流体電脳倶楽部有志で構築を進めている惑星大気大循環モデルである. このモデルは, プリミティブ方程式をスペクトル変換法で解く力学過程と, 放射過程, 乱流過程, 凝結過程, 簡単な雲モデル, そして土壌熱伝導モデルとバケツモデルによる陸面モデルといった物理過程を組み合わせたものである. また, 本モデルの構築では, コードをほとんど変更することなく, 軸対称二次元計算および鉛直一次元計算が可能となるように設計している.
本研究では, DCPAM に実装したパラメタリゼーションの確認を目的として, 次の 4 つの鉛直一次元実験を行った: (1) ICRCCM 実験 (InterComparison of Radiation Codes in Climate Models; Ellingson et al., 1991), (2) GABLS2 (GEWEX Atmospheric Boundary Layer Study 2; Svensson et al., 2011) 実験, (3) TWP-ICE (Tropical Warm Pool International Cloud Experiment) 実験 (Davies et al., 2013), (4) 火星境界層実験. ここでは, 3, 4 の実験結果について簡単に述べる.
TWP-ICE 実験では, 観測に基づく強制の下での放射過程, 乱流過程, 凝結過程の応答によって形成される大気構造を調べる. 今回の実験では, 積雲過程, 非対流性凝結過程, 乱流過程にそれぞれ Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992), Le Treut and Li (1991) のスキーム, Mellor and Yamada (1982) level 2.5 を用いた. 実験の初期結果は, 降水量の時間変化が大まかには他の SCM の結果 (Davies et al., 2013) と整合的であることを示していた. しかしながら, DCPAM で得られた相対湿度は, 対流圏下層において他のモデルよりも小さい傾向も見られた. 今後この原因について調べていく予定である.
火星実験は, 大規模圧力傾度力の強制の下でモデルの放射過程, 乱流過程によって形成される火星の大気境界層の構造を調べる. 今回の実験では, 乱流過程には, Mellor and Yamada (1982) level 2.5 を用いた. 実験の結果得られた境界層の高さや温度の日変化は, 二次元, 三次元の対流解像モデル (e.g., Odaka, 2001) によって表現されてきたものとおよそ整合的である. 例えば, 境界層の高さは, 例えば火星において典型的なダストの量の場合に, 地球よりも高く 5 km 程度となる. 今後, 他の惑星の計算に向けた基礎実験などにもこのような鉛直一次元実験を利用していく予定である.
DCPAM は, 地球流体電脳倶楽部有志で構築を進めている惑星大気大循環モデルである. このモデルは, プリミティブ方程式をスペクトル変換法で解く力学過程と, 放射過程, 乱流過程, 凝結過程, 簡単な雲モデル, そして土壌熱伝導モデルとバケツモデルによる陸面モデルといった物理過程を組み合わせたものである. また, 本モデルの構築では, コードをほとんど変更することなく, 軸対称二次元計算および鉛直一次元計算が可能となるように設計している.
本研究では, DCPAM に実装したパラメタリゼーションの確認を目的として, 次の 4 つの鉛直一次元実験を行った: (1) ICRCCM 実験 (InterComparison of Radiation Codes in Climate Models; Ellingson et al., 1991), (2) GABLS2 (GEWEX Atmospheric Boundary Layer Study 2; Svensson et al., 2011) 実験, (3) TWP-ICE (Tropical Warm Pool International Cloud Experiment) 実験 (Davies et al., 2013), (4) 火星境界層実験. ここでは, 3, 4 の実験結果について簡単に述べる.
TWP-ICE 実験では, 観測に基づく強制の下での放射過程, 乱流過程, 凝結過程の応答によって形成される大気構造を調べる. 今回の実験では, 積雲過程, 非対流性凝結過程, 乱流過程にそれぞれ Relaxed Arakawa-Schubert スキーム (Moorthi and Suarez, 1992), Le Treut and Li (1991) のスキーム, Mellor and Yamada (1982) level 2.5 を用いた. 実験の初期結果は, 降水量の時間変化が大まかには他の SCM の結果 (Davies et al., 2013) と整合的であることを示していた. しかしながら, DCPAM で得られた相対湿度は, 対流圏下層において他のモデルよりも小さい傾向も見られた. 今後この原因について調べていく予定である.
火星実験は, 大規模圧力傾度力の強制の下でモデルの放射過程, 乱流過程によって形成される火星の大気境界層の構造を調べる. 今回の実験では, 乱流過程には, Mellor and Yamada (1982) level 2.5 を用いた. 実験の結果得られた境界層の高さや温度の日変化は, 二次元, 三次元の対流解像モデル (e.g., Odaka, 2001) によって表現されてきたものとおよそ整合的である. 例えば, 境界層の高さは, 例えば火星において典型的なダストの量の場合に, 地球よりも高く 5 km 程度となる. 今後, 他の惑星の計算に向けた基礎実験などにもこのような鉛直一次元実験を利用していく予定である.