日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

18:15 〜 19:30

[PPS21-P13] iSALE shock physics codeを用いた数値衝突計算: 衝撃波伝播過程の再評価

*黒澤 耕介1鎌田 俊一2 (1.千葉工業大学惑星探査研究センター、2.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード:天体衝突, 衝撃波伝播, 高圧相鉱物, シャッターコーン, 数値衝突計算

固体惑星表面に残る多数の衝突クレータは, 太陽系天体が激しい衝突にさらされてきたことを物語る. 衝突天体が持ち込んだ莫大な運動エネルギーは衝撃波へと変換され標的天体内部に伝播し, 様々な相変化(蒸発, 熔融, 高圧相転移)や特徴的な破砕構造(例えばシャッターコーン構造など)を作り出す. 地質に残る高圧相鉱物や破壊構造は天体衝突が起きたという証拠をもたらし, 太陽系衝突史を紐解くための手がかりを与えてくれる. 近年はアポロ計画で回収された月試料や隕石からも高圧相鉱物が次々と発見されている. 回収試料から衝突史を探るには衝突の規模に対して衝撃圧, 昇温度, その持続時間を記述する物理モデルが必要となる. ところが標的天体の重力加速度, 空隙率, 物質強度, 表面及び地下温度構造によって, 衝撃波の伝播過程がどのように変化するかは十分に理解されているとはいえない.
このような状況を受けて我々はiSALE shock physics codeを用いて衝撃波の伝播過程を調べる数値実験を行っている. iSALEを用いることで, 衝撃波と希薄波の干渉による衝撃波減衰を数値的に解くことができる. また物質の粘弾塑性体応答を取り扱うための物質モデルや無限小空隙の圧密モデルが実装されており, 今回の目的には最適の数値計算コードであると言える. これまでに, (1)空隙の存在は衝撃波の減衰率を大幅に増加させること, (2)完全流体標的よりも粘弾塑性体標的の方が衝撃波が減衰しやすいこと, (3) 標的の内部摩擦が衝撃波の波形に影響を与え得ること, (4)標的温度が上がると衝撃波減衰率が大きくなること, などの結果を得ている. 今後は多数の数値実験の結果をもとにして, それらを統一的に解釈できる衝撃波伝播モデルを構築することを目標としている.

謝辞
iSALE の 開 発 者 で あ る Gareth Collins,Kai Wunnemann,Boris Ivanov,H.Jay Melosh,Dirk Elbeshausen の各氏 に感謝致します.