日本地球惑星科学連合2015年大会

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[O-05] Future Earth構想と地学教育および地理教育との連携を考える

2015年5月24日(日) 15:45 〜 18:00 104 (1F)

コンビーナ:*宮嶋 敏(埼玉県立深谷第一高等学校)、秋本 弘章(獨協大学経済学部)、井田 仁康(筑波大学人間系)、座長:秋本 弘章(獨協大学経済学部)、畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、宮嶋 敏(埼玉県立深谷第一高等学校)

16:35 〜 17:00

[O05-06] 産業社会からの地球惑星教育への視点

*山藤 康夫1 (1.日鉄住金総研株式会社コンサルティング事業部)

キーワード:産業社会, パラダイムシフト, 教養教育, 地球の持続性

産業社会は今、機械化、電動化、情報化に次ぐ4つ目の産業革命、デジタルネットワークの時代を迎えつつある。こうした産業のパラダイムシフトが進む中、複雑化・高度化する現実世界をどう生きてゆくか、教育をどう考えるか、社会的な課題となっている。
 現代社会は、多くの人がそれぞれの役割を持ちながら分業することで成り立っている。私たち一人ひとりが自らの得意なことやできることを磨き、社会の様々な機能(システム)の一翼を担うことで社会人としての務めを果たす。
 そのためにはシフトが進む新しい時代に即した「広義の職業専門教育」が必要である。しかし、産業を担う社会人としては専門教育に加え、経済社会から、自然科学まで一通りをカバーする「教養教育」も必要である。
 持続的開発教育(ESD)が唱える「環境尊重」には、「私」の自立に加え、「公」の精神が欠かせない。「公」の精神の涵養には自立によるゆとりと社会や自然に対する知的好奇心の育みが重要である。
 知的好奇心は科学知識や基礎的な理論を学ぶことによって育ち、能力開発や新たな発想・発見の芽となる。PISA型学力で科学的リテラシーが重視される所以である。科学的リテラシー[文部科学省では科学的リテラシーを「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について 理解し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論 を導き出す能力」と説明している。]とは簡潔に言えば科学的根拠のある推論や知識に基づいた言動を生み出せる能力であり、例えば自分の仕事や生活と地球環境全体を科学的に結び付けられる力なども含まれよう。
また、環境問題ばかりでなく、自然災害、低頻度大災害を始め、未来へと永遠に続くエネルギー問題への取り組みなど、どれ一つとっても科学的リテラシーの獲得は不可欠である。
現代人の活動範囲は地球の表層から地中へ、海中へ、海底へと拡がり、今や宇宙空間まで広がっている。「はやぶさ」のイオンエンジンや化学エンジンの開発者は必然的に宇宙の知識が必要になる。
 このように地球全体や社会に生じている問題の多くに取り組むには、幅広い知見が必要になる。教養教育として学ぶ自然科学は、地学・地理を始めとして生物、物理、化学のすべてにわたることが望ましい。幅広い分野を学ぶことで世の中の課題を様々な角度から考える視点と視野を身につけることができる。
 将来を担う若人が「未来の地球」をさらに次世代へとバトンタッチしていけるように「地球の持続性」を確実にする科学教育が必要となる。そのためには我々自身も持続的な社会を目指して、教育の世界を応援しつつ、さらに教養を深めてゆくこととしたい。
『子供には批評よりも手本が必要である』フランスの哲学者ジョセフ・ジュベール)