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[PCG30-07] はやぶさ2は小惑星表面の有機物分布を明らかにできるか:光散乱特性による有機物量と粒径の識別
キーワード:はやぶさ2, 小惑星, 有機物, 光散乱特性
小惑星探査「はやぶさ2」は世界初となるC型小惑星サンプルリターンを目指しており,そのサンプル採取及び地球帰還が成功した暁には,地上での詳細な分析から太陽系の初期進化や地球生命の起源に関する新たな知見が得られると期待されている.その科学的なアウトプットを最大化するためにはリモートセンシングで小惑星表面の含水鉱物や有機物の分布を明らかにすることが重要である.しかし,含水鉱物は探査機に搭載された近赤外分光計を使って調べられるものの,有機物の分布を調べる方法は現時点で確立されていない.唯一,炭素質隕石に含まれる総炭素量が可視域の絶対反射率と明瞭な負の相関を示すことから,絶対反射率を使って有機物量を推定するという考え方があるが,絶対反射率は表面物質の粒径や空隙率などにも依存するため,それだけでは必ずしも有機物量を計るよい指標になるとは限らない.そこで本研究では,絶対反射率と光散乱特性の情報を組み合わせることによって有機物量と表面状態を識別できるのではないかと考え,実際に小惑星表面を模擬する試料を使ってその検証実験を行った.試料はケイ酸塩鉱物と有機物の二成分とし,ケイ酸塩鉱物には幌満産のダナイト,有機物には天然の腐食物質であるフミン酸を使用した.粒径45-53μmのレゴリス状のダナイト試料を基準として,フミン酸の混合量を増やした場合とダナイトの粒径を大きくした場合の光散乱特性の変化を比較した.光散乱特性の測定は会津大学で開発した可変角拡散反射光測定装置を用いて行い,位相角5-60度で反射光強度を測定した.測定の結果,有機物量が増える場合は反射率が低下して後方散乱が強くなるのに対し,粒径が大きくなる場合は反射率が低下して前方散乱が強くなることが示された.また,これらの傾向は理論モデルを使って再現できることもわかった.よって,有機物量と粒径だけが変化する単純な系では光散乱特性がそれぞれ異なる傾向を示すことから両者の識別は可能と考えられる.ただし,実際の小惑星表面では宇宙風化等の影響も関係しているであろうことから,今後それらを模擬する追加実験が必要である.