日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 地球惑星科学のアウトリーチ

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 106 (1F)

コンビーナ:*植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)、下岡 順直(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

09:15 〜 09:30

[G03-02] 高校地理における地学的記述を更新する必要性について

*池田 敦1 (1.筑波大学生命環境系)

キーワード:高校地理教科書, プレートテクトニクス, 造山運動, 大地形, 鉱産資源, 科学リテラシー

高校地理の教科書(地理B)の2割弱のページは,地形・気候・植生・土壌や環境問題の解説に充てられている。全高校生のうち地理を履修する生徒の割合は高くはないが,かなり大勢の若者を対象に,地球科学の一端を紹介できる科目といえる。また,それを学習した生徒が,多少なりと地球科学のリテラシーを身につけ,環境問題や災害への対応について考えることもあるだろう。ちなみに,理系に進んだ高校生は,社会科の選択必修の中から地理を選んでいることが多い。そのため,理系に限定すれば,地学を学ぶ生徒が少ないことと対照的に,地理を学ぶ生徒は多い。
しかし,地理教育を通じて,地球科学のリテラシーを広めるには課題がある。人文系の大学教育を受け,地理歴史の教員免許を取った人々にとっては,自然科学は専門外のため,自然現象についてはキーワードを列挙して暗記させるだけに終わってしまいかねない。その場合,生徒はとりあえず言葉を覚えるかもしれないが,それが教養と呼べるものに変化する可能性は低い。教科書に挙げられているキーワードを有機的につなげて理解してもらうためには,地球表層のシステムや,(地理学が着目する空間的な広がりだけでなく)地球科学が着目する時空間の広がりを認識してもらう必要がある。
筆者には,現役の地理教員に地球科学リテラシーを向上させてもらうアウトリーチの妙案はない。しかし,大学で主に研究に従事する身にできることとして,地理教科書あるいは教員向け教授資料の内容を地球科学に連続性のある形に整理するため,現行の教科書の問題点と修正案を挙げようと思う。今回,採り上げるのは,プレートテクトニクス,造山運動,地形,鉱産資源の関係についてである。地理において,どこに何があるのかに着目することに異議を唱えるものではないが,地球科学のエッセンスを加えるために,物が動くという力学的な視点と,時間という地質学的な視点を踏まえて,地理教科書に挙げられているキーワードを整理する。