09:45 〜 10:00
[HDS27-02] 海底水圧計データを用いた津波即時予測のためのアルゴリズム検討
キーワード:津波即時予測, 遡上, シナリオバンク, S-net
防災科学技術研究所では、現在敷設中の日本海溝海底地震津波観測網(S-net;植平・他, 2015, 本大会)等による沖合で観測されるデータを活用して、津波発生時に沿岸での津波波高のみならず陸域への津波遡上までを迅速に予測する手法の開発と、千葉県外房地域を対象として実稼働する津波遡上即時予測システムのプロトタイプの構築を進めている(青井・他, 2015, 本大会)。本研究ではこの津波遡上即時予測システム開発のために、海底水圧計による津波データを用いた津波即時予測アルゴリズムに関する検討を行う。沖合での津波観測データを用いたリアルタイム津波予測手法としては、逆解析で推定した津波波源からフォワード計算により沿岸での水位や対象都市での浸水を予測する手法(例えばTsushima et al. 2012; 2014、辰巳・富田, 2013)、沖合観測波高などに基づくデータベース検索より浸水予測を行う手法(例えば阿部・今村, 2012)、沖合津波波高と沿岸波高の経験的もしくは数値シミュレーションによる関係式を用いる手法(例えば高山 2008、Baba et al., 2014)などが提案されている。非線形現象である津波遡上までを広い地域に亘って予測するために本研究ではデータベース検索型の手法を採用し、海溝型地震の震源域直上で稠密に観測された水圧データを用いることにより迅速かつ詳細な予測の実現を目標とする。そのため波源モデルを設定して非線形シミュレーションにより得られる沖合観測点での津波波形、沿岸での津波高や到達時間、対象地域での浸水分布、到達時間などの一連の計算結果を一つの津波シナリオとし、予測対象地域に影響を及ぼすと考えられる様々な波源モデルの津波シナリオからなる津波シナリオバンクを事前に構築する。地震、津波検知時には沖合観測点で観測されている水圧変動を説明するシナリオをシナリオバンクより選び出すことにより、沖合水圧データに結びつく沿岸波高分布や対象地域での浸水分布を基に津波予測情報を生成する。シナリオ選択において観測データに似たシナリオを1つに限らず複数選択可能とすることで不確実性を適切に取り込んだ予測を行い、時間の経過とともに津波の発生、伝播が明瞭に確認されるにつれシナリオ、予測の絞込みを図っていく。本研究では東日本太平洋沿岸地域に影響を与える可能性のある地震津波の波源モデルによる約2000シナリオについて、S-net観測点での沖合水圧データを用いてシナリオ選別アルゴリズムの検討を行う。
我々が検討を進めているアルゴリズムの1つは、山本・他(2014, 地震学会)に基づくもので、各時刻での水圧値の空間分布について複数の一致度評価指標すべてがそれぞれの閾値内となるシナリオを選び出していくアルゴリズムである。評価指標としては、まず、各時刻での水圧の振幅の相関係数、振幅比の幾何平均及び幾何標準偏差を用いている。これら3つの指標を組み合わせて一致度評価を行った検討により、単一の評価基準を用いるのに比べて、シナリオ選別ひいては津波遡上即時予測をより確実に行うことのできる可能性を示す結果が得られた。さらに観測値もしくはシナリオの値を用いて正規化した2種類のVariance Reductionを組み合わせて用いる検討を行った。観測値で正規化したVariance Reductionはシナリオの値が観測値より大きい、すなわち予測値が過大評価である場合に対して感度が高く、反対にシナリオの値で正規化した場合には予測値の過小評価に対して感度が高いため、2つ併せて利用することにより津波の規模の予測を向上できる可能性を示した。上述してきたアルゴリズムは津波伝播の様子を時間ごとにスナップショットをとって評価することによりシナリオを絞り込んでいくアルゴリズムであるが、異なるアプローチとして沖合観測点での水圧波形時系列そのものについて観測値とシナリオの一致度評価を行うアルゴリズムについても検討を進めていく予定である。
我々が検討を進めているアルゴリズムの1つは、山本・他(2014, 地震学会)に基づくもので、各時刻での水圧値の空間分布について複数の一致度評価指標すべてがそれぞれの閾値内となるシナリオを選び出していくアルゴリズムである。評価指標としては、まず、各時刻での水圧の振幅の相関係数、振幅比の幾何平均及び幾何標準偏差を用いている。これら3つの指標を組み合わせて一致度評価を行った検討により、単一の評価基準を用いるのに比べて、シナリオ選別ひいては津波遡上即時予測をより確実に行うことのできる可能性を示す結果が得られた。さらに観測値もしくはシナリオの値を用いて正規化した2種類のVariance Reductionを組み合わせて用いる検討を行った。観測値で正規化したVariance Reductionはシナリオの値が観測値より大きい、すなわち予測値が過大評価である場合に対して感度が高く、反対にシナリオの値で正規化した場合には予測値の過小評価に対して感度が高いため、2つ併せて利用することにより津波の規模の予測を向上できる可能性を示した。上述してきたアルゴリズムは津波伝播の様子を時間ごとにスナップショットをとって評価することによりシナリオを絞り込んでいくアルゴリズムであるが、異なるアプローチとして沖合観測点での水圧波形時系列そのものについて観測値とシナリオの一致度評価を行うアルゴリズムについても検討を進めていく予定である。