15:30 〜 15:45
[SSS29-08] スメクタイトの昇温摩擦実験による不安定すべりの検証
キーワード:昇温摩擦実験, 沈み込み帯における地震発生帯の上限, スメクタイトーイライト相転移, 粘土鉱物の摩擦特性, 摩擦特性に与える温度効果, 摩擦特性に与える層間水の効果
[はじめに] 浅部の非地震発生領域と地震発生帯との境界は地震発生上限(updip limit)と呼ばれ、津波発生に関わるなど, 防災の観点から重要である。沈み込み帯における地震発生帯の上限領域は温度にして?150℃までで起こるとされている。地震発生帯の上限を決めている要因は諸説あるが, その中の一つに粘土鉱物の脱水により未固化の断層ガウジ物質が固化することによって上盤側のプレートと沈み込む海洋プレートを接着させる役割を果たし, 非地震性の安定すべりから地震性の不安定すべりへとすべり挙動を変化させることが原因ではないかという説がある。沈み込み帯の深さで実現される最初のもっとも重要な相転移は100?200℃の間で起こるスメクタイト-イライト相転移である。スメクタイトは膨潤性の高い鉱物として知られ, 水に飽和した環境下では体積が約8倍になる。Marone and Scholz (1988)は水に飽和し未固化の断層ガウジ物質が浅部での非地震発生に関係していることを報告しており, Ikari et al. (2007)では粘土鉱物の層間に含まれる水が摩擦の速度依存性や強度に影響を与えることを報告している。先行研究では層間に含まれる水の存在により安定すべりを示すことが調べられたが, 脱水が起こるような昇温時の実験は行われておらず, また脱水にいたるまでの過程の中でどのように不安定な摩擦挙動に遷移していくのかを調べたものはない。
そこで本研究では, 昇温時の粘土鉱物の層間水の脱水が摩擦特性に与える影響を調べ, 粘土鉱物の脱水が地震性のすべりの挙動を起こし地震発生帯の上限となるかどうかを議論した。
[実験手法] 高温二軸摩擦試験機を用いて, 粉末状の擬似断層物質を二つのガブロブロックの間にはさみ摩擦実験を行うdouble-direct shearといわれる手法をとった。擬似断層物質に用いた試料は東北地方の凝灰岩層から採取されたCa-smectiteで, 垂直応力は油圧式手押しポンプで制御しながら加重をかけていき60MPaの一定垂直応力下で実験を行った。 鉛直方向(剪断方向)の加重はモーターとギアシステムを用いており, ギアシステムにより様々な速度比で減速された回転運動を, ボールネジを用いて鉛直方向の往復運動に変換することで載荷した。鉛直方向の変位速度は0.4μm/sに設定し, 摩擦試験中上記の速度を一定に保ち, 温度は1℃/min.の一定速度及び10℃/min.の一定速度の2種類の速度で昇温させ, 昇温とともに遷移する摩擦挙動の変化をモニタリングした。
[結果, 考察] 定常状態に達するまで試料周りの温度を室温に保ったまま剪断を行い, 定常状態に達したところで昇温を開始した。低温から高温になるに従って, 摩擦挙動は3つの領域に分けられる遷移を示した。1. 摩擦強度が減少する領域, 2. 摩擦強度が上昇する領域, 3. 持続的なスティック-スリップ(不安定すべり)が観察される領域の3つである。1. 摩擦強度が減少する領域の領域では層間に存在する水が膨張することによってガウジの層間の結合が弱まり結果的に摩擦挙動が減少したのではないかと考えられる。2. 摩擦強度が上昇する領域の領域では層間の水が蒸発し結合が強くなったことによるのではないかと考えられる。3. の領域では温度の上昇に伴い, 持続的なスティック-スリッップの挙動を観察したが, Rabinowicz (1956)で示されるすべりの不安定条件を満たすことによって, すべりの不安定は起こすことが可能だが, 持続的なスティック-スリップを示すシステムは摩擦がすべり速度弱化を示さなければならないことが知られている。本実験ではストレスドロップを伴う不安定な摩擦挙動が減衰することなく持続的に現れたことから, 高温域で地震性の摩擦に遷移したと考えられる。以上のことから, 断層物質, 主に粘土鉱物に温度が与える影響は大きくすべりの挙動を不安定なものへと遷移させていき, また同時に層間に存在する水が摩擦特性に与える影響が大きいと考えられる。
そこで本研究では, 昇温時の粘土鉱物の層間水の脱水が摩擦特性に与える影響を調べ, 粘土鉱物の脱水が地震性のすべりの挙動を起こし地震発生帯の上限となるかどうかを議論した。
[実験手法] 高温二軸摩擦試験機を用いて, 粉末状の擬似断層物質を二つのガブロブロックの間にはさみ摩擦実験を行うdouble-direct shearといわれる手法をとった。擬似断層物質に用いた試料は東北地方の凝灰岩層から採取されたCa-smectiteで, 垂直応力は油圧式手押しポンプで制御しながら加重をかけていき60MPaの一定垂直応力下で実験を行った。 鉛直方向(剪断方向)の加重はモーターとギアシステムを用いており, ギアシステムにより様々な速度比で減速された回転運動を, ボールネジを用いて鉛直方向の往復運動に変換することで載荷した。鉛直方向の変位速度は0.4μm/sに設定し, 摩擦試験中上記の速度を一定に保ち, 温度は1℃/min.の一定速度及び10℃/min.の一定速度の2種類の速度で昇温させ, 昇温とともに遷移する摩擦挙動の変化をモニタリングした。
[結果, 考察] 定常状態に達するまで試料周りの温度を室温に保ったまま剪断を行い, 定常状態に達したところで昇温を開始した。低温から高温になるに従って, 摩擦挙動は3つの領域に分けられる遷移を示した。1. 摩擦強度が減少する領域, 2. 摩擦強度が上昇する領域, 3. 持続的なスティック-スリップ(不安定すべり)が観察される領域の3つである。1. 摩擦強度が減少する領域の領域では層間に存在する水が膨張することによってガウジの層間の結合が弱まり結果的に摩擦挙動が減少したのではないかと考えられる。2. 摩擦強度が上昇する領域の領域では層間の水が蒸発し結合が強くなったことによるのではないかと考えられる。3. の領域では温度の上昇に伴い, 持続的なスティック-スリッップの挙動を観察したが, Rabinowicz (1956)で示されるすべりの不安定条件を満たすことによって, すべりの不安定は起こすことが可能だが, 持続的なスティック-スリップを示すシステムは摩擦がすべり速度弱化を示さなければならないことが知られている。本実験ではストレスドロップを伴う不安定な摩擦挙動が減衰することなく持続的に現れたことから, 高温域で地震性の摩擦に遷移したと考えられる。以上のことから, 断層物質, 主に粘土鉱物に温度が与える影響は大きくすべりの挙動を不安定なものへと遷移させていき, また同時に層間に存在する水が摩擦特性に与える影響が大きいと考えられる。