日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM22] 地形

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

18:15 〜 19:30

[HGM22-P03] 北アルプス・白馬大雪渓における地形災害について

*佐藤 紫乃1奈良間 千之2 (1.新潟大学自然環境科学科、2.新潟大学自然科学系)

キーワード:白馬大雪渓, 落石, 雪渓, 地形災害

北アルプスの北東部に位置する白馬大雪渓は日本三大雪渓の一つで、夏季には毎年1万人以上が通過する,全国でも人気の登山ルートである.本地域では,落石や崩落,土石流,雪崩といった地形変化により,毎年のように登山者が巻き込まれる事故が起こっているがその詳細は明らかでない.本研究では,災害軽減の観点から白馬大雪渓周辺で起こる落石や崩壊をはじめとする地形災害について,周辺地形,気象データ,周氷河環境,周辺地質との関係から,落石・崩壊の時期,場所,頻度,その発生機構について調査したので報告する.2014年度の調査では,滑落事故を除いて事故件数の多い落石現象と,一度雪渓に定着した礫のその後の再移動現象について着目し,大雪渓でのインターバル撮像やGPS測量,地温・気象観測等をおこなった.さらに夏季には,村営白馬岳頂上宿舎に滞在しながら機器のメンテナンスや登山客へのアンケート等もおこなった.
大雪渓の上部と下部に1台ずつ設置したインターバルカメラの撮像結果より,雪渓融解の激しい夏季7月~8月に雪渓上に無数に点在する礫の多くが,融解した雪渓内から融出したものであることがわかった.また,この時期,岩壁からの礫生産による雪渓への礫の侵入はわずかであった.地温・気温観測結果からも,同時期に岩壁から礫が生産される頻度は極めて低いと考えられる.7月末~8月末の1か月間での大雪渓上での礫の移動量は最大50mほどで,これらは毎日少しずつ転動するのみで,大雪渓本流上で長距離を転動する礫は確認されなかった.大雪渓左岸の支流の2号・3号雪渓を含む大雪渓全体の傾斜についてみると,本流部では概ね25°以下で,支流の2号・3号雪渓では26°~40°と,本流部に比べ支流の傾斜が比較的高いことがわかった.7~8月に2号・3号雪渓からの礫の転動や再転動は目撃されており,支流の急傾斜がこの時期の落石事故と大きく関係しているものと考えられる.今後は,現在設置している通年の地温・気象データの回収をおこない,今年の夏には現地に滞在しながら,さらに詳細な調査を実施する予定である.