17:00 〜 17:15
[MGI37-07] 日本の金属資源調査データのデータベース構築と金属濃度の空間モデリングへの応用
キーワード:ボーリングデータ, 地球統計学, 金属鉱床, 鉱物学, 統計解析, 3次元モデリング
日本で現在稼行中の金属鉱山は金を採掘対象とする菱刈鉱山のみであるが,かつては銀・銅・鉛・亜鉛など種々の金属鉱山が存在していた。操業当時には,これらの鉱山およびその周辺で,長期間にわたり金属資源賦存可能性および鉱物品位の調査が行われている。しかし,多額の費用を要したこの膨大な調査の結果は,電子化されていない,表記のフォーマットが統一されていない,などの理由から,現在は利用が困難な状態にある。また,過去には日本国内でも数多くの鉱山の操業が行われていたため「鉱山・鉱床学」が盛んであり,実測や長年の経験に基づく多くの知識・知見が得られていたが,国内での鉱山事業がほぼ終息した現在では,これらの知識は断続している。こうしたこれまでに蓄積されてきたが有効活用されていないデータや知識を「資源」として「再発掘」することは社会的にも意義があると考えられる。
過去の調査結果や報告書のデータを電子化し,数値解析に利用しやすいフォーマットで整理することにより,3次元モデリングをはじめとするさまざまな解析に活用することが可能となる。このデータベースをもとに,最新の理論やソフトウェアによる解析を行うことで鉱山・鉱床の成因や発達に関する新たな知見の獲得が期待でき,日本の金属資源の3次元分布形態・成因・鉱床形成支配要因の解明に役立つのみでなく,世界における同じタイプ(例えば浅熱水性鉱脈型)の鉱床探査に貢献できる。また当時の詳細な鉱山・鉱床に関する調査や研究結果は、モデリングや解析の検証材料として有用である。
このような背景のもと,本研究では金属鉱業事業団(現JOGMEC)による4種の調査報告書をデータベース化の対象に選んだ。内容は九州から北海道まで及ぶ54地区の広域調査,資源胚胎が有望な34地区での精密調査,9地区の希少金属鉱物資源の賦存状況調査,および3地区の金鉱山の基礎的地質鉱床調査であり,資料の年代は昭和41年から平成14年にわたる。これらの報告書から,主に金属濃度の3次元空間分布モデルの構築を目的とし,各ボーリング地点の座標、地質柱状図、主要金属成分の分析結果を抜粋した。資料の多くは直角座標系を用いて記載されているが,調査地区独自の基点を用いている場合や,正負や少数点の記載ミスなどが多く見られた。こうしたデータは,報告書内の画像をデジタイズし,目印となる地形とボーリング地点の相対位置から補正座標を求めた。
データベースを利用した解析として,鉱床タイプと金属含有量・種類、深度との相関性などの基本的な統計分析を行った。同地点での金属濃度は,CuとSn,SnとZn,PbとZnおよびAgとPbが強い正の相関性を示した。これらは黒鉱鉱床および熱水鉱床の影響があると考えられる。こうした統計解析の結果とボーリング調査による取得データ量を考慮し,播但地区(近畿西部),野矢地区(九州中部)など複数の地域で金属品位の空間分布モデリングを行った。空間モデリングには,地球統計的手法であるordinary kriging,co-kriging,逐次ガウスシミュレーション(SGS)を用いた。また,鉱床の形成・発達過程を考察するため,地質モデルの構築を行った。地質モデルの構築には,金属品位モデルと同様にボーリング調査による地質柱状図から抽出された座標付きのカテゴリデータを用いた空間補間に加え,報告書に記載されている地質断面図や断層トレースなどの画像データをデジタイズすることで,他の空間分布モデルとの比較が可能な3次元データとした。これらの比較により,播但地域で断層によってCuの高濃度領域が区分される特徴や,野矢地域でカルト山安山岩と横山安山岩層がAu,Agの高濃度領域を二分する分布形態となっていることなどが見出された。
また,これらの作業を通し,3次元モデリングへの応用と複数のソフトウェア間での連携を前提としたデータベース構築,およびGIS化についての提案を行っていく。
過去の調査結果や報告書のデータを電子化し,数値解析に利用しやすいフォーマットで整理することにより,3次元モデリングをはじめとするさまざまな解析に活用することが可能となる。このデータベースをもとに,最新の理論やソフトウェアによる解析を行うことで鉱山・鉱床の成因や発達に関する新たな知見の獲得が期待でき,日本の金属資源の3次元分布形態・成因・鉱床形成支配要因の解明に役立つのみでなく,世界における同じタイプ(例えば浅熱水性鉱脈型)の鉱床探査に貢献できる。また当時の詳細な鉱山・鉱床に関する調査や研究結果は、モデリングや解析の検証材料として有用である。
このような背景のもと,本研究では金属鉱業事業団(現JOGMEC)による4種の調査報告書をデータベース化の対象に選んだ。内容は九州から北海道まで及ぶ54地区の広域調査,資源胚胎が有望な34地区での精密調査,9地区の希少金属鉱物資源の賦存状況調査,および3地区の金鉱山の基礎的地質鉱床調査であり,資料の年代は昭和41年から平成14年にわたる。これらの報告書から,主に金属濃度の3次元空間分布モデルの構築を目的とし,各ボーリング地点の座標、地質柱状図、主要金属成分の分析結果を抜粋した。資料の多くは直角座標系を用いて記載されているが,調査地区独自の基点を用いている場合や,正負や少数点の記載ミスなどが多く見られた。こうしたデータは,報告書内の画像をデジタイズし,目印となる地形とボーリング地点の相対位置から補正座標を求めた。
データベースを利用した解析として,鉱床タイプと金属含有量・種類、深度との相関性などの基本的な統計分析を行った。同地点での金属濃度は,CuとSn,SnとZn,PbとZnおよびAgとPbが強い正の相関性を示した。これらは黒鉱鉱床および熱水鉱床の影響があると考えられる。こうした統計解析の結果とボーリング調査による取得データ量を考慮し,播但地区(近畿西部),野矢地区(九州中部)など複数の地域で金属品位の空間分布モデリングを行った。空間モデリングには,地球統計的手法であるordinary kriging,co-kriging,逐次ガウスシミュレーション(SGS)を用いた。また,鉱床の形成・発達過程を考察するため,地質モデルの構築を行った。地質モデルの構築には,金属品位モデルと同様にボーリング調査による地質柱状図から抽出された座標付きのカテゴリデータを用いた空間補間に加え,報告書に記載されている地質断面図や断層トレースなどの画像データをデジタイズすることで,他の空間分布モデルとの比較が可能な3次元データとした。これらの比較により,播但地域で断層によってCuの高濃度領域が区分される特徴や,野矢地域でカルト山安山岩と横山安山岩層がAu,Agの高濃度領域を二分する分布形態となっていることなどが見出された。
また,これらの作業を通し,3次元モデリングへの応用と複数のソフトウェア間での連携を前提としたデータベース構築,およびGIS化についての提案を行っていく。