09:00 〜 09:15
[AAS22-14] 2014年6月13日に東京都府中市付近に降雹をもたらした降水システムの3DVAR解析
キーワード:ドップラーレーダー, ドップラーライダー, 雹, データ同化
1.はじめに
2014年6月13日1200JSTごろ,発達した積乱雲により東京都府中市を中心に降雹(最大直径3 cm程度)と強風が報告された。この降雹・強風をもたらした降水システムは,複数のXバンドマルチパラメータドップラーレーダー(以後,X-MPレーダー)とドップラーライダーによって観測されており,降水システム内の構造と降水システムに流入する下層の気流が詳細に捉えられていた。本研究では,これらのX-MPレーダーとドップラーライダーデータを用いて下層風の3DVAR解析を行った。
2.観測データ
X-MPレーダーに関しては,国交省が設置している3台のレーダー(新横浜,船橋,八斗島)の動径風速を用いている。最大観測範囲80 km,距離分解能150 m,方位角分解能1.2度,12仰角のPPIスキャンで,1ボリュームスキャンに5分を要す。ドップラーライダーに関しては,防災科学技術研究所が2014年度から関東に設置している3台のうち,東京工業大学大岡山キャンパスに設置しているライダー(以後,LDOP)の動径風速を用いている。LDOPは,最大観測範囲30 km,距離分解能150 m,方位角分解能1度,仰角2度のPPIスキャンで,1スキャンに2分を要す。
3DVARに用いた背景場は,2014年6月13日0900JSTのMSMを初期値としてCReSS ver.4.3.2によって計算された。水平解像度は1 kmで鉛直50層のストレッチンググリッドとなっている(最下層でΔz=100 m)。計算領域は200 km×200 kmとなっている。3DVARにはCReSS VAR ver.2.1.0を用いた。
3.結果
本事例は北日本上空に寒冷渦があり関東付近に弱い気圧の谷が通過している状況で発生した。降雹をもたらした降水システムは1000JSTごろ奥多摩付近で発生し,セルの世代交代を経験しながら東南東へと伝播していき,1330JSTごろ羽田沖で消滅した。
防災科研が木更津に設置しているレーダーによる降雹が観測された1220JSTの降水粒子の判別では,府中市付近で雹が判別されており,偏波間位相差が大きくなっている(~ 8 degree km-1)ところで強い下降流(~ 5 m s-1 at z = 1 km)が観測された。降雹に伴う下降流により強風が観測されたと推察される。
X-MPレーダーとLDOPによって捉えられた同時刻の降水と気流構造は,降水システムの北側ではX-MPレーダーからの水平風速場を解析すると北~北東の風が吹いている一方で,降水システムの南側ではLDOPの動径風から南~南東風が吹いていた。降水システムはこの2つの気流が収束しているところで発達していた。
高度500 mにおける水平風速場の3DVAR解析では,LDOPの観測範囲で降水システムに流入する水平風速場が大きく改善されていた。また,X-MPレーダーにより降水システムから流出する水平風速場も改善されており,3DVAR解析によって流入風と流出風の境界がよりシャープに解析されていた。
今後はこれらの解析された場を用いて降水システムの予測実験を行う予定である。
謝辞
国交省X-MPレーダーデータについては,国交省「XバンドMPレーダーに関する技術開発コンソーシアム」よりデータの提供を受けた。
2014年6月13日1200JSTごろ,発達した積乱雲により東京都府中市を中心に降雹(最大直径3 cm程度)と強風が報告された。この降雹・強風をもたらした降水システムは,複数のXバンドマルチパラメータドップラーレーダー(以後,X-MPレーダー)とドップラーライダーによって観測されており,降水システム内の構造と降水システムに流入する下層の気流が詳細に捉えられていた。本研究では,これらのX-MPレーダーとドップラーライダーデータを用いて下層風の3DVAR解析を行った。
2.観測データ
X-MPレーダーに関しては,国交省が設置している3台のレーダー(新横浜,船橋,八斗島)の動径風速を用いている。最大観測範囲80 km,距離分解能150 m,方位角分解能1.2度,12仰角のPPIスキャンで,1ボリュームスキャンに5分を要す。ドップラーライダーに関しては,防災科学技術研究所が2014年度から関東に設置している3台のうち,東京工業大学大岡山キャンパスに設置しているライダー(以後,LDOP)の動径風速を用いている。LDOPは,最大観測範囲30 km,距離分解能150 m,方位角分解能1度,仰角2度のPPIスキャンで,1スキャンに2分を要す。
3DVARに用いた背景場は,2014年6月13日0900JSTのMSMを初期値としてCReSS ver.4.3.2によって計算された。水平解像度は1 kmで鉛直50層のストレッチンググリッドとなっている(最下層でΔz=100 m)。計算領域は200 km×200 kmとなっている。3DVARにはCReSS VAR ver.2.1.0を用いた。
3.結果
本事例は北日本上空に寒冷渦があり関東付近に弱い気圧の谷が通過している状況で発生した。降雹をもたらした降水システムは1000JSTごろ奥多摩付近で発生し,セルの世代交代を経験しながら東南東へと伝播していき,1330JSTごろ羽田沖で消滅した。
防災科研が木更津に設置しているレーダーによる降雹が観測された1220JSTの降水粒子の判別では,府中市付近で雹が判別されており,偏波間位相差が大きくなっている(~ 8 degree km-1)ところで強い下降流(~ 5 m s-1 at z = 1 km)が観測された。降雹に伴う下降流により強風が観測されたと推察される。
X-MPレーダーとLDOPによって捉えられた同時刻の降水と気流構造は,降水システムの北側ではX-MPレーダーからの水平風速場を解析すると北~北東の風が吹いている一方で,降水システムの南側ではLDOPの動径風から南~南東風が吹いていた。降水システムはこの2つの気流が収束しているところで発達していた。
高度500 mにおける水平風速場の3DVAR解析では,LDOPの観測範囲で降水システムに流入する水平風速場が大きく改善されていた。また,X-MPレーダーにより降水システムから流出する水平風速場も改善されており,3DVAR解析によって流入風と流出風の境界がよりシャープに解析されていた。
今後はこれらの解析された場を用いて降水システムの予測実験を行う予定である。
謝辞
国交省X-MPレーダーデータについては,国交省「XバンドMPレーダーに関する技術開発コンソーシアム」よりデータの提供を受けた。