日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM25] 太陽圏・惑星間空間

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*徳丸 宗利(名古屋大学太陽地球環境研究所)、中川 朋子(東北工業大学工学部情報通信工学科)

18:15 〜 19:30

[PEM25-P04] 衛星かぐやが月周辺で観測した周波数帯3―10Hzの磁場変動の強さについて

*渡邊 祐輔1照井 孝輔1香川 翔吾1中川 朋子1綱川 秀夫2 (1.東北工業大学工学部情報通信工学科、2.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

月には大きな磁場がないため、月面に太陽風が当たるとほとんどの太陽風粒子は吸収されるが、一部は月面で反射することが月周回衛星かぐやの観測によって発見された。反射した太陽風粒子は磁場を変動させることがわかっている。

衛星かぐやが月周辺で観測した0.1Hzから10Hzの周波数帯の磁場変動(ホイッスラー波)は、月の日照側で強く、また固有磁場の上空でさらに強くなる事から、エネルギー源は反射粒子であると考えられるが、その発生メカニズムの詳細はわかっていない。反射粒子は太陽風が速いときに多いので、太陽風が速い時ホイッスラー波も強くなると予想し、太陽風速度と月周辺の磁場変動強度の関係を調べることにした。

月周辺の磁場データとして、衛星かぐやに搭載された磁場観測装置(LMAG)が観測した磁場3成分(サンプリング周波32Hz)を使用した。2008年3月1日から11月30日までのうち、月が太陽風に晒されている期間に観測された磁場データを使用する。この期間の衛星高度は月面から100kmであった。太陽風速度のデータには、衛星ACEに搭載されたSWEPAMが観測した太陽風速度を用いた。衛星ACEは衛星かぐやよりも約100万km上流側で観測を行っていたので、2つの衛星間の距離を太陽風が流れてくるのに要する時間分を遡ったデータを使用した。

磁場データを32秒ずつの区間に分けてフーリエ変換し3Hzから10Hzのパワーを合計して磁場変動の強さとし、これと太陽風速度との相関を調べたが、予想したような相関はみられなかった。月面上の場所によって固有磁場が異なり太陽風の反射率も異なると考えられるので、同じ場所(50m以内)で異なる日時に観測された磁場変動強度同士を比べても、太陽風速度とホイッスラー波のパワーの間に明確な関係はみられなかった。

一方、ほとんど同じ場所であっても、衛星かぐやと月面が磁力線で繋がっているとホイッスラー波は強く観測され、磁力線が繋がっていない時は観測されないことがわかった。衛星と月面上の磁気異常が磁力線で繋がっているときに磁場変動が強く、反射プロトンが衛星で観測されている場合であっても、磁力線の繋がりが途絶えた時には波も途絶えることがわかった。これより、3Hzから10Hzの磁場変動は、衛星より月面に近い高度で発生していると考えられる。