18:15 〜 19:30
[PEM27-P12] VOR遠距離伝搬およびイオノゾンデの観測に基づくITU-RのEs伝搬モデルの検討
キーワード:電離層
電気通信大学では強いスポラディックE(Es)で反射されたVHF帯電波を調布と呉で観測している[1]。GBASのVHFデータ伝送系(GBAS-VDB)において、強いEs反射による遠距離伝搬波が干渉許容レベルを超えないかを検討するため、電子密度構造を広域にわたって調べることが必要となっている[2]。1970年代までの観測に基づくITU-RのEs伝搬モデルの反射減衰量関係式については80 MHz以下でしか保証していない[3],[4]。本論文では、周波数110 MHz付近のVOR観測から求めた電離層反射減衰量および中間反射点付近のNICT山川イオノゾンデ臨界周波数f_0 E_sの観測結果に対し、ITU-RのEs伝搬モデル式適用可能性の初期検討を行った結果を述べる。
山川(31.20N, 130.62E)とVOR中間反射点との距離が近い与論島(27.044N, 128.398E)および与那国島(24.457N, 122.998E)のVOR送信局の電波を、2014年5月1日~9月30日において、呉(34.246N, 132.528E)で観測した。得られたVOR受信電力および山川f_0 E_sと使用周波数fの比(?f/f?_0 E_s)に対する電離層反射減衰量Γを求め、ITU-RのEs伝搬モデル式算出値と比較を行った。その結果、呉VOR受信電力より求めたΓはITU-RのEs伝搬モデル式と比べて小さく、実際の受信電力に比べて弱い値を予測値として与えてしまうことが分かった。これは、ITU-RのEs伝搬モデルでは、フレネルゾーンより大きいEs反射モデルを前提としており、VOR遠距離伝搬観測ではフレネルゾーン領域内でのEsを観測しているためだと考えられる。地表伝搬距離893 kmの呉━与論島間と1427 kmの呉━与那国島間の電離層反射減衰量では、伝搬距離が短い呉━与論島間の方が予測値との差が大きい。また、 (f/f_0 E_s)に対する電離層反射減衰量Γの傾きに注目すると、VORでは緩やかな傾きとなり、ITU-RのEs伝搬モデルの周波数依存性を表す指数が大きすぎることを示している。ここで得られた結果から、周波数110 MHz付近におけるITU-Rの伝搬モデル式は、見直しを行う必要があると判断できる。今後は検討回線数を増やし、110MHz付近でのITU-RのEs伝搬モデル式について詳細に検討してゆく予定である。
参考文献
[1] 山幡 琢也, 冨澤 一郎, 山本 淳: VHF帯遠距離伝搬受信による広域Es構造観測システム開発,SGEPSS, B005-P038, 2012.
[2] 齊藤真二, 冨澤一郎, 山本淳: GBAS-VDBに対するスポラディックEによるVOR遠距離伝搬の影響の検討, 信学技報, vol. 114, SANE2014-125, pp113-118, 2015.
[3] K. Miya and T. Sasaki: Characteristics of ionospheric Es propagation and calculation of Es signal strength, Radio Sci., vol.1, pp.99-108, 1966.
[4] ITU-R:Recommendation of ITU-R, Method for calculating sporadic-E field strength, Rec.ITU-R P.534-4,1999.
山川(31.20N, 130.62E)とVOR中間反射点との距離が近い与論島(27.044N, 128.398E)および与那国島(24.457N, 122.998E)のVOR送信局の電波を、2014年5月1日~9月30日において、呉(34.246N, 132.528E)で観測した。得られたVOR受信電力および山川f_0 E_sと使用周波数fの比(?f/f?_0 E_s)に対する電離層反射減衰量Γを求め、ITU-RのEs伝搬モデル式算出値と比較を行った。その結果、呉VOR受信電力より求めたΓはITU-RのEs伝搬モデル式と比べて小さく、実際の受信電力に比べて弱い値を予測値として与えてしまうことが分かった。これは、ITU-RのEs伝搬モデルでは、フレネルゾーンより大きいEs反射モデルを前提としており、VOR遠距離伝搬観測ではフレネルゾーン領域内でのEsを観測しているためだと考えられる。地表伝搬距離893 kmの呉━与論島間と1427 kmの呉━与那国島間の電離層反射減衰量では、伝搬距離が短い呉━与論島間の方が予測値との差が大きい。また、 (f/f_0 E_s)に対する電離層反射減衰量Γの傾きに注目すると、VORでは緩やかな傾きとなり、ITU-RのEs伝搬モデルの周波数依存性を表す指数が大きすぎることを示している。ここで得られた結果から、周波数110 MHz付近におけるITU-Rの伝搬モデル式は、見直しを行う必要があると判断できる。今後は検討回線数を増やし、110MHz付近でのITU-RのEs伝搬モデル式について詳細に検討してゆく予定である。
参考文献
[1] 山幡 琢也, 冨澤 一郎, 山本 淳: VHF帯遠距離伝搬受信による広域Es構造観測システム開発,SGEPSS, B005-P038, 2012.
[2] 齊藤真二, 冨澤一郎, 山本淳: GBAS-VDBに対するスポラディックEによるVOR遠距離伝搬の影響の検討, 信学技報, vol. 114, SANE2014-125, pp113-118, 2015.
[3] K. Miya and T. Sasaki: Characteristics of ionospheric Es propagation and calculation of Es signal strength, Radio Sci., vol.1, pp.99-108, 1966.
[4] ITU-R:Recommendation of ITU-R, Method for calculating sporadic-E field strength, Rec.ITU-R P.534-4,1999.