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[AAS12-03] 福江島における大気中ブラックカーボン質量濃度の長期観測2009-2015:
東アジアからの排出量と湿性除去速度の解析
キーワード:エアロゾル粒子、越境大気汚染、気候影響、収支解析、過程解析
大気中の微小エアロゾル粒子の一成分であるブラックカーボンは重要な温暖化物質であり、排出量や大気中からの除去速度などを正確に理解することが必要となっているが、これまでの知見は十分とはいえない。我々は、巨大発生源である中国の影響を受ける長崎県・福江島(32.75°N, 128.68°E)においてCOSMOS装置を用いたブラックカーボン質量濃度の連続観測を2009年から長期で実施し、濃度の時間変動を明らかにするとともに、排出量や除去速度の理解を向上させるための統計的な解析を行った。年平均値は0.36 µg m−3であり、秋・冬・春にアジア大陸からの越境汚染の影響を受けて高濃度になる季節変動が見られた。観測されたデータを、過去3日間に後方流跡線(HYSPLIT)上で降水が見られたかどうかによって2つに大別し、また気塊の起源を6地域に大別して(中国東北部・中北部・中南部・南部、韓国、日本)、ΔBC/ΔCO比を用いた解析を行った。降水がない場合に観測されたΔBC/ΔCO比については、発生源での排出比が保持されていると考え、地域による差(5.2–6.9 ng m−3 ppb−1)は発生源地域の特徴を表していると解釈した。とくに、中国中南部・南部の比の値は大きい傾向があり、家庭起源・バイオマス燃焼の影響を受けたためと考えられた。ボトムアップ型のエミッションインベントリREAS2では、中国・韓国での排出比は6.5–23 ng m−3 ppb−1と仮定されており、実態を大幅に過大評価している可能性が示された。また、REAS2では、暖房需要の影響で中国では冬季にBC排出量が増加することが見込まれているが、中国中南部からの気塊でこの点を裏付ける結果を得た。また、降水が見られたデータの解析では、流跡線上での過去3日間の降水積分量(APT)の増加に対し、ΔBC/ΔCO 比が減少する傾向が明らかであった。COは降水による除去を受けないパッシブなトレーサーであるため、降水によるBC除去を捉えたものと解釈された。降水のあった場合に計測されたΔBC/ΔCO比を、無降水の場合の比の値で規格化して輸送効率(TE)を算出し、APTに対する依存性を解析した。その結果、TEはAPTに対して単調減少し、Stretched exponential 式(TE = exp(−A1×APTA2) でよく近似できること、空気塊の起源地域による違いは小さく、一般性が高いこと、平均的には、15mmの降水量によってBC濃度が半減することが示された。この関係式によって、大気化学輸送モデルシミュレーションの妥当性を検証することも可能と考えられる。