日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)

17:15 〜 18:30

[AAS12-P13] ナノ粒子分析法評価のための凝縮粒子発生法の開発

*村上 功一1大竹 啓記1竹川 暢之1 (1.首都大学東京大学院理工学研究科)

キーワード:エアロゾル、ナノ粒子

1. 背景
大気中に浮遊する微粒子 (エアロゾル) は大気汚染や気候変動に大きな影響を及ぼす。エアロゾルの生成過程を理解する上で、直径100 nm以下のナノ粒子の化学組成をオンライン分析することが重要である。そのような分析法 (例えばエアロゾル質量分析法) の性能評価において、適切な粒径分布を持つテスト粒子を発生させることが必要となる。本研究の目的は、凝縮法に基づくナノ粒子発生装置を新たに試作し、粒径分布を決める要因とその制御方法を確立することである。
2. 実験
本研究で試作する凝縮粒子発生装置は、オレイン酸の均一核生成とそれに続いて起こる凝縮成長に基づくものである。オレイン酸はこの方法に適した蒸気圧を持ち、取扱が容易である。また、発生した粒子は常温で液体であるため衝突時の跳ね返りが無視できるという利点がある。実験装置は蒸発器、冷却管、粒径分布測定器の三要素からなる。蒸発器はオレイン酸の液体を加熱し蒸気を作り出す。冷却管では急激な温度差に伴うオレイン酸の均一核生成で粒子を生成する。粒径分布測定器には走査型移動度分級装置 (SMPS) を用いる。粒径分布を支配する主な要因には、蒸発器温度、流速、活性炭スクラバーが挙げられる。流速は過飽和度、経路内の滞留時間、冷却管下流への蒸気輸送量に影響を及ぼす。活性炭スクラバーは冷却器通過後の余剰のオレイン酸蒸気を取り除き、冷却器下流での凝縮成長を抑制する。これらのパラメータを変化させて粒径分布の変化を測定した。
3. 結果
粒径分布の各パラメータ (ピーク粒径、幅、モードの数) は、蒸発器温度、流量、活性炭スクラバーの有無に複雑に依存することが示された。特に、ピーク粒径の流量依存性は活性炭の有無によって逆の傾向を示した。活性炭有りの条件で流速を増加させることで、ナノ粒径域の実験に適した粒径分布 (ピーク粒径40-50 nm) が得られることが分かった。発表では、近似的な理論計算に基づき粒径分布の変化を支配するメカニズムについて議論する。