日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS13] ミクロスケール気象現象解明にむけた稠密観測・予報の新展開

2016年5月23日(月) 10:45 〜 12:15 301A (3F)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)、座長:東 邦明(京都大学生存圏研究所・メトロウェザー株式会社)

11:00 〜 11:15

[AAS13-08] 地上気温観測における日射/放射影響の評価
―マイクロ波放射計輝度温度利用の検討―

*山本 哲1 (1.気象研究所)

キーワード:地上気象観測、地上気温観測 、温度計、地上設置マイクロ波放射計 、温度計用通風筒

温度計による地上気温観測においては日射/放射の影響が不可避であり、これを軽減するため通風筒が用いられるが、通風筒が日射/放射の影響を受けることなどによる影響が残る場合があり、その特性は通風筒の種類毎に異なる。通風筒特性を評価するための基準値として日射/放射の影響が原理的に小さい方法により地上気温を観測することが考えられ、極細センサー(ISO 2007)、超音波風速温度計(Lacombe et al. 2011)などが提案されている。本研究では大気の放射輝度温度の利用を検討する。
地上設置多波長マイクロ波放射計MP-3000A(Radiometrics社)では50~60GHzの周波数領域の14チャンネルにおいて大気(主に酸素)の放射輝度温度を複数仰角で観測している。最も大気吸収の強いチャンネル(58.8GHz)の最低仰角(9.45度)のデータを比較対象とした。同時に行われた2種の温度計による地上気温観測(強制通風筒格納の白金抵抗式温度計・メティックTD-500、MP-3000A筐体内の温湿度センサーRotronic S3(強制通風式))とあわせ、3種の温度の差の日変化を図に示す。ばらつきはあるものの、平均的には夜間は時間変化が小さくほぼ一定、昼間は12時頃最大となる時間変化を示す。差の要因については測器の日射/放射特性のほか、観測空間の違いも検討する必要がある。
大気放射を用いた地上気温観測方法としては、より強い大気吸収を示す赤外線を用いることが考えられる。また、極細センサーなど日射/放射の影響が原理的に小さい別の観測法との比較も必要である。
謝辞 多波長マイクロ波放射計等の観測データは科学技術振興調整費「渇水対策のための人工降雨・降雪に関する総合的研究」(2006~2010年度)で得られたもので気象研究所田尻拓也主任研究官から提供を受けた。

(a)強制通風筒格納温度計の気温観測値とマイクロ波放射計58.8GHz仰角9.45度輝度温度の差(前者から後者を減じた)の箱ひげ図日変化。2010年5月高知市(鏡観測サイト)での観測。前1時間降水量が0.5mm以上の場合を除く。箱上辺は第3四分位点、下辺は第1四分位点、箱内部横線は中央値、上下に伸びる垂線は四分位点から箱幅1.5倍以内のデータ範囲を表す。
(b) 強制通風筒格納温度計とマイクロ波放射計筐体内温湿度センサー(強制通風式)による気温観測値の差、ほかは(a)と同じ。
参考文献
International Organization for Standardization, 2007: ISO 17714:2007 Meteorology - Air temperature measurements - Test methods for comparing the performance of thermometer shields/screens and defining important characteristics. 19 pp.
Lacombe, M., D. Bousri, M. Leroy, and M. Mezred, 2011: WMO field intercomparison of thermometer screens/shields and humidity measuring instruments: Ghardaia, Algeria, November 2008-October 2009. World Meteorological Organization, 106 pp.