11:00 〜 11:15
[AHW16-08] 流域の土地利用変化が河川水中の硝酸の起源に与える影響について
硝酸(NO3-)は、生態系の根幹となる一次生産(光合成)に必須の栄養塩の1つであり、水環境中の一次生産の制限元素となることも多く、その増減は、生態系に対して非常に大きな影響を及ぼす。特に河川水中の硝酸濃度は、系内はもちろん、下流に位置する湖沼やダム、沿岸海域の一次生産や生態系構造を直接的に左右する可能性があるため、各河川水中の硝酸濃度が、流域(集水域)内のどのような過程で制御されているのか、知見を深めておく必要がある。しかし、大気からの沈着や、硝化による生成、同化や脱窒による除去など、多様な供給・除去過程を考慮せねばならず、硝酸濃度の制御過程を理解するのは容易では無い。さらに農地や都市域等を流域に持つ場合は、人為的な影響も大きい。
近年になって、河川水などの一般水環境中の硝酸の窒素・酸素安定同位体組成(δ15N、δ18O、Δ17O)の高感度分析法が確立し、硝酸の起源が高確度・高精度で推定できるようになった。特に同化や脱窒過程で値が変化しない三酸素同位体異常(Δ17O =δ17O-0.52*δ18O)は有用で、各河川水中の硝酸についてこれを定量化することで、大気沈着由来の硝酸(大気硝酸)と、硝化によって生成する硝酸(再生硝酸)の混合比を、正確に定量化できるようになった。さらに定量化した大気硝酸の混合比をもとに、それが窒素や酸素の安定同位体組成(δ15Nおよびδ18O)に与えた影響を差し引くことが出来るので、そこから再生硝酸の起源を高精度で議論することも出来るようになった。
そこで本研究では、①流域の土地利用の変化が河川水中の大気硝酸の混合比や絶対濃度に与える影響を定量的に評価する、②流域の土地利用の変化が河川水中の再生硝酸の同位体組成や起源(一般的な有機体窒素の硝化か、それとも人為起源か)に与える影響を定量的に評価する、の二点を主目的に、琵琶湖の流入河川(n=33)と流出河川(n=1)について、その濃度と窒素・酸素安定同位体組成(δ15N、δ18O、Δ17O)を、季節変化を含めて1年間に渡って調べた。琵琶湖は南部を中心に都市化が進行する一方で、東部は農地(水田)が広がり、さらに北部は森林が広がるなど、流入河川の流域環境は河川間で大きく変化するため、流域の土地利用の変化が与える影響を評価するのに都合が良い。同様の試みは、同じ場所で過去にも実施されているが(Ohte et al., 2010)、今回は三酸素同位体異常を新規に測定項目に加えることで、定量結果の高精度化の実現を目指した。
近年になって、河川水などの一般水環境中の硝酸の窒素・酸素安定同位体組成(δ15N、δ18O、Δ17O)の高感度分析法が確立し、硝酸の起源が高確度・高精度で推定できるようになった。特に同化や脱窒過程で値が変化しない三酸素同位体異常(Δ17O =δ17O-0.52*δ18O)は有用で、各河川水中の硝酸についてこれを定量化することで、大気沈着由来の硝酸(大気硝酸)と、硝化によって生成する硝酸(再生硝酸)の混合比を、正確に定量化できるようになった。さらに定量化した大気硝酸の混合比をもとに、それが窒素や酸素の安定同位体組成(δ15Nおよびδ18O)に与えた影響を差し引くことが出来るので、そこから再生硝酸の起源を高精度で議論することも出来るようになった。
そこで本研究では、①流域の土地利用の変化が河川水中の大気硝酸の混合比や絶対濃度に与える影響を定量的に評価する、②流域の土地利用の変化が河川水中の再生硝酸の同位体組成や起源(一般的な有機体窒素の硝化か、それとも人為起源か)に与える影響を定量的に評価する、の二点を主目的に、琵琶湖の流入河川(n=33)と流出河川(n=1)について、その濃度と窒素・酸素安定同位体組成(δ15N、δ18O、Δ17O)を、季節変化を含めて1年間に渡って調べた。琵琶湖は南部を中心に都市化が進行する一方で、東部は農地(水田)が広がり、さらに北部は森林が広がるなど、流入河川の流域環境は河川間で大きく変化するため、流域の土地利用の変化が与える影響を評価するのに都合が良い。同様の試みは、同じ場所で過去にも実施されているが(Ohte et al., 2010)、今回は三酸素同位体異常を新規に測定項目に加えることで、定量結果の高精度化の実現を目指した。