日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW19] 都市域の水環境と地質

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、浅田 素之(清水建設株式会社)、滝沢 智(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)

17:15 〜 18:30

[AHW19-P02] 首都圏における地下温度の経年的な上昇とその要因-地下温度の長期モニタリングによる検証と評価-

*宮越 昭暢1林 武司2川合 将文3川島 眞一3國分 邦紀3濱元 栄起4八戸 昭一4 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門、2.秋田大学 教育文化学部、3.東京都土木技術支援・人材育成センター、4.埼玉県環境科学国際センター)

キーワード:地下温度、地下水流動、地下温暖化、地下水環境、都市化、首都圏

筆者らは,都市域における長期の地下水利用や都市特有の熱環境,地球温暖化に伴う気候変動が地下環境に及ぼす長期的な影響を把握するため,首都圏に位置する東京都および埼玉県を対象として,地下温度の観測を継続的に実施している。これまでに,両都県に整備されている地盤沈下・地下水位観測井網を活用して,2000年から2015年まで地下温度プロファイルを繰り返し測定し,地下温度分布の変化を把握した。また,2007年(埼玉県内4地点)および2012・2013年(東京都内6地点)から地下温度の高精度モニタリングを実施し,地下温度の連続的かつ微細な変化と,深度による変化傾向の差異を調査している。本発表では,それらの観測結果と,温度変化の要因に関する検討結果を報告する。
筆者らの先行研究(宮越他,2010など)により,本地域の地下温度には明瞭な地域差が認められ,都心において,郊外よりも相対的に高温であることが明らかとなっている。本研究では,2013~2015年の調査によって得られた地下温度分布と2003~2005年時の地下温度分布の比較により,過去9~10年間で地下浅部に広く温度上昇が生じていることが明らかとなった。また,地下温度の上昇量は郊外よりも都心で大きく,両地域の温度差が増加していることが明らかとなった。さらに,地下温度の上昇は時間の経過とともに,より深部でも確認され,地下温暖化が地下深部に向かって拡大していることが示された。
地下温度モニタリング結果から,これら地下温度の上昇が継続的に生じていることが確認され,温度上昇率は地域や深度により異なることが明らかとなった。埼玉県南東部に位置する観測地点における温度上昇率は深度30mで0.022℃/年,東京都東部に位置する観測地点では同じ深度で0.018℃/年であり,観測期間中の温度上昇率の変動は極めて小さく,概ね一定であることが確認された。また,温度上昇率は同一地点では地下浅部ほど大きい傾向が認められ,両地点における地下温度の上昇は,主に地表面温度の上昇に伴う熱伝導によって形成されたと考えられた。これに対して,都心に位置する観測地点の温度上昇率は,深度30mで0.20℃/年,深度40mで0.40℃/年を示し,深度40mでは微細ではあるが季節的な変動が認められた。このような傾向から,本地点における地下温度の上昇は,地表面温度上昇の影響のみで形成されたのではなく,地下構造物からの排熱の影響を受けていると考えられた。各観測地点で観測された地下温度の変化を,地下地質構造や地下水流動と併せて解析することで,地下温暖化の形成メカニズムを明らかにできると考えられる。
本研究は,東京都土木技術支援・人材育成センター,秋田大学,産業技術総合研究所,ならびに埼玉県,秋田大学,産業技術総合研究所による共同研究の一部として実施された。また本研究の一部はJSPS科研費25871190の助成を受けた。