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[BCG04-P01] Transition of microbial communities and laminated structures in travertines: a case study in northern Sumatra, Indonesia
キーワード:travertine, sulfur bacteria, stromatolite
トラバーチンとは,CO2とCa2+に富む温泉水から沈殿する炭酸塩堆積物である.太古代〜原生代に発達したストロマトライトと類似した縞構造を持つことから,当時のモダンアナログとされている.先行研究ではシアノバクテリアとストロマトライトの関連性が強調されてきたが,これはストロマトライトが既に存在していた太古代の極めて低い酸素濃度と矛盾する.酸素を発生しない微生物群集もストロマトライトを作る可能性がある.この問題を解決するため,本研究ではインドネシア共和国スマトラ島北部のDolok Tinggi Rajaで調査を行なった.ここでは,約62℃,無酸素で硫化水素と二酸化炭素に富む源泉からアラゴナイトとカルサイトで構成されるトラバーチンが長径約50mのマウンド状の地形を作る.水質分析の結果は,湧出直後の急速な二酸化炭素と硫化水素の脱ガス,溶存酸素濃度の上昇,pHと炭酸カルシウム過飽和度の上昇,流下経路での炭酸塩鉱物沈殿を示している.この水質条件の変化を反映するように,上流から下流にかけて微生物の優先種が化学合成細菌→紅色硫黄細菌→緑色非硫黄細菌→緑色硫黄細菌と遷移する.シアノバクテリアは下流部で認められるものの優先しない.遺伝子解析で検出された硫黄細菌の中には,紅色硫黄細菌Chromatiaceae科の様な明らかな非酸素発生型光合成細菌も認められた.おそらく,硫化水素が豊富にある環境では,水を用いる酸素発生型光合成(シアノバクテリア)よりも硫化水素を用いる非酸素発生型光合成(硫黄細菌)のほうが有利となるのだろう.微生物マットが発達している場所では,トラバーチンは縞構造を形成していることが多く,硫黄細菌でも大分県長湯温泉やジャワ島Pancuran Pituと同様の日輪組織を形成できる.したがって,太古のストロマトライトは必ずしもシアノバクテリアによって作られたものとは言えない.