14:15 〜 14:30
[G03-15] 地震動予測地図低リスク地域住民のリスク認知
キーワード:地震動予測地図、リスク、リスク認知、地震、防災、災害
首都直下地震や南海トラフでの巨大地震に備えて早急な防災対策が求められているが、東日本大震災での甚大な被害を目の当たりにしてもなお、巨大災害への対策が十分に進んでいるとは言いがたい。防災対策を進める方法のひとつとして、地震リスクに関するコミュニケーションの向上が挙げられるだろう。そこで、文部科学省地震調査研究推進本部が2005年から毎年発表している「全国地震動予測地図」を用いて、リスクコミュニケーションの効果を測定する調査を行った。
地震動予測地図は、ある地点が今後30年にどのくらいの確率で震度6弱以上の揺れに見舞われるかを確率と色とで表現したものである。地震本部は「地震による揺れの危険度を正しく認識し、防災意識や防災対策の向上に結びつける(2009)」ために作成・発行しているとしている。一方で、既存のリスクコミュニケーション研究では、確率情報の伝達について、文脈の影響が大きく、確率伝達が非常に困難であることが指摘されている(Visschersら、 2009)。そこで本研究では、地震動予測地図における確率の認知のされかたを明らかにするとともに提示手法の効果を検討することで、提示方法の改善案を検討した。
調査はウェブアンケートで行った。対象者は35~55歳までの世帯主か世帯主の配偶者で、自宅がある地域の地震動予測確率が高い地域(震度6弱の地震の発生確率が30年間に26-100%)と低い地域(3%未満)の居住者である。質問項目は大きく、震度階の閾値測定、地震動予測地図を用いた実感や恐怖感情の測定、防災行動意図の変化調査の3つからなる。
はじめに、気象庁の震度階を提示して「怖いので対処が必要」と感じるかを尋ね、当該実験参加者の震度階の閾値を測定した。次に、回答者をランダムに6つのグループに分類し、以下の流れで自宅がある地域の予測確率を回答してもらった。グループ1:世界地図で他の都市の地震リスクを確認し、自宅の地震動予測の色を回答。グループ2:世界地図で他の都市の地震リスクを確認し、自宅の地震動予測の数値を回答。グループ3:自宅の地震動予測の色のみ回答。グループ4:自宅の地震動予測の数値のみ回答。グループ5:世界地図や自宅の地震動予測を見ずに後述の質問に回答、グループ6:世界地図だけを見て後述の質問に回答。その後すべてのグループの回答者に、実際に自分が地震に遭うと思うかについて「必ず遭いそう〜まずないだろう」の5段階と「よくわからない」から、自宅の地震動予測確率に恐怖を感じるかについて「非常に怖い〜全く怖くない」の5段階と「よくわからない・その他」からそれぞれひとつを回答してもらった。
また、調査冒頭で既に行っている防災対策を13項目の中から選択してもらい、一連の調査に回答してもらった後に再び13項目を提示し、今後さらに充実させたい防災対策を選択してもらった。(項目:非常持出し袋の準備、家具転倒防止、地震保険への加入、家族との連絡方法の確認、出入口の確保、避難場所の確認、ガラス飛散防止、ブロック塀転倒対策、耐震診断、耐震補強、転居)
本調査は2015年度地震学会秋季大会にて発表した内容を、地震リスクが低い地域に拡張して調査したものである。地震リスクが高い地域に住む被験者においては、地震動予測地図の見せ方(世界との比較/色/数値)によらず被災実感が高くなっていることや、特に色で予測確率を回答する実験群は恐怖感情につながっているということがわかった。このようなリスク認知の変化は中地域に住む被験者には見られなかったが、このことは、少なくとも地震動予測地図が中地域住民に対して「他に比べて安心である」という危険な安心情報を与えることはしていないことを示唆している。本研究では、これが低い地域に住む被験者に対しても有効かどうかを検証し、報告する。
【参考文献】
・永松冬青・大木聖子・飯沼貴朗・大友李央・広田すみれ「地震予測地図の確率はどう認知されているのか」日本地震学会2015年度秋季大会発表論文集, 2015.
・大伴季央,大木聖子, 飯沼貴朗, 永松冬青, 広田すみれ「地震予測での不確実性の認知とコミュニケーション手法の改善」日本リスク研究学会2015年度秋季大会発表論文集, 2015.
・広田すみれ「地震予測『n年にm%の確率』はどう認知されているのか−極限法を用いた長期予測に対する怖さの閾値の測定−」,日本心理学会第78回大会発表論文集, 2015.
・VisschersH. MVivianne, MeertensMRee. (2009). Probability Information in Risk Communication : A Review of the Research Literature. Risk Analysis, 29.
・地震調査研究推進本部地震調査委員会. (2009). 全国地震動予測地図 技術報告書
地震動予測地図は、ある地点が今後30年にどのくらいの確率で震度6弱以上の揺れに見舞われるかを確率と色とで表現したものである。地震本部は「地震による揺れの危険度を正しく認識し、防災意識や防災対策の向上に結びつける(2009)」ために作成・発行しているとしている。一方で、既存のリスクコミュニケーション研究では、確率情報の伝達について、文脈の影響が大きく、確率伝達が非常に困難であることが指摘されている(Visschersら、 2009)。そこで本研究では、地震動予測地図における確率の認知のされかたを明らかにするとともに提示手法の効果を検討することで、提示方法の改善案を検討した。
調査はウェブアンケートで行った。対象者は35~55歳までの世帯主か世帯主の配偶者で、自宅がある地域の地震動予測確率が高い地域(震度6弱の地震の発生確率が30年間に26-100%)と低い地域(3%未満)の居住者である。質問項目は大きく、震度階の閾値測定、地震動予測地図を用いた実感や恐怖感情の測定、防災行動意図の変化調査の3つからなる。
はじめに、気象庁の震度階を提示して「怖いので対処が必要」と感じるかを尋ね、当該実験参加者の震度階の閾値を測定した。次に、回答者をランダムに6つのグループに分類し、以下の流れで自宅がある地域の予測確率を回答してもらった。グループ1:世界地図で他の都市の地震リスクを確認し、自宅の地震動予測の色を回答。グループ2:世界地図で他の都市の地震リスクを確認し、自宅の地震動予測の数値を回答。グループ3:自宅の地震動予測の色のみ回答。グループ4:自宅の地震動予測の数値のみ回答。グループ5:世界地図や自宅の地震動予測を見ずに後述の質問に回答、グループ6:世界地図だけを見て後述の質問に回答。その後すべてのグループの回答者に、実際に自分が地震に遭うと思うかについて「必ず遭いそう〜まずないだろう」の5段階と「よくわからない」から、自宅の地震動予測確率に恐怖を感じるかについて「非常に怖い〜全く怖くない」の5段階と「よくわからない・その他」からそれぞれひとつを回答してもらった。
また、調査冒頭で既に行っている防災対策を13項目の中から選択してもらい、一連の調査に回答してもらった後に再び13項目を提示し、今後さらに充実させたい防災対策を選択してもらった。(項目:非常持出し袋の準備、家具転倒防止、地震保険への加入、家族との連絡方法の確認、出入口の確保、避難場所の確認、ガラス飛散防止、ブロック塀転倒対策、耐震診断、耐震補強、転居)
本調査は2015年度地震学会秋季大会にて発表した内容を、地震リスクが低い地域に拡張して調査したものである。地震リスクが高い地域に住む被験者においては、地震動予測地図の見せ方(世界との比較/色/数値)によらず被災実感が高くなっていることや、特に色で予測確率を回答する実験群は恐怖感情につながっているということがわかった。このようなリスク認知の変化は中地域に住む被験者には見られなかったが、このことは、少なくとも地震動予測地図が中地域住民に対して「他に比べて安心である」という危険な安心情報を与えることはしていないことを示唆している。本研究では、これが低い地域に住む被験者に対しても有効かどうかを検証し、報告する。
【参考文献】
・永松冬青・大木聖子・飯沼貴朗・大友李央・広田すみれ「地震予測地図の確率はどう認知されているのか」日本地震学会2015年度秋季大会発表論文集, 2015.
・大伴季央,大木聖子, 飯沼貴朗, 永松冬青, 広田すみれ「地震予測での不確実性の認知とコミュニケーション手法の改善」日本リスク研究学会2015年度秋季大会発表論文集, 2015.
・広田すみれ「地震予測『n年にm%の確率』はどう認知されているのか−極限法を用いた長期予測に対する怖さの閾値の測定−」,日本心理学会第78回大会発表論文集, 2015.
・VisschersH. MVivianne, MeertensMRee. (2009). Probability Information in Risk Communication : A Review of the Research Literature. Risk Analysis, 29.
・地震調査研究推進本部地震調査委員会. (2009). 全国地震動予測地図 技術報告書