日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 閉鎖生態系における生物のシステムを介した物質循環

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*富田ー横谷 香織(筑波大学大学院生命環境科学研究科)

17:15 〜 18:30

[HCG28-P03] 陸棲シアノバクテリアの乾燥耐性に関与する遺伝子産物の探索

*安部 智子1飯室 瑠里香1木村 駿太2加藤 浩3木村 靖子4富田ー横谷 香織2 (1.東京電機大学、2.筑波大学、3.三重大学、4.十文字学園女子大学)

キーワード:シアノバクテリア、乾燥耐性、ストレスタンパク質

ネンジュモとも呼ばれる Nostoc 属は陸棲シアノバクテリアの一種であり、特に Nostoc commune は乾燥ストレスに対し強い耐性を示す、すなわち、菌体が乾燥した状態でも長期間生存可能であることが以前から知られている。本研究に用いた菌株Nostoc sp. HK-01 は、乾燥耐性を指標に、陸棲シアノバクテリアの中でも特に乾燥に強い株として新たに陸上から単離された株である。乾燥後にデシケーター内に8ヶ月放置した後でも、液体培地で培養すると乾燥前と同様に増殖を始めることが確認されている。さらに、本菌株は乾燥状態で高い耐熱性(100ºC, 10時間)を示すことも報告されており、過酷環境耐性研究の分野で特に注目されている。
本研究では、Nostoc sp. HK-01 株がどのようにしてこのような高い過酷環境耐性を獲得するのかを明らかにすることを目的とした。そのため、まず本菌体が湿潤状態(液体培養中)から乾燥状態に移行する際に特異的に発現する遺伝子を同定することにした。Nostoc sp. HK-01 株を液体培地中で十分に増殖させた後に集菌し、デシケーター中で乾燥させた。菌体が十分に乾燥するまでの間、乾燥過程にある菌体を経時的にサンプリングした。サンプリングした菌体を超音波で破砕し、細胞タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して解析した。その結果、液体培養中の菌体中には見られず、さらに乾燥過程で経時的に発現量が増加するタンパク質がいくつか確認された。このタンパク質は、菌体が乾燥するにつれて発現量が増加していることより本菌株の乾燥耐性に関与している可能性がある。今後は MALDI-TOF-MS を用いた質量分析法によりこれらのタンパク質を同定する予定である。