14:00 〜 14:15
[HDS19-14] 巨大津波襲来時における避航のための渦場の解析
キーワード:避航、渦、南海トラフ地震
内閣府は、将来30年以内に70%の確率でマグニチュード8~9程度の南海トラフ地震が発生すると想定している。被災後の復興に必要な船舶を巨大津波からどのように避航させるかは喫緊の課題である。津波の流速が2ノットを超えると船舶の操船が困難となる。また、渦場が発生しても操船は格段に難しくなる。ところが渦場については未評価である。本研究では、津波襲来時において避航に危険である強流帯や渦場が発生する海域を同時に抽出しマッピングするため、港湾や埋立地を分解可能な高解像度の津波シミュレーションを実施した。大阪湾を実験海域として設定し、南海トラフ地震を想定した計算結果に基づいて、巨大津波による渦の発生と消長について調べた。
使用したモデルは、内閣府が新想定した南海トラフ断層モデル、東北大学工学部で開発された津波モデルである。埋立地など複雑な海岸地形を表現するため、3段階のネスティング手法を用いて50 m分解能で大阪湾全域を表現した。陸上への遡上計算は行わず全反射させている。断層モデルを強制力として津波シミュレーションを実施した。計算期間は地震発生後10時間とした。
本発表では国際拠点港湾である堺泉北港周辺海域に注目した。当海域において地震発生から10時間後までに空間スケール900m~2500mの渦が発生していることがわかった。AISの座標データ(2012年9月1日~9月8日)から判別した主要航路上にも強い渦が発生していた。特に港湾入口付近においては津波流速が2ノット以上の渦が発生しており、操船が極めて困難な危険海域となる。このような強い渦は、第一波の押し波来襲時に急速に発達しはじめていた。渦の強さの指標として渦度の絶対値を計算したところ、地震発生から約80分後から渦度の絶対値が増加し、第一波の引き波開始時(地震発生120分後)から緩やかには減少するものの、発生した強い渦が港湾周辺海域に継続して残っていることを示唆していた。船舶避航の観点からみると、港外へ避航する場合は地震発生80分後までに堺泉北港入り口を通過しなければならないことを示唆する。例えば、堺第5区南部の最奥バースに停泊中の大型船(オイルタンカー等)が港外へ避航するとした場合、港内を通常平均5ノットで移動できると想定した時間を差し引くと、地震発生後27分以内に離岸しなければならない。
本研究成果は、津波シミュレーションの海事分野への実利用の一例として、これまで未評価であった津波による渦の発生域と強流帯を同時に評価することの重要性を示唆しており、巨大津波襲来時における避航方法を改善するために有用である。本研究グループでは、海域において発生しうる津波被害を津波マリンハザードと定義し、分野横断的な減災防災策を見出すことを急務としている。今後はあらゆる津波マリンハザードを想定可能としていくためには現実的な気象海象にも着目する必要があるだろう。
使用したモデルは、内閣府が新想定した南海トラフ断層モデル、東北大学工学部で開発された津波モデルである。埋立地など複雑な海岸地形を表現するため、3段階のネスティング手法を用いて50 m分解能で大阪湾全域を表現した。陸上への遡上計算は行わず全反射させている。断層モデルを強制力として津波シミュレーションを実施した。計算期間は地震発生後10時間とした。
本発表では国際拠点港湾である堺泉北港周辺海域に注目した。当海域において地震発生から10時間後までに空間スケール900m~2500mの渦が発生していることがわかった。AISの座標データ(2012年9月1日~9月8日)から判別した主要航路上にも強い渦が発生していた。特に港湾入口付近においては津波流速が2ノット以上の渦が発生しており、操船が極めて困難な危険海域となる。このような強い渦は、第一波の押し波来襲時に急速に発達しはじめていた。渦の強さの指標として渦度の絶対値を計算したところ、地震発生から約80分後から渦度の絶対値が増加し、第一波の引き波開始時(地震発生120分後)から緩やかには減少するものの、発生した強い渦が港湾周辺海域に継続して残っていることを示唆していた。船舶避航の観点からみると、港外へ避航する場合は地震発生80分後までに堺泉北港入り口を通過しなければならないことを示唆する。例えば、堺第5区南部の最奥バースに停泊中の大型船(オイルタンカー等)が港外へ避航するとした場合、港内を通常平均5ノットで移動できると想定した時間を差し引くと、地震発生後27分以内に離岸しなければならない。
本研究成果は、津波シミュレーションの海事分野への実利用の一例として、これまで未評価であった津波による渦の発生域と強流帯を同時に評価することの重要性を示唆しており、巨大津波襲来時における避航方法を改善するために有用である。本研究グループでは、海域において発生しうる津波被害を津波マリンハザードと定義し、分野横断的な減災防災策を見出すことを急務としている。今後はあらゆる津波マリンハザードを想定可能としていくためには現実的な気象海象にも着目する必要があるだろう。