日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG13] 自然資源・環境の利用と管理

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 101A (1F)

コンビーナ:*上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、座長:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)

13:45 〜 14:00

[HGG13-01] 2011年の地震と津波が沿岸域の利用に与えた影響とその生態系への波及効果の検討:東京湾奥部を例に

*山北 剛久1松岡 好美1岩崎 慎平2 (1.国)海洋研究開発機構、2.福岡女子大学)

キーワード:2011年東日本大震災、行動、マリンレジャー、潮干狩り、観光統計、東京湾

海辺の自然環境と人間生活との関わりは歴史的には深いものでした。多くの大都市は海辺に成立し、海辺の資源や交通上の利便性を享受しました。経済成長が重視される時代には、人間生活と海との関わりはあまり重視されてきませんでした。しかし、IPBES(生物多様性と生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)やミレニアム生態系評価に代表されるように、近年は持続可能な社会づくりの観点から人間と自然との関係性の重要性が再認識されています。特に海辺においては高い文化的サービスがあると考えられており、その価値の定量評価及び、社会システムとの関わりの解明によって、持続可能な社会づくりの良い事例を見出すことが期待されています。日本においてこれらの認識はCBD COP10以降に急速に広まりつつありました。
しかし、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による地震と津波は、それらサービスの享受に必要な人間と生態系との関係性も破壊したと考えられます。その例として、干潟の利用への地震と津波の影響を示すために、私たちは東京湾の最も奥に位置する干潟、三番瀬でのアンケートによって干潟における各種利用の利用者数の変化を評価しました。また、利用者数の減少が干潟の生物に与えた影響について検討しました。
その結果、震災前の利用の調査からは潮干狩り、散歩/ジョギングが最も一般的な利用でした。しかし、潮干狩りによる利用は震災後に減少しました。減少量は現地調査とアンケートで異なり(80%と64%)アンケート以上に現地での減少が進んでいることがわかりました。また、人々は物理的に損傷を受けた護岸や液状化を不安要因に挙げましたが、同様の潮干狩り客の減少傾向は、他の地域でも観察されており、震災そのものの不安などより普遍的な原因があると考えられました。これらの利用者数の減少と対応して、2012年には大型のアサリが増加しましたが、その数は2013年以降減少しました。