[H-QR15] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

[HQR15-P02] 北海道南西部, 瀬棚平野における中 ･ 上部更新統の層序

*横田 彰宏¹、近藤 玲介² (1.明治コンサルタント株式会社、2.皇學館大学教育開発センター)

キーワード：北海道南西部、瀬棚層、層序

1. はじめに
北海道南西部の瀬棚平野や黒松内低地帯には, 更新統の瀬棚層が広く分布する事が知られている (能條ほか, 1999など) . 瀬棚平野に分布する瀬棚層は主に斜交葉理の発達する凝灰質砂岩からなり, 上位は大谷地層, 下位は黒松内層と接する (能條 ･ 松田, 1997など).
能條ほか (1999) では生層序学的研究などから瀬棚層の堆積年代を約1. 2 Ma～0. 6 Maと推定してきた. しかし, これまで大谷地層と瀬棚層の層序関係や地形発達についての議論は少なく, 地形 ･ 地質関係を含めた詳細な堆積年代の決定には至っていない.
近藤ほか (今大会) ではpIRIR年代測定によって瀬棚平野に分布する瀬棚層と大谷地層から絶対年代値が得られてきた. そこで本発表では大谷地層および瀬棚層の層序関係や古環境について, これまで得られた堆積年代とともに検討を行う.
2. 各地層と結果
･ 大谷地層 (瀬棚地域)
大谷地層は北檜山-瀬棚間の海成段丘面構成層の下位に見られ, その分布は狭い. 露頭では下位から泥層, 砂層, 泥層の繰り返しが見られ, 層理面と平行に段丘礫層が覆う. 近藤ほか (今大会) によって大谷地層は酸素同位体ステージ (MIS) 7の年代値が得られている.
･ 瀬棚層 (今金-北檜山地域)
瀬棚層瀬棚層は瀬棚平野に広く分布する. トンケ川ii面の露頭では, 基盤の瀬棚層が下位から海成粘土, 砂 ･ シルト互層とあり, 段丘礫層と続く. 近藤ほか (今大会) によって本露頭の瀬棚層からMIS11の年代値が得られている.
3. 考察
地質構造から大谷地層は瀬棚層と不整合の関係で接することが明らかとなった. また, 瀬棚層末期の堆積物には海成粘土に砂や細礫を多く挟み, 段丘礫層がそれを覆う. 以上から, 瀬棚層最上部のMIS11前後には瀬棚平野で段丘の発達が始まっており, 大谷地層が堆積したMIS7前後には瀬棚平野は内湾的環境に変化したものと考えられる.
引用文献
近藤玲介 ･塚本すみ子 ･ 横田彰宏 ･ 植村杏太 ･ 五十嵐八枝子 ･ 塚本すみ子 ･ 坂本竜彦 (今大会) 北日本における中期更新世に形成された海成・河成段丘のpIRIR年代測定.
能條 歩 ･ 松田敏孝 (1997) 西南北海道今金 上八雲地域の瀬棚層の不整合. 今金地域研究 (今金町博物館建設準備室紀要) , 3, 15-28.
能條 歩 ･ 長谷川四郎 ･ 岡田尚武 ･ 都郷義寛 ･ 鈴木明彦 ･ 松田敏孝 (1999) 西南北海道瀬棚層の広域的岩相層序区分と生層序年代. 地質学雑誌, 5, 370-388.