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[HTT21-P14] 炭素、酸素及びストロンチウム安定同位体比分析の戦没者遺骨鑑定への応用パプアニューギニア人、日本人及び米国人遺骨の分別の試行的検討
キーワード:安定同位体比分析、戦争犠牲者、出身地域
近年、安定同位体比分析の法科学分野への応用が急激にすすんでいる。特に、ヒト歯牙エナメル質中の炭素、酸素及びストロンチウムの各安定同位体比は、それらの遺骨の身元確認の前段階におけるスクリーニング法として有効な情報を提供できる。本研究の目的は、第2次世界大戦におけるニューギニア戦線における戦没者遺骨分別を想定し、本法による地元民、日本兵及び米兵の分別について評価することである。本研究では、パプアニューギニア人(南ハイランド、東ニューブリテン及びブーゲンビル州)と日本人(鳥取県)の歯牙エナメル質中の炭素、酸素及びストロンチウム同位体比を計測し、先行研究であるアメリカ人におけるデータを参照し、判別分析による統計学的検討をおこなった。これらの3群からアメリカ人の分別は高精度に可能であった。パプアニューギニア人と日本人については一部地域では正確な分別が可能であった。以上の結果から、安定同位体比分析は、ニューギニア戦線における地元民、日本兵及び米兵の遺骨を分別する方法として有効となる可能性が示された。