日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT22] UAVが拓く新しい世界

2016年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 102 (1F)

コンビーナ:*近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、井上 公(防災科学技術研究所)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)、座長:近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

09:00 〜 09:15

[HTT22-01] UAVから投下させる貫入プローブ(ペネトレータ)による観測システムの開発

*田中 智1白石 浩章1白井 慶1石原 吉明1後藤 健1早川 雅彦1尾崎 正伸1水野 貴秀1山田 和彦1村上 英記2山田 竜平3 (1.宇宙科学研究所、2.高知大学、3.国立天文台)

キーワード:ペネトレータ、地球物理観測、防災

我々はUAVから投下して地球に設置する“ペネトレータ”と呼ばれる観測システムの開発を行っている.このシステムの原型は1990年に開始した月探査計画(LUNAR-A)で開発が進められたもので,本研究で地球観測用プローブとして再設計した.
本システムの概要は次の通りである:ペネトレータをUAVに搭載し,目的地(ここでは火山や地滑り災害などが発生し,立ち入りが困難な地域を想定している)まで輸送する.あらかじめ決められた地点でペネトレータを高度100〜数百メートル上空から投下する.ペネトレータは毎秒数十メートルの速度で地中に貫入し,地面に固定される(観測装置としては地震,GPS,傾斜などである).取得したデータはイリジウム通信で伝送し取得する.本システムの概要をFig1に示す.
我々はこれまでに1/4スケールサイズのペネトレータを搭載するランチャーを開発し,モーションセンサーを搭載したペネトレータ(1kg程度)の投下試験を2015年8月および9月に実施した(Fig.2).使用した無人機はフジインバック社製B-3M型である(http://www.fuji-imvac.jp/product/index.html) .飛行ルートおよび投下位置はフライト前にあらかじめプログラムされた,100,300,および500mの高度から投下試験を計10回実施し,20-30m程度以内の精度で予定した位置に着地することを確認できた.着地位置の誤差は投下位予定位置を感知する遅れおよび風の影響と考えている.
ペネトレータが貫入する際には3000-4000G程度の衝撃が機器に印可される.耐衝撃性を保証するためにこれまで我々は多くノウハウを蓄積しており,本研究では商用ベースで入手できるものから耐衝撃性が高いと思われる構造や部品を有するものを選定し,必要に応じて部品の取り替えや耐衝撃性のための処置をした.観測センサーは地震計,空振計,GPS,傾斜計を本研究では採用した.これまでにすべてのセンサーおよびバスシステム(通信機,コンピュータなど)の耐衝撃試験を完了しており,現在,システムのインテグレーション設計を行っている.ペネトレータの総重量は9kgを予定しており,200km程度の往復(片道100kmで復路はペネトレータなし)が可能であると推定している.
今後,実機サイズのペネトレータの投下試験を経て,父島から無人機を離陸させ,現在も立ち入り制限されている西之島新島への投下試験,およびその場でのリアルタイム地震観測などを予定している.我々が開発しているシステムは災害が発生した直後の観測に機動力と迅速性を発揮できると考えている.
本研究の遂行には平成27から開始した科学研究費補助金,基盤研究(A)(15H01793)を受けている.