09:45 〜 10:00
[HTT22-04] 電動発泡固定翼機による災害監視のための遠距離空撮実験
キーワード:UAV、災害、固定翼機
【はじめに】
我々は小型UAVを各種自然災害のリスク評価・監視・対応に有効に活用するための実験的研究を行っている。以前は操縦が容易で離着陸場所を選ばない回転翼機を調査に用いていたが、2015年からは、より長距離を飛行でき、かつ万一墜落した場合にも人や物を傷つける可能性の小さい発泡スチロール製の固定翼機の活用を進めている。我々の固定翼機体は翼幅118cm、バッテリとカメラを除く機体重量750gの無尾翼機で、APMフライトコントローラによって自律飛行を行う。飛行距離を優先させる場合は軽量のGoProカメラを搭載する。巡航対気速度は約60km/hで、平地の無風下での周回コースの試験飛行では、3セル5200mAhのバッテリをほぼ使い切れば約60分・60km飛行する。
【災害対応への活用のための実験】
防災情報システムの開発の一環として、UAVによる情報収集の実用化の研究を進めている。2015年8月5日に釜石湾において釜石市役所・消防・警察の立ち合いの下に遠距離空撮のデモンストレーションを実施した。釜石漁港を離陸して、釜石湾を右回りに一周する約15kmのルートを対地高度140mで飛行させ、湾岸の各所の港湾施設等を撮影した。
【河川監視への活用のための実験】
平時の河川管理や災害発生時の堤防や河川施設の状況把握にも、長距離を安全に飛行できる固定翼機が有用と考えられる。2015年11月20日に福岡県の筑後川、同12月9日に栃木県那の那珂川で、国交省河川事務所の許可を得て空撮実験を行った。筑後川では両築橋上流左岸の堤防上から上流10km地点までの区間を、那珂川では若鮎大橋下流左岸の堤防上から下流12km地点までの区間を、いずれも対地高度140mで往復させ、河川敷・堤防・橋梁等の空撮を行った。
【火山監視への活用のための実験】
火山活動の推移予測のためには、火口内の地形や温度分布、火口上空のガスや噴煙の成分が監視できることが望ましい。固定翼UAVを用いれば、活動が活発化した場合でも、半径数キロの立入制限区域の外から山頂火口を往復することができる。2015年10月8日にフィリピンのタール火山で、山頂の北約8kmの地点から標高差約200mの火口を往復させた。同11月21日には霧島新燃岳で、山頂の西約3kmの地点から標高差約400mの火口を往復させた。同12月8日には浅間山で、山頂の北東約5kmの地点から標高差約1300mの火口を目指したが、山頂のわずか手前で斜面に衝突した。直前に実施した別のテスト飛行のログの分析から、飛行に用いている気圧高度計による高度が系統的に8%大きく、それが墜落を引き起こした以上高度の原因であることがわかった。墜落場所の正確な位置はGPSテレメトリで分かっているため、雪解けを待って回収を試みる予定である。同12月9日には那須岳で、山頂の南東3.6kmの地点から総飛行距離約12kmで標高差約1000mの火口往復に成功した(付図)。
【議論】
以上の長距離空撮飛行実験は、いずれも弱風の条件下で、バッテリの消費量は半分かそれ以下で、十分余裕があった。風の影響は机上計算では、風速が機体の巡航対気速度(我々の機体では 17m/s)のそれぞれ10% (1.7m/s)、20% (3.3m/s)、50% (8.3m/s)、80% (13m/s)の場合、帰還するまでの所要飛行時間はそれぞれ111%、125%、200%、500%に増加する。風速が機体の巡航対気速度を超えると帰還は困難となる。従って実際の調査では、上空の風速の影響を考慮して、十分余裕をもった飛行計画を組む必要がある。
今後、バッテリ容量・ペイロード・風速・高度差・温度・降雨等の影響を定量的に評価するとともに、様々な場面での活用を想定して、より長距離の飛行に適した大きな機体と、逆により簡便で安全な小さな機体も含めて、発泡スチロール製電動固定翼機の実用的な能力評価を実施する予定である。
我々は小型UAVを各種自然災害のリスク評価・監視・対応に有効に活用するための実験的研究を行っている。以前は操縦が容易で離着陸場所を選ばない回転翼機を調査に用いていたが、2015年からは、より長距離を飛行でき、かつ万一墜落した場合にも人や物を傷つける可能性の小さい発泡スチロール製の固定翼機の活用を進めている。我々の固定翼機体は翼幅118cm、バッテリとカメラを除く機体重量750gの無尾翼機で、APMフライトコントローラによって自律飛行を行う。飛行距離を優先させる場合は軽量のGoProカメラを搭載する。巡航対気速度は約60km/hで、平地の無風下での周回コースの試験飛行では、3セル5200mAhのバッテリをほぼ使い切れば約60分・60km飛行する。
【災害対応への活用のための実験】
防災情報システムの開発の一環として、UAVによる情報収集の実用化の研究を進めている。2015年8月5日に釜石湾において釜石市役所・消防・警察の立ち合いの下に遠距離空撮のデモンストレーションを実施した。釜石漁港を離陸して、釜石湾を右回りに一周する約15kmのルートを対地高度140mで飛行させ、湾岸の各所の港湾施設等を撮影した。
【河川監視への活用のための実験】
平時の河川管理や災害発生時の堤防や河川施設の状況把握にも、長距離を安全に飛行できる固定翼機が有用と考えられる。2015年11月20日に福岡県の筑後川、同12月9日に栃木県那の那珂川で、国交省河川事務所の許可を得て空撮実験を行った。筑後川では両築橋上流左岸の堤防上から上流10km地点までの区間を、那珂川では若鮎大橋下流左岸の堤防上から下流12km地点までの区間を、いずれも対地高度140mで往復させ、河川敷・堤防・橋梁等の空撮を行った。
【火山監視への活用のための実験】
火山活動の推移予測のためには、火口内の地形や温度分布、火口上空のガスや噴煙の成分が監視できることが望ましい。固定翼UAVを用いれば、活動が活発化した場合でも、半径数キロの立入制限区域の外から山頂火口を往復することができる。2015年10月8日にフィリピンのタール火山で、山頂の北約8kmの地点から標高差約200mの火口を往復させた。同11月21日には霧島新燃岳で、山頂の西約3kmの地点から標高差約400mの火口を往復させた。同12月8日には浅間山で、山頂の北東約5kmの地点から標高差約1300mの火口を目指したが、山頂のわずか手前で斜面に衝突した。直前に実施した別のテスト飛行のログの分析から、飛行に用いている気圧高度計による高度が系統的に8%大きく、それが墜落を引き起こした以上高度の原因であることがわかった。墜落場所の正確な位置はGPSテレメトリで分かっているため、雪解けを待って回収を試みる予定である。同12月9日には那須岳で、山頂の南東3.6kmの地点から総飛行距離約12kmで標高差約1000mの火口往復に成功した(付図)。
【議論】
以上の長距離空撮飛行実験は、いずれも弱風の条件下で、バッテリの消費量は半分かそれ以下で、十分余裕があった。風の影響は机上計算では、風速が機体の巡航対気速度(我々の機体では 17m/s)のそれぞれ10% (1.7m/s)、20% (3.3m/s)、50% (8.3m/s)、80% (13m/s)の場合、帰還するまでの所要飛行時間はそれぞれ111%、125%、200%、500%に増加する。風速が機体の巡航対気速度を超えると帰還は困難となる。従って実際の調査では、上空の風速の影響を考慮して、十分余裕をもった飛行計画を組む必要がある。
今後、バッテリ容量・ペイロード・風速・高度差・温度・降雨等の影響を定量的に評価するとともに、様々な場面での活用を想定して、より長距離の飛行に適した大きな機体と、逆により簡便で安全な小さな機体も含めて、発泡スチロール製電動固定翼機の実用的な能力評価を実施する予定である。