[H-TT23] 環境リモートセンシング

[HTT23-09] インドネシア森林火災と表面土壌水分量の関係
—衛星画像解析と土壌スペクトル測定を通して−

*橋本 朝陽¹、秋田 萌花¹、太田 哲資¹、高橋 唯人¹、鎌田 夏美¹、鈴木 光¹、長谷川 陽子¹、荻野 由香¹、成瀬 延康^1,2、高橋 幸弘^1,3 (1.北海道大学グローバルサイエンスキャンパス、2.北海道大学高等教育推進機構、3.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード：森林火災、インドネシア、表面土壌水分量、リモートセンシング、反射スペクトル

近年、インドネシアで発生している森林火災は、深刻な煙害を引き起こしている。飛行機の離発着に影響を与え、隣国にも健康被害をもたらすなど大きな社会問題として日本でも知られるようになった。特に、2015年には過去最大級のエルニーニョ現象が発生し、インドネシアの多くの地域で降水量が減少した結果、森林火災が多発したとされている。山火事発生の最初の原因は人為的なものであることが多いが、延焼範囲の拡大には、環境的な要因、つまり降水量を反映した土壌水分量が関係していると考えられている。また、インドネシアは熱帯地域では珍しく、ピートランドに覆われている地域が多く、降水量の減少により、火災時に土壌すら燃えて炭化することも森林火災が長期化する要因となっている。従来、こうした表面土壌水分量の地域差を解明するには人工衛星から取得した赤外画像が利用されてきたが、数十kmの空間分解能しか達成できておらず、詳細な火災の発生地点との相関については不明であった。また、過去には、代表的な植生指数NDVI（Normalized Difference Vegetation Index）の変化を通じてインドネシアの土壌水分量予測の詳細なマッピングがなされた報告はある。しかしながら、土壌水分量の変化と植生指数の変化にはタイムラグがあり、火災発生の危険度を詳細に予測するには更なる研究が必要である。
本研究では、インドネシアの森林火災の発生域と表面土壌水分量との関係をリモートセンシングにより高い空間分解能で解明する手法の確立を目的とする。この目的に対するアプローチとして、我々は、①異なる土壌水分量での土壌反射スペクトルの実測、②土壌反射スペクトルと土壌水分量の関係を利用して山火事の発生域と土壌水分量との相関に注目した研究を行う。本研究による手法が確立すれば、途上国における山火事の危険域の詳細な予測につながることが期待される。
まず、インドネシアで火災が多発しているスマトラ島のブランピディエ、リアウ州、マルタプラの３地点の土壌水分量を衛星画像から推定した。土壌水分量の推定には正規化水指数NDWI（Normalized Difference Water Index）と NDSI(Normalized difference Soil Index)を利用した。3地点のNDWI,NDSIの各値は、0.3程度、数値が季節により変動し、雨期乾期が明確に区別できた。森林火災の発生は各３地点ともに、乾季の終盤である9-10月に多発しており、森林火災の発生回数と土壌水分量との間には相関があるということが示唆された。この結果を基に、NDWIとNDSIの２次元マッピングと火災発生地点との比較から、森林火災との相関を導出した。さらに、インドネシアがピートランドに覆われていることを考慮し、ピートランドの反射スペクトルの土壌水分依存性を実測し、衛星画像と比較した。