17:15 〜 18:30
[MGI20-P05] 上高地・槍・穂高地域における気温の鉛直構造
キーワード:気温逆転、冷気湖、気温低減率
大気現象は気温,日射量,湿度などの様々な要素から成り立っており,これらは空間的に多様な変動を示し,山岳地域では標高の高さや複雑な地形のために局地的な大気現象が生じやすい.また,気象要素はフィールドにおける諸現象の制御要因であるため,山岳地域の気象を理解することは様々な研究分野への応用や資源管理,防災などの観点から重要である.しかしながら,山岳地域ではアクセスの困難さや観測機器の設置の難しさのため,観測は未だ不足している.そこで本研究では,北アルプス南部の上高地・槍・穂高地域における観測から気温の鉛直構造および気象特性を明らかにすることを目的とした.
対象地域では1月が最寒月,8月が最暖月であり,月平均比湿も1月に最小,8月に最大となった.日積算日射量は12月に最小,5月に最大となり,月平均気温日較差との間に正の相関が見られた.また,気温日較差は標高の増加とともに小さくなる傾向を示した.気温逆転の発生日数は,晴天日の多い春季および秋季に多く,降水日の割合が増加する夏季および冬季に減少した.一方,日最大逆転温度は日没から日出までの時間が長い冬季に大きくなり,夜間が短くなる夏季には小さくなる傾向を示し,冷気湖の継続時間も冬季に増加した.強い逆転の出現は上高地・槍・穂高地域が移動性高気圧に覆われた日に多く,南高北低型の気圧配置となった日にはあまり見られなかった.月平均気温逓減率は月平均相対湿度および月平均比湿と負の相関を示し,春季に最大,秋季に最小となる年周期の変動パターンをとった.対象地域が移動性高気圧に覆われた日や,晴天日には日中の相対湿度低下に伴い気温逓減率が増大したが,秋季には移動性高気圧に伴う沈降性逆転の影響を受け,晴天日の気温逓減率が減少した.また,本研究で得られた地表付近の気温逓減率を自由大気の逓減率と比較し,前者は後者に比べ変動幅が大きく,標準大気の逓減率を地表付近の気温推定に用いるのは不適当であると言う結論を得た.
対象地域では1月が最寒月,8月が最暖月であり,月平均比湿も1月に最小,8月に最大となった.日積算日射量は12月に最小,5月に最大となり,月平均気温日較差との間に正の相関が見られた.また,気温日較差は標高の増加とともに小さくなる傾向を示した.気温逆転の発生日数は,晴天日の多い春季および秋季に多く,降水日の割合が増加する夏季および冬季に減少した.一方,日最大逆転温度は日没から日出までの時間が長い冬季に大きくなり,夜間が短くなる夏季には小さくなる傾向を示し,冷気湖の継続時間も冬季に増加した.強い逆転の出現は上高地・槍・穂高地域が移動性高気圧に覆われた日に多く,南高北低型の気圧配置となった日にはあまり見られなかった.月平均気温逓減率は月平均相対湿度および月平均比湿と負の相関を示し,春季に最大,秋季に最小となる年周期の変動パターンをとった.対象地域が移動性高気圧に覆われた日や,晴天日には日中の相対湿度低下に伴い気温逓減率が増大したが,秋季には移動性高気圧に伴う沈降性逆転の影響を受け,晴天日の気温逓減率が減少した.また,本研究で得られた地表付近の気温逓減率を自由大気の逓減率と比較し,前者は後者に比べ変動幅が大きく,標準大気の逓減率を地表付近の気温推定に用いるのは不適当であると言う結論を得た.