日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS07] ジオパーク

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

17:15 〜 18:30

[MIS07-P01] イラスト化による1930年北伊豆地震の復元

*熊谷 誠1,2伊藤 英之3大原 映美3鈴木 雄介4 (1.三陸ジオパーク推進協議会、2.岩手県立大学大学院総合政策研究科、3.岩手県立大学総合政策学部総合政策学科、4.伊豆半島ジオパーク推進協議会)

キーワード:北伊豆地震、インタビュー、イラスト

わが国では、これまで東日本大震災や新潟県中越地震、阪神・淡路大震災など多くの地震災害が発生し、多くの記録・教訓が残されてきた。なかでも、東日本大震災では、携帯電話やデジタルカメラなどの普及から、一般市民による記録も数多く残されている。しかしながら、過去の災害の中には、戦時下の情報統制などにより、ほとんど記録が残されていない災害もある。このような災害について、林ら(2006)は1945年に愛知県三河地方で起きた三河地震について、被災者へのインタビュー調査を行い、調査から得られた被災体験を文章のみならず、日本画で再現するという試みを行っている。本研究では、第二次大戦直前の1930年に発生し、発災から85年を経過した北伊豆地震について、少なくなりつつある当時の被災体験者へのインタビューを通じて、被災状況や被災後の生活、生活再建などの様子をイラストとして復元した。
インタビュー調査に先立ち、静岡県三島市立図書館での文献・新聞資料、住宅地図等の収集を行い、当時の静岡県内の出来事や社会状況等について整理し、インタビュー時の補助資料とした。
インタビュー調査は、2015年10月11日に静岡県函南町、韮山町在住で当時の地震体験者2名を対象に行った。インタビュー形式は対面式で、インタビュアー、写真撮影、ラフスケッチを各1名が担当し、他3名がインタビュー補助を行った。インタビューは1)地震発生当時の暮らしと、避難行動に関する質問、2)地震による人的被害と物的被害に関する質問、3)生活再建過程における支援に関する質問の3点を軸に行い、体験者が覚えている内容を自由に話してもらう形をとった。より被害の様子や生活再建の過程を正確に描くため、得られた体験談については、「それはいつ頃起きたことか」ということと、「それはどこで起きたのか」ということを可能な限り明らかにするようにした。このように、一定の質問を軸にインタビューを進めながら、体験者の記憶内容に応じて質問を変え、聞き取りを行った。
インタビューの結果から、体験者2名のうち、函南町在住の体験者からは地震前後の時系列と居住地周辺の様子を確認できる情報が得られた。一方、韮山町在住の体験者からは断片的な場面の情報しか得られなかった。これらのインタビュー結果をもとに、1)地震前の生活、2)地震前に行われていた備え、3)地震による人的被害、4)地震後の避難、5)家屋の修繕や地域の瓦礫処理の様子など、合計10枚のイラストを作成した。
インタビュー結果からイラスト化する素材を検討する際に、併せて教訓の抽出も行った。その結果、地震前の取り組みから北伊豆地震の7年前に発生した関東大震災の被害を教訓とした家屋倒壊や火災予防の意識が、体験者の居住する地域でも醸成されていたことが明らかになった。また、11月26日の地震発生の前から地震が頻発していたことを受けて、地域で地震への警戒、具体的な備えがなされていたことなども明らかになった。
本研究で作成されたイラストのうち、特に函南町のケースは地震前からの取り組みと被災時、被災後の様子が時系列で表現でき、また当時の教訓についても触れることができることから、今後、紙芝居といった読み聞かせや塗り絵など子供向け教材としての活用についても検討の余地があると考える。