16:45 〜 17:00
[MIS08-06] 地震発生の直前に現れる直流電場の観測
キーワード:地震関連直流電場、電場の地上観測
最近の電離層電子密度の観測研究で、電子密度が地震発生前から増加傾向を示すと言う事が確実となってきた(Heki, GRL, 2011 他)が、そのメカニズムとして、地震前に直流 (DC)電場が発生する事が候補の一つとして挙げられている。一方、地震発生に伴う電磁波励起現象を解明するために筆者が行った実験(地震を模擬した岩石への衝撃印加の室内実験)において、衝撃が加わる直前にDC電場が現れる事を示した。これらの状況から、地震が発生する直前にはDC電場が発生する可能性があるとの仮説に基づき、それを解明するための観測研究を開始した。
地震に関連して発生するだろうと思われる電磁界観測のためには、人工電磁波雑音(特に電車による電磁界の影響)の少ない、静穏な環境が必要であったので、電車軌道から十分(9.3 km)離れた京都北部の山中でこの観測を開始した。
空間電場の検出センサーとして、直線状ダイポールアンテナを使用した。大地(GND)に対する両ダイポールアンテナ素子の電気的平衡状態の対策を講じなければ空間における大気電気等の影響による対地電場の変動が常に検出されてしまい、目的とするDC電場を精度よく測定する事はできない。そのため、本研究ではダイポールアンテナの給電方法に注意を払った。即ち、DC電場のみを検出・観測する事とアンテナ素子の電気的平衡を確保するために、給電部分では、抵抗とコンデンサーを並列接続した回路を2セット用意し、それらを直列に接続して給電回路とした。その給電回路の中点(接続点)を接地し、回路の両端に夫々の線状ダイポールアンテナ素子を接続した。この給電回路の両端とアンテナ線との間の2つの接続点間に現れる電位差を差動増幅器(プリアンプ)で検出する事で、大地に対して変動する空間全体の電場成分はコモンモードとして除去する事ができる。一方、空間を伝搬してきた様々な電磁波による交流雑音成分は給電回路のコンデンサーによりGNDに短絡させる事により、DC電場成分のみを測定できるようにした。このように製作した全長5 mの2本のダイポールアンテナを、地上高4 mの位置で、東西と南北の2方向に設置して、水平面内でのDC電場の偏波状況を確認する事を目指した。プリアンプで700倍に増幅された出力電圧は4チャンネルの同時サンプリングのAD変換器で、1秒毎にサンプリングを行い、ディジタル化した4096点のデータ(約68分間)を1つのファイルとして、パーソナルコンピュータに自動的に保存できるようにした。これにより、68分間のDC電場の変動を見る事ができる。この装置を用いて2016年2月5日から観測を開始した。
試験観測において、電場の日変化の状況を調べた結果、以下の事が判った。即ち、夜明け後の時間が経つと、太陽の大地への照射による地表付近の大気電気の揺らぎの影響と思われる電場の複雑な変動が現れ、その変動振幅は昼の12時から14時頃に掛けて最大となるが、時間と共にその揺らぎが減少していき、夕方の18時を過ぎるころからは静穏になり、深夜においては極めて静穏なDC電場の状態となり、それが夜明け過ぎまで続いていた。故に夕方から夜明けまでの間において、この観測を行えば、地震関連の電場が発生した場合でも極めて精度良くその変化等をモニタできる事が判った。
観測を初めて4日目の2月9日の08:28:30.9 JSTに本観測点から西方18.5 kmの深さ12 kmでM2.1の地震が発生した事が気象庁から発表された。本観測点近傍でM2以上の地震が発生したのは久々であった。そこで、DC電場の観測データをチェックしたところ、深夜から継続して静穏で安定していた空間電場は、地震発生の35分前から急激に長周期(約25分)の大きな変動が見られた。そこには2分程度の周期を持つ変動をも重畳している上に、更に周期の短い(周期8秒程度)の比較的振幅の大きい交流雑音も重畳した複雑な波形となっていた。その短周期の変動成分を解析した結果、楕円偏波をしている事が判ったので、この電界成分は地中から放出されたものと考えられる。そしてこれらの大きな変動が終わった8分後に地震が発生した(気象庁発表)とされている。このように周期約25分の大きなDC電場の変動の形は、岩石への衝撃印加の室内実験において、衝撃が加わる直前に発生したDC電場の変化と相似的な形状をしていた。
地震発生として発表された時刻前後においては、電場波形には特徴的な変化が見られず、その後の電磁波観測点までの地震波伝搬時間(約6秒)後に検出されるだろう地震波も検出されておらず、磁界パルスも検出されていない事が疑問として残っている。
このような電場が地震前に発生するかどうかを確実なものにするためには、今後この種のデータを定量的に集める事が重要である。それにより、地震との関連性を明確化させる事ができる。そうすれば次はこの電場発生のメカニズムを議論する事ができる。
地震に関連して発生するだろうと思われる電磁界観測のためには、人工電磁波雑音(特に電車による電磁界の影響)の少ない、静穏な環境が必要であったので、電車軌道から十分(9.3 km)離れた京都北部の山中でこの観測を開始した。
空間電場の検出センサーとして、直線状ダイポールアンテナを使用した。大地(GND)に対する両ダイポールアンテナ素子の電気的平衡状態の対策を講じなければ空間における大気電気等の影響による対地電場の変動が常に検出されてしまい、目的とするDC電場を精度よく測定する事はできない。そのため、本研究ではダイポールアンテナの給電方法に注意を払った。即ち、DC電場のみを検出・観測する事とアンテナ素子の電気的平衡を確保するために、給電部分では、抵抗とコンデンサーを並列接続した回路を2セット用意し、それらを直列に接続して給電回路とした。その給電回路の中点(接続点)を接地し、回路の両端に夫々の線状ダイポールアンテナ素子を接続した。この給電回路の両端とアンテナ線との間の2つの接続点間に現れる電位差を差動増幅器(プリアンプ)で検出する事で、大地に対して変動する空間全体の電場成分はコモンモードとして除去する事ができる。一方、空間を伝搬してきた様々な電磁波による交流雑音成分は給電回路のコンデンサーによりGNDに短絡させる事により、DC電場成分のみを測定できるようにした。このように製作した全長5 mの2本のダイポールアンテナを、地上高4 mの位置で、東西と南北の2方向に設置して、水平面内でのDC電場の偏波状況を確認する事を目指した。プリアンプで700倍に増幅された出力電圧は4チャンネルの同時サンプリングのAD変換器で、1秒毎にサンプリングを行い、ディジタル化した4096点のデータ(約68分間)を1つのファイルとして、パーソナルコンピュータに自動的に保存できるようにした。これにより、68分間のDC電場の変動を見る事ができる。この装置を用いて2016年2月5日から観測を開始した。
試験観測において、電場の日変化の状況を調べた結果、以下の事が判った。即ち、夜明け後の時間が経つと、太陽の大地への照射による地表付近の大気電気の揺らぎの影響と思われる電場の複雑な変動が現れ、その変動振幅は昼の12時から14時頃に掛けて最大となるが、時間と共にその揺らぎが減少していき、夕方の18時を過ぎるころからは静穏になり、深夜においては極めて静穏なDC電場の状態となり、それが夜明け過ぎまで続いていた。故に夕方から夜明けまでの間において、この観測を行えば、地震関連の電場が発生した場合でも極めて精度良くその変化等をモニタできる事が判った。
観測を初めて4日目の2月9日の08:28:30.9 JSTに本観測点から西方18.5 kmの深さ12 kmでM2.1の地震が発生した事が気象庁から発表された。本観測点近傍でM2以上の地震が発生したのは久々であった。そこで、DC電場の観測データをチェックしたところ、深夜から継続して静穏で安定していた空間電場は、地震発生の35分前から急激に長周期(約25分)の大きな変動が見られた。そこには2分程度の周期を持つ変動をも重畳している上に、更に周期の短い(周期8秒程度)の比較的振幅の大きい交流雑音も重畳した複雑な波形となっていた。その短周期の変動成分を解析した結果、楕円偏波をしている事が判ったので、この電界成分は地中から放出されたものと考えられる。そしてこれらの大きな変動が終わった8分後に地震が発生した(気象庁発表)とされている。このように周期約25分の大きなDC電場の変動の形は、岩石への衝撃印加の室内実験において、衝撃が加わる直前に発生したDC電場の変化と相似的な形状をしていた。
地震発生として発表された時刻前後においては、電場波形には特徴的な変化が見られず、その後の電磁波観測点までの地震波伝搬時間(約6秒)後に検出されるだろう地震波も検出されておらず、磁界パルスも検出されていない事が疑問として残っている。
このような電場が地震前に発生するかどうかを確実なものにするためには、今後この種のデータを定量的に集める事が重要である。それにより、地震との関連性を明確化させる事ができる。そうすれば次はこの電場発生のメカニズムを議論する事ができる。