[M-IS11] 津波堆積物

[MIS11-05] 静岡県志太平野の津波堆積物

*北村 晃寿¹ (1.静岡大学理学部地球科学教室)

キーワード：志太平野、完新世、津波堆積物

中央防災会議は，2012年に南海トラフで起こる最大クラスの巨大な地震・津波(レベル2の地震・津波)の予測を公表した．その結果，従来に比べて，想定される被害規模が大きくなった沿岸市町では，住民に不安を与えている．こうした状況を踏まえて，北村ほか(2015)は，志太平野の9箇所でボーリング掘削し，津波堆積物の調査を行ったが検出されず，レベル2の津波の痕跡は見つからなかったが，資料の一部は，大井川の洪水の影響を受けている可能性があり，津波堆積物の検出には適切ではないことが判明した．そこで，今回，瀬戸川の自然堤防で，大井川の影響を受けていない志太平野北部の平地(標高2～3.5 m)の4地点でボーリング掘削を行い，津波堆積物の調査を実施した．
その結果，以下の知見を得た．
１．津波堆積物と推定されるイベント層が少なくとも二層発見された．
２．上位のイベント層は，西暦1025年以降なので，西暦1498年の明応津波の津波堆積物の可能性がある．
３．下位のイベント層は，西暦780年から西暦1025年の間に堆積したことから，西暦887年に南海トラフで発生した仁和地震の津波堆積物である可能性が高い．この地震の発生時に志太平野北部では海岸の急速な後退が起きたと推定され，その原因は海底地滑りによる海岸地形の変化の可能性がある．