日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 遠洋域の進化

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)、栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、尾上 哲治(熊本大学大学院自然科学研究科)、木元 克典(独立行政法人海洋研究開発機構)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、植田 勇人(新潟大学理学部地質科学科)、小林 健太(新潟大学理学部地質科学科)、長谷川 卓(金沢大学自然システム学系)

17:15 〜 18:30

[MIS13-P02] 微量有機炭素・低TOC試料の有機炭素同位体比分析法の検討

*長谷部 桂一朗1後藤(桜井) 晶子2長谷川 卓2 (1.金沢大学大学院自然科学研究科自然システム学専攻、2.金沢大学理工研究域自然システム学系)

キーワード:有機炭素同位体比、低TOC、デュアルインレット、元素分析計/同位体比質量分析計(EA/IRMS)

海洋堆積物中の有機物の安定炭素同位体比(δ13Corg)は過去の海洋表層における一次生産性の増大や炭素循環など, 古環境変動の議論に有用なツールである. しかしごく微量しか有機炭素含有率(TOC)を含まない試料について汎用的な装置では有機炭素同位体比を測定することが困難であり, チャートのような遠洋性堆積物からの情報を容易に得ることができない.
本研究は, 微量有機炭素試料に加え低TOCの試料に関して, 連続フローシステムを有したオンラインの元素分析計/同位体比質量分析計(EA/IRMS)とガラス真空ラインでCO2ガスを精製しデュアルインレットタイプの安定同位体比質量分析計を用いるオフラインの方法についてδ13Corg分析の検討を行った. 検討にはEA/IRMSでは主に標準試料(L-alanine)を, デュアルインレット法では標準試料(ANU-Sucrose, L-alanine, Eicosane, Triphenylamine)を用いた.また両手法で天然試料としてチャートを用いた. 検討内容はEA/IRMSに関しては, 1) 出来るだけ微量でEAによるTOC分析を行うための検討, 2) 出来るだけ微量でδ13Corg測定を行うための炭素量と導入試料量をどこまで減らせるかについての検討, 3) 実際にチャートのδ13Corgが測定できるか,できないなら問題点は何か,の検討を行った. 検討の結果, EA/IRMS測定の炭素最適量は通常の1/5の量である10μgCまで減らして測定できたが, 低TOC(約0.006%)のチャート試料の場合, 導入試料量が多くなってしまうこと, 後続試料の分析に影響を与えること(メモリ―効果), そして装置へのダメージのため, EA/IRMS法はチャートの測定に不向きであると判断した. デュアルインレット法に関しては, 1)試料のCO2ガス量をどこまで減らせるか, 2) 微量測定時のδ13Corg値の安定性, 3) 複数の標準試料を用いた検量線, 4)実際の チャートのδ13Corg測定ができるか,の検討を行った. その結果, 標準試料分析では炭素量50μg未満でも500μgCを用いた通常分析とほぼ等しい値を得た. またチャート(~700mg)のδ13Corgは複数回分析で約1‰のずれが生じて安定しなかった.一方で低TOC(0.007%)に調整したL-alanine(約760mg)の分析と通常分析によるL-alanine(約0.1mg)のδ13Corg値のずれは約0.5‰であり, チャートより安定していた.オフライン燃焼と蒸留精製で得たCO2を用いるデュアルインレット法では50μgCかつ低TOCの試料について基本的には測定可能な状況に近づいたと言えるが,チャート分析にはチャートという岩石特有の問題が残されていると考えられる.