15:30 〜 16:45
[MIS16-P10] 水分活性が海底下微生物活動に与える影響 - IODP exp. 337下北八戸沖堆積盆地掘削コア試料を用いた考察-
キーワード:水分活性、IODP expedition 337、microbial activity、間隙率
水分活性は土壌や食品中はもとより、海底堆積物中の微生物の生育限界と増殖速度を評価するうえで重要な指標である。しかし、海底下深部における堆積物の水分活性はこれまでほとんど測定されていないため、海底下深部の水分活性と微生物活動との関係性はわからなかった。そこで本研究では、国際深海科学掘削計画(IODP)第337次研究航海で採取した八戸下北沖堆積盆地のコア試料を用いて、水分活性を測定して微生物活動との関係を考察した。水分活性の測定は、Lab Touch aw(Novasina社製)とWP4-T(Decagon Devices社製)を用いて温度25℃条件下で測定した。
海底表層近傍から海底下2450m深度において、堆積物と堆積岩の水分活性は0.96から0.98の範囲を示し、微生物の生息可能な水分活性としては十分高い値である(一般細菌の生育最低水分活性は約0.90で、また生育限界値が約0.65とする微生物も確認されている[Stevenson et al., 2015])。水分活性は微生物量をはじめ、深度・岩石の種類・間隙率との関係は明瞭には認められなかった。一方、水分活性 は堆積岩中の間隙水の塩分濃度と強い相関が認められ、塩分濃度が大きくなると水分活性が小さくなった。さらに、その相関はラウールの法則で説明できることがわかった。そこで水分活性と間隙水の化学組成の関係を用いて国内外のIODP掘削サイト4地点における水分活性と微生物量の相関を調べたところ、水分活性の増加とともに細胞数が減少する傾向が認められた。一見奇異に見えるこの関係は、微生物に必要な間隙水中に溶存している栄養と水分活性が比例していると仮定すれば説明できる。さらに、微生物量は堆積岩の間隙率およびNMRロギングから推定された自由水の割合に対しても強い相関が認められた。そのため下北沖堆積盆地海底下の微生物量は、微生物生育に必要なエネルギーの存在量とそのエネルギーの移動しやすさが影響していると考えられる。
海底表層近傍から海底下2450m深度において、堆積物と堆積岩の水分活性は0.96から0.98の範囲を示し、微生物の生息可能な水分活性としては十分高い値である(一般細菌の生育最低水分活性は約0.90で、また生育限界値が約0.65とする微生物も確認されている[Stevenson et al., 2015])。水分活性は微生物量をはじめ、深度・岩石の種類・間隙率との関係は明瞭には認められなかった。一方、水分活性 は堆積岩中の間隙水の塩分濃度と強い相関が認められ、塩分濃度が大きくなると水分活性が小さくなった。さらに、その相関はラウールの法則で説明できることがわかった。そこで水分活性と間隙水の化学組成の関係を用いて国内外のIODP掘削サイト4地点における水分活性と微生物量の相関を調べたところ、水分活性の増加とともに細胞数が減少する傾向が認められた。一見奇異に見えるこの関係は、微生物に必要な間隙水中に溶存している栄養と水分活性が比例していると仮定すれば説明できる。さらに、微生物量は堆積岩の間隙率およびNMRロギングから推定された自由水の割合に対しても強い相関が認められた。そのため下北沖堆積盆地海底下の微生物量は、微生物生育に必要なエネルギーの存在量とそのエネルギーの移動しやすさが影響していると考えられる。