17:15 〜 18:30
[MIS17-P02] 過去15,000年間における水月湖堆積物への元素状炭素供給量の変動
キーワード:元素状炭素、水月湖、完新世
過去のバイオマス燃焼は地質時代には大気中のO2濃度,植生,気候などの自然的要因によって制御されてきたが,完新世に入ってからは自然的要因だけでなく人間活動も影響している事が指摘されており,堆積物に含まれる元素状炭素(EC)を定量して,過去のバイオマス燃焼の変動を復元することが可能である.そこで本研究では,高精度・高解像度の年代モデルを持ち,後背地に12,000年前以降の人間活動の証拠が知られている水月湖堆積物SG12コアを用いてEC供給量の時代変化を評価した.また,ECはサブミクロンサイズのsootと粗粒なcharcoalに分類されるが,大気中を長距離移動しうるsootは堆積物中からはこれまでの研究では着目されていなかったので,堆積物試料を粒度分画した上でEC分析を行い,集水域から流入するcharcoalと大気経由で供給される可能性のあるsootを独立に評価することを試みた.EC分析にはエアロゾル分野で広く使われるThermal optical transmittance (TOT)法を用いた.
堆積物中ECの性質を評価するために,利尻島のエアロゾル試料,水月湖湖水・河川水試料と比較したところ,熱耐性のあるECの割合が,SG12コア試料の粗粒画分で高く,水月湖湖水・河川水試料に似ており,細粒画分ではその割合が低く,利尻エアロゾル試料に近い結果となった.よって粗粒画分が集水域由来の物質を反映し,細粒画分が大気降下物質を反映していることが示唆される.
SG12コアから復元されたECフラックスの年代変化を見ると,粗粒ECフラックスは約6500年前と約2500年前に増加する.しかし,縄文遺跡土壌中に見られる6500-4000年前のチャコールの急増に対応するECフラックスの変動は見られなかった.6500年前の粗粒ECフラックスの増加は,むしろ周辺の植生変化に対応しており森林被覆が減った為であると考えられる.一方,2500年前の急激な増加については弥生時代前期後半の若狭地方での稲作の定着が関連している可能性がある.細粒ECフラックスには周囲の植生変化に同調する変動は見られず,9500年前からのゆっくりした大きな減少と2500年前の大きな増加が特徴的である.これらの変化は,先行研究に示されたアジアモンスーン域のバイオマス燃焼指標の変遷と同調しており,細粒ECフラックスには大陸規模の燃焼史が反映されている可能性がある.
堆積物中ECの性質を評価するために,利尻島のエアロゾル試料,水月湖湖水・河川水試料と比較したところ,熱耐性のあるECの割合が,SG12コア試料の粗粒画分で高く,水月湖湖水・河川水試料に似ており,細粒画分ではその割合が低く,利尻エアロゾル試料に近い結果となった.よって粗粒画分が集水域由来の物質を反映し,細粒画分が大気降下物質を反映していることが示唆される.
SG12コアから復元されたECフラックスの年代変化を見ると,粗粒ECフラックスは約6500年前と約2500年前に増加する.しかし,縄文遺跡土壌中に見られる6500-4000年前のチャコールの急増に対応するECフラックスの変動は見られなかった.6500年前の粗粒ECフラックスの増加は,むしろ周辺の植生変化に対応しており森林被覆が減った為であると考えられる.一方,2500年前の急激な増加については弥生時代前期後半の若狭地方での稲作の定着が関連している可能性がある.細粒ECフラックスには周囲の植生変化に同調する変動は見られず,9500年前からのゆっくりした大きな減少と2500年前の大きな増加が特徴的である.これらの変化は,先行研究に示されたアジアモンスーン域のバイオマス燃焼指標の変遷と同調しており,細粒ECフラックスには大陸規模の燃焼史が反映されている可能性がある.