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[MIS17-P15] 岐阜県中部の完新世石筍の酸素同位体に記録された数百年周期
キーワード:石筍、完新世、酸素同位体
石筍の酸素同位体比は洞窟涵養地での降水の同位体比の長期的変化を反映しているケースが多い。これまでの私たちの研究は日本列島での石筍酸素同位体がアジアモンスーンの強弱を反映していると示してきた (Shen et al., 2010; Sone et al., 2013)。私たちは,岐阜県中部郡上市で採集した2本の石筍のU-Th年代と酸素同位体比の測定結果を報告する。そこに顕著な周期性を確認したので報告する。石筍OT02の先端5.3 cmとOT03の15.3cmの部分がカバーする2 kaから11 kaの結果は酸素同位体比に10回以上の増減を示す。増減の時間間隔はほぼ一定であり,スペクトル解析で判定された約650年の周期は放射性炭素から提示された太陽活動の周期と符合する。この周期性は小氷期や中世温暖期などの歴史的に認識された気候期の長さとも合う。石筍の酸素同位体比と太陽活動の位相の関係は想定される寒冷期に酸素同位体比が低くなることを示す。したがって,郡上石筍の酸素同位体比は温度変化ではなく,降水の酸素同位体比の変化に求められるだろう。参考資料として大垣市で採集した雨水の同位体比は冬季に低いという明瞭な季節変化を示す。これは日本海からの冬の水蒸気塊が中部地方に入る前に顕著なレイリー分別効果を受けるためであろう。すなわち,石筍記録は酸素同位体比が低い冬の降水が占める割合の変化であると考えられ,それは寒冷期に増加し,石筍同位体比を低下させる。同様の周期は三重県大台町の完新世記録にも現れる。この周期的変動は少なくともヤンガードリアスまで遡れるのかもしれない。
Shen, C.-C., Kano, A., Hori, M., Lin, K., Chiu, T.-C. and Burr, G.B. (2010) East Asian monsoon evolution and reconciliation of climate records from Japan and Greenland during the last deglaciation. Quaternary Science Reviews, 29, 3327-3335.
Sone, T., Kano, A., Okumura, T., Kashiwagi, K., Hori, M., Jiang, X., Shen, C.-C. (2013) Holocene stalagmite oxygen isotopic record from the Japan Sea side of the Japanese Islands, as a new proxy of the East Asian winter monsoon. Quaternary Science Reviews, 75, 150-160.
Shen, C.-C., Kano, A., Hori, M., Lin, K., Chiu, T.-C. and Burr, G.B. (2010) East Asian monsoon evolution and reconciliation of climate records from Japan and Greenland during the last deglaciation. Quaternary Science Reviews, 29, 3327-3335.
Sone, T., Kano, A., Okumura, T., Kashiwagi, K., Hori, M., Jiang, X., Shen, C.-C. (2013) Holocene stalagmite oxygen isotopic record from the Japan Sea side of the Japanese Islands, as a new proxy of the East Asian winter monsoon. Quaternary Science Reviews, 75, 150-160.