日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 古気候・古海洋変動

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、林田 明(同志社大学理工学部環境システム学科)

17:15 〜 18:30

[MIS17-P15] 岐阜県中部の完新世石筍の酸素同位体に記録された数百年周期

*栾 天1森 大器1狩野 彰宏1柏木 健司2 (1.九州大学大学院地球社会統合科学府、2.富山大学)

キーワード:石筍、完新世、酸素同位体

石筍の酸素同位体比は洞窟涵養地での降水の同位体比の長期的変化を反映しているケースが多い。これまでの私たちの研究は日本列島での石筍酸素同位体がアジアモンスーンの強弱を反映していると示してきた (Shen et al., 2010; Sone et al., 2013)。私たちは,岐阜県中部郡上市で採集した2本の石筍のU-Th年代と酸素同位体比の測定結果を報告する。そこに顕著な周期性を確認したので報告する。石筍OT02の先端5.3 cmとOT03の15.3cmの部分がカバーする2 kaから11 kaの結果は酸素同位体比に10回以上の増減を示す。増減の時間間隔はほぼ一定であり,スペクトル解析で判定された約650年の周期は放射性炭素から提示された太陽活動の周期と符合する。この周期性は小氷期や中世温暖期などの歴史的に認識された気候期の長さとも合う。石筍の酸素同位体比と太陽活動の位相の関係は想定される寒冷期に酸素同位体比が低くなることを示す。したがって,郡上石筍の酸素同位体比は温度変化ではなく,降水の酸素同位体比の変化に求められるだろう。参考資料として大垣市で採集した雨水の同位体比は冬季に低いという明瞭な季節変化を示す。これは日本海からの冬の水蒸気塊が中部地方に入る前に顕著なレイリー分別効果を受けるためであろう。すなわち,石筍記録は酸素同位体比が低い冬の降水が占める割合の変化であると考えられ,それは寒冷期に増加し,石筍同位体比を低下させる。同様の周期は三重県大台町の完新世記録にも現れる。この周期的変動は少なくともヤンガードリアスまで遡れるのかもしれない。

Shen, C.-C., Kano, A., Hori, M., Lin, K., Chiu, T.-C. and Burr, G.B. (2010) East Asian monsoon evolution and reconciliation of climate records from Japan and Greenland during the last deglaciation. Quaternary Science Reviews, 29, 3327-3335.
Sone, T., Kano, A., Okumura, T., Kashiwagi, K., Hori, M., Jiang, X., Shen, C.-C. (2013) Holocene stalagmite oxygen isotopic record from the Japan Sea side of the Japanese Islands, as a new proxy of the East Asian winter monsoon. Quaternary Science Reviews, 75, 150-160.