日本地球惑星科学連合2016年大会

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セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS34] 2016年熊本地震および関連する地殻活動

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

17:15 〜 18:30

[MIS34-P47] 布田川断層における地震断層露頭の予察的調査結果

*大橋 聖和1田村 友識1 (1.山口大学大学院創成科学研究科)

キーワード:平成28年熊本地震、断層露頭、条線、断層岩

これまで断層露頭の報告に乏しかった布田川・日奈久断層帯において,平成28 年熊本地震後に緊急調査を行った.その結果,今回の地震で活動したと考えられる計3 つの断層露頭(上陳,河原,および桑鶴露頭)を布田川断層に沿って発見し,記載を行ったのでここに報告する.
上陳(かみじん)露頭は,水田に地表変状が現れた益城町上陳(右横ずれ1 m程度が2条)と堂園(右横ずれ2 m程度)の中間地点に位置し,人工的な造成面(法面)が断層を境に右横ずれ変位している.2条の断層は南東側に分布する固結した凝灰角礫岩(阿蘇-4火砕流)と北西側に分布する崩積土との境界に位置しており,その境界面は直線的である.走向・傾斜はN66°E, 90°およびN87°E, 87°Nであり,累計90 cm以上の右横ずれ変位が認められる.崩積土中に発達する断層面にはほぼ水平方向で湾曲する非常に柔らかい条線が認められる.本露頭の南西延長部には作業道を2 m右横ずれ変位させる断層が露出しており,走向・傾斜はN59°E, 74°SEである.この断層面にも湾曲した条線が付着しており,すべりの前半に若干の正断層成分,後半に若干の逆断層成分を伴ったことを示す.断層の南東側に分布する阿蘇-4は,水平方向・鉛直方向ともに少なくとも10 m以上は追跡できず,阿蘇-4形成以降に10 m以上の累積変位があったことを示唆する.
河原(かわはら)露頭は布田川左岸斜面および河床に位置しており,左岸斜面には安山岩溶岩(大峰火山)と,スコリアを含む凝灰角礫岩(阿蘇-1〜阿蘇-3)との境界が認められる(写真4).いずれの岩石も,境界から50 m程度離れた地点ではよく固結しているが,境界近傍では軟弱になっている.地震に伴う崩壊,降雨による浸食が著しく,今回の地震で活動したことを示す直接的な証拠は得られていないが,境界面の北東延長部で道路の右横ずれと北盤側の沈降(重力性の可能性あり)が認められており,今回の地震で活動した部分である可能性が高い.左岸斜面より南西側に約50 mの河床には,弱いながらも面構造と線構造が発達する角礫帯が分布しており,走向・傾斜はN90°E, 72°N,線構造は中角で東に沈下する.角礫帯の幅は20 cm以上あり,面構造と線構造を伴うことから,断層角礫であると判断できる.この断層角礫は多少固結性を有することから,今回の地震で活動した部分ではなく,以前に形成されたものであると考えられる.
桑鶴(くわづる)露頭は,西原村小森桑鶴の小河川沿いに位置する.付近では道路および生垣が約50 cm右にずれており,そこから延びる地割れが露頭の直上にまで連続している.露頭では南東側に固結した凝灰角礫岩(恐らく阿蘇-4),北西側に弱く固結した崖錐堆積物(層理面はほぼ水平)が分布し,その境界は幅約40 cmにわたって非常に軟弱である.内部には,崖錐堆積物由来の基質中に凝灰角礫岩のブロックが分布し,腐植土の落ち込みも確認できる.これらのことから,この境界は断層であると判断できる.境界面の走向・傾斜はN74°E, 87°N(露頭上部)およびN78°W, 83°N(露頭下部)である.断層より南東側では崖錐堆積物が7.5 m程度上位に位置することから,崖錐堆積物形成以降,最低でも7.5 mの南東隆起の運動があったことが示唆される.

【熊本地震により亡くなられた方々,ご家族の皆様にお悔やみ申し上げますと共に,被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます.1日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます.】