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[MIS34-P67] 経験的グリーン関数法に基づく2016年熊本地震の震源モデルの推定-4月14日MJMA6.5の地震と4月16日MJMA7.3の地震-
キーワード:2016年熊本地震、強震動生成領域、経験的グリーン関数法
熊本県熊本地方の内陸地殻内で発生した2016年4月14日21時26分のMJMA6.5の地震以降, 2016年5月6日現在までに,熊本県熊本地方,阿蘇地方を震央とする地震によって,最大震度6弱以上を観測する地震は7回生じる等,熊本県から大分県にかけて活発な地震活動が続いている.特に,4月14日21時26分のMJMA6.5の地震(以降,最大前震)と4月16日1時25分のMJMA7.3の地震(以降,本震)では,いずれも最大震度7を観測した.これらの地震の震源域周辺で得られた強震記録には,それぞれ周期は異なるものの,大きな振幅をもつパルス状の波形が認められる.このような大きな地震動を生成したメカニズムを理解するために,これらの地震の震源像を明らかにする事は重要な課題の1つである.
本研究では,経験的グリーン関数法を用いた広帯域地震動シミュレーション(0.3-10 Hz)によって,2016年熊本地震の最大前震及び本震の強震動生成領域(SMGA; Miyake et al., 2003)からなる震源モデルを推定する.なお,いずれの地震に対しても,できる限り単純なモデルで広帯域の強震動を再現するために,SMGAは正方形で,背景領域からの寄与は無いと仮定した.また,波形合成のための要素地震の重ね合わせ数Nと,本震と要素地震の応力降下量比Cの値は,本震と要素地震のコーナー周波数をSource Spectral Ratio Fitting Method(三宅・他, 1999)によって推定した.本報はPreliminaryな解析として,SMGAの位置やパラメタは,波形インバージョンによる不均質すべりモデルを参考として,水平2成分の観測波形と合成波形のフィットが良いものを試行錯誤的に決定した.
はじめに,最大前震の地震動シミュレーションと震源モデルについて説明する.シミュレーションの対象とした観測点は,熊本県内の国立研究開発法人防災科学技術研究所強震観測網K-NET9点とKiK-net(地中記録)7地点の計16地点である.経験的グリーン関数(要素地震)には,2016年4月15日7時46分(Mw4.4)の余震を用いた.震源近傍の記録で2つのパルス状の波形が観測されていることから,最大前震の震源モデルは2枚のSMGAによって構成されていると仮定した.また,1番目のSMGAは,気象庁一元化震源カタログに基づく震源位置を含む領域に位置すると仮定した.推定の結果,SMGAの面積と応力降下量は,2枚ともに同じで,それぞれ16 km2,13.3 MPaとなり,内陸地殻内地震としては平均的な値となった.SMGAの位置は,1枚目が震源よりも北東側浅部に拡がりを持ち,2枚目のSMGAも1枚目より北東側浅部に求まった.従って,断層の北東側に位置する観測点は,横ずれ断層の破壊伝播が進行する方向にあたり,2枚のSMGAの破壊伝播の前方指向性効果(ディレクティビティ効果)が顕著に現れやすいと考えられる.主として断層北東側の観測点(KMM005,KMM006,KMMH16)で認められた大きな振幅を持つ2つのパルス状の波形は,2枚それぞれのSMGAのディレクティビティ効果によって再現された.一方で,断層南西側の観測点(KMM008)で確認された1つのパルス波形の再現性は不十分であり,今後の課題である.
次に,本震の地震動シミュレーションと震源モデルについて説明する.対象とした観測点は,最大前震と同じ16地点である.経験的グリーン関数(要素地震)には,2016年4月14日22時7分(Mw5.4)の前震を用いた.本震は1枚のSMGAによって構成されていると仮定した.推定の結果,SMGAは震源よりも北東側に10 kmの浅部に100 km2の大きさで求まった.本震のSMGAは,震源よりも北東側に離れた位置に1枚あることで,対象とした各観測記録の主要動部分は概ね再現が可能であると考えられる.SMGAの応力降下量は19.8 MPaとなり,内陸地殻内地震の平均的な値よりもやや大きめに推定された.最大前震と比較すると,本震は未だシミュレーションによる再現性が不十分な観測点も多く,特に震源近傍の記録の中には振幅が過大評価な地点もあるため,今後,応力降下量を含めたSMGA パラメタや経験的グリーン関数に使用する要素地震を精査し,より再現性の高い震源モデルを検討していきたい.
謝辞:国立研究開発法人防災科学技術研究所強震観測網K-NET,KiK-net,広帯域地震観測網F-netの強震記録,F-netのCMT解,及び気象庁一元化震源カタログの震源情報をそれぞれ使用しました.また,本研究は,平成28年度原子力施設等防災対策等委託費(地震動評価における不確かさの評価手法の検討)事業による成果の一部である.
本研究では,経験的グリーン関数法を用いた広帯域地震動シミュレーション(0.3-10 Hz)によって,2016年熊本地震の最大前震及び本震の強震動生成領域(SMGA; Miyake et al., 2003)からなる震源モデルを推定する.なお,いずれの地震に対しても,できる限り単純なモデルで広帯域の強震動を再現するために,SMGAは正方形で,背景領域からの寄与は無いと仮定した.また,波形合成のための要素地震の重ね合わせ数Nと,本震と要素地震の応力降下量比Cの値は,本震と要素地震のコーナー周波数をSource Spectral Ratio Fitting Method(三宅・他, 1999)によって推定した.本報はPreliminaryな解析として,SMGAの位置やパラメタは,波形インバージョンによる不均質すべりモデルを参考として,水平2成分の観測波形と合成波形のフィットが良いものを試行錯誤的に決定した.
はじめに,最大前震の地震動シミュレーションと震源モデルについて説明する.シミュレーションの対象とした観測点は,熊本県内の国立研究開発法人防災科学技術研究所強震観測網K-NET9点とKiK-net(地中記録)7地点の計16地点である.経験的グリーン関数(要素地震)には,2016年4月15日7時46分(Mw4.4)の余震を用いた.震源近傍の記録で2つのパルス状の波形が観測されていることから,最大前震の震源モデルは2枚のSMGAによって構成されていると仮定した.また,1番目のSMGAは,気象庁一元化震源カタログに基づく震源位置を含む領域に位置すると仮定した.推定の結果,SMGAの面積と応力降下量は,2枚ともに同じで,それぞれ16 km2,13.3 MPaとなり,内陸地殻内地震としては平均的な値となった.SMGAの位置は,1枚目が震源よりも北東側浅部に拡がりを持ち,2枚目のSMGAも1枚目より北東側浅部に求まった.従って,断層の北東側に位置する観測点は,横ずれ断層の破壊伝播が進行する方向にあたり,2枚のSMGAの破壊伝播の前方指向性効果(ディレクティビティ効果)が顕著に現れやすいと考えられる.主として断層北東側の観測点(KMM005,KMM006,KMMH16)で認められた大きな振幅を持つ2つのパルス状の波形は,2枚それぞれのSMGAのディレクティビティ効果によって再現された.一方で,断層南西側の観測点(KMM008)で確認された1つのパルス波形の再現性は不十分であり,今後の課題である.
次に,本震の地震動シミュレーションと震源モデルについて説明する.対象とした観測点は,最大前震と同じ16地点である.経験的グリーン関数(要素地震)には,2016年4月14日22時7分(Mw5.4)の前震を用いた.本震は1枚のSMGAによって構成されていると仮定した.推定の結果,SMGAは震源よりも北東側に10 kmの浅部に100 km2の大きさで求まった.本震のSMGAは,震源よりも北東側に離れた位置に1枚あることで,対象とした各観測記録の主要動部分は概ね再現が可能であると考えられる.SMGAの応力降下量は19.8 MPaとなり,内陸地殻内地震の平均的な値よりもやや大きめに推定された.最大前震と比較すると,本震は未だシミュレーションによる再現性が不十分な観測点も多く,特に震源近傍の記録の中には振幅が過大評価な地点もあるため,今後,応力降下量を含めたSMGA パラメタや経験的グリーン関数に使用する要素地震を精査し,より再現性の高い震源モデルを検討していきたい.
謝辞:国立研究開発法人防災科学技術研究所強震観測網K-NET,KiK-net,広帯域地震観測網F-netの強震記録,F-netのCMT解,及び気象庁一元化震源カタログの震源情報をそれぞれ使用しました.また,本研究は,平成28年度原子力施設等防災対策等委託費(地震動評価における不確かさの評価手法の検討)事業による成果の一部である.