日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS34] 2016年熊本地震および関連する地殻活動

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

17:15 〜 18:30

[MIS34-P83] 2016年熊本地震による益城町市街地での家屋被害の分布と地形・地質特性

*中澤 努1卜部 厚志2佐藤 善輝1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター、2.新潟大学災害・復興科学研究所)

キーワード:地震災害、家屋被害、地質セッティング

2016年熊本地震では,熊本県益城町周辺を中心に地震動に起因する甚大な家屋被害があった.演者らは,被害が特に深刻とされる益城町市街地において,地震被害と地形・地質特性の関係を検討するため,家屋被害分布調査を実施した.その結果,益城町市街地での被害分布は極めて特徴的であり,それらは地形・地質に密接に関係すると考えられたため,今回その概要を報告する.
調査は,益城町木山地区から広崎地区において,市街地を南北に横切る複数の道路沿いで,卜部ほか(2008)の調査手法に基づき,家屋一軒ごとに被害区分,家屋構造,地盤変状の有無などを記載することにより実施した.現地調査で得られたデータはGISを用いて整理し,被害分布と地形・地質との関係について検討した.
今回の調査によって,台地を開析する小谷沿いの傾斜地では,厚い盛土の側方移動・崩壊によって家屋が倒壊している箇所が多く認められた.しかし,調査地全域からみると,そのような盛土の側方移動に起因する家屋被害は谷沿い等の傾斜の大きい地域に限定される.また,一般に河川沿いの低地は地盤が悪いとされるが,調査地域の秋津川沿いの低地では,家屋被害はさほど顕著ではなかった.一方で,益城町の市街地の大半は台地縁辺部のなだらかな階段状の緩傾斜地に分布するが,今回の調査で,家屋被害はその緩傾斜地の下半部に集中していることが明らかになった.ここではほとんどのケースで家屋被害の直接の原因となるような地盤変状(側方移動等)は認められない.つまりここでの家屋被害のほとんどは,初生的な地盤特性を反映した,地震の強い揺れによるものと考えられる.
本調査地域の台地は主に阿蘇4火砕流堆積物によって形成されているが(星住ほか,2004),既存ボーリングデータに基づけば,表層にはN値が概ね5以下の凝灰質粘土層が比較的厚く分布する.この軟弱な凝灰質粘土層は場所により層厚が大きく変化することが予想されるが,被害甚大地域ではこの粘土層の層厚が厚い,あるいはより軟弱な特性をもつ可能性がある.今後,微動アレイ調査等を実施して,軟弱層の分布形態を明らかにし,緩斜面の形成プロセスを考察したうえで,被害分布と地形・地質との関連を検討していきたい.

卜部厚志ほか(2008)2007年新潟県中越沖地震による建物被害と地盤災害.新潟大学災害復興学センター年報,2,135–163.
星住英夫ほか(2004)20万分の1地質図幅「熊本」.産総研地質調査総合センター.