17:15 〜 18:30
[MTT28-P03] レーザーイオン化ナノ質量分析計(LIMAS)の多重周回飛行時間型質量分析計の評価
キーワード:SNMS、TOF、レーザートンネルイオン化、質量分解能、イオン透過性、ユースフルイールド
はじめに:レーザーイオン化ナノ質量分析計 (LIMAS) は,原子のトンネルイオン化を利用したスパッタ中性粒子質量分析計(SNMS)である.この装置は,サンプルリターンミッション(はやぶさミッション(JAXA)やGenesisミッション(NASA))により収集された地球外物質中に含まれる太陽風起源粒子を測定するために開発された(Bajo et al., 2015) .LIMASは,液体ガリウムイオン源,ナノメートルスケールの領域をスパッタするための収差補正システム,スパッタ粒子をトンネルイオン化させるためのフェムト秒レーザーシステム,質量分離のための多重周回飛行時間型質量分析計(MULTUM II)からなる(Ebata et al., 2012) .我々は,イオン導入光学系とMULTUM IIで決定されるLIMASの質量分解能とイオン透過性を評価した.
実験手順:最初に,イオン導入光学系のイオン軌道のシミュレーションを行い,その後,各レンズの最良値を決めるための実験を行い,イオン導入光学系の最良パラメータを設定した(L1レンズが-700 V, L2レンズが-3300 V。 1段目と2段目のアインツェルレンズがそれぞれ-1260 Vと-2700 V ).その後,24Mg2+イオンをもちい、LIMASの質量分解能とイオン透過性を評価した.各周回の取得データは1000ショット分のデータを積算平均したデータである.最終的に,Siイオンの深さ方向分析から,LIMASの各周回のユースフルイールドを見積もった.スパッタされたクレーター体積は,レーザー顕微鏡により測定した.
結果と考察:飛行時間型質量分析計の質量分解能は,飛行時間 ”t” とイオンパケットの幅 “Δt” によって決定される(R = t/2Δt).実験の結果,LIMASの質量分解能は飛行時間1000 µs (200周)まで増加した.しかし,1000 µs以降は,周回増加に比例してFWHMが増加するため,質量分解能が飽和状態になった(R = ~105).FWHMの増加は,周回増加にともない,イオンパケットの到達時間のズレが大きくなったことにより生じたものであった.イオンパケットの到達時間のズレの要因として,1) イオン導入光学系内への引き込みのタイミングのズレ(ΔtL1),2) 加速電圧のゆらぎ(ΔU),3) MULTUM II内のセクター電極電圧のゆらぎ(ΔE)の3つがある.
この中で,飛行時間増加に伴ってFWHMを変化させる因子は,ΔUとΔEである.実際に,電極電圧のゆらぎの実測を行った結果,ΔEに5 ppmのゆらぎがあることが明らかとなった.これは,質量分解能が飽和状態となった値(R = 105)に相当する.したがって,MULTUM II内のセクター電極電圧のゆらぎがFWHMの増加の主な要因であると考えられる.これらのゆらぎの影響を補正するために,我々は新しい質量スペクトル取得法を開発した.この新しい補正法により,FWHMは周回数にかかわらず一定となり,質量分解能は理論通りに増加した.その結果,1000周(飛行距離1312 m)時に620,000の質量分解能を達成した.
LIMASのイオン透過性は20周を境に2つに分けられ、20周までのLIMASのイオン透過性は,60-70 %まで減衰した。20周以降は,1周あたりのイオン透過性が一定となった(99.96 %).
LIMASのユースフルイールドを見積もった結果,Siイオン30周(R = 17,000)で3×10-3,1000周(R = 620,000)で2×10-3となった.この値は,Cameca ims 6fのUYである7×10-3 (R = 4,000)と同等の結果を示した(Hervig,. et al 2006) .
実験手順:最初に,イオン導入光学系のイオン軌道のシミュレーションを行い,その後,各レンズの最良値を決めるための実験を行い,イオン導入光学系の最良パラメータを設定した(L1レンズが-700 V, L2レンズが-3300 V。 1段目と2段目のアインツェルレンズがそれぞれ-1260 Vと-2700 V ).その後,24Mg2+イオンをもちい、LIMASの質量分解能とイオン透過性を評価した.各周回の取得データは1000ショット分のデータを積算平均したデータである.最終的に,Siイオンの深さ方向分析から,LIMASの各周回のユースフルイールドを見積もった.スパッタされたクレーター体積は,レーザー顕微鏡により測定した.
結果と考察:飛行時間型質量分析計の質量分解能は,飛行時間 ”t” とイオンパケットの幅 “Δt” によって決定される(R = t/2Δt).実験の結果,LIMASの質量分解能は飛行時間1000 µs (200周)まで増加した.しかし,1000 µs以降は,周回増加に比例してFWHMが増加するため,質量分解能が飽和状態になった(R = ~105).FWHMの増加は,周回増加にともない,イオンパケットの到達時間のズレが大きくなったことにより生じたものであった.イオンパケットの到達時間のズレの要因として,1) イオン導入光学系内への引き込みのタイミングのズレ(ΔtL1),2) 加速電圧のゆらぎ(ΔU),3) MULTUM II内のセクター電極電圧のゆらぎ(ΔE)の3つがある.
この中で,飛行時間増加に伴ってFWHMを変化させる因子は,ΔUとΔEである.実際に,電極電圧のゆらぎの実測を行った結果,ΔEに5 ppmのゆらぎがあることが明らかとなった.これは,質量分解能が飽和状態となった値(R = 105)に相当する.したがって,MULTUM II内のセクター電極電圧のゆらぎがFWHMの増加の主な要因であると考えられる.これらのゆらぎの影響を補正するために,我々は新しい質量スペクトル取得法を開発した.この新しい補正法により,FWHMは周回数にかかわらず一定となり,質量分解能は理論通りに増加した.その結果,1000周(飛行距離1312 m)時に620,000の質量分解能を達成した.
LIMASのイオン透過性は20周を境に2つに分けられ、20周までのLIMASのイオン透過性は,60-70 %まで減衰した。20周以降は,1周あたりのイオン透過性が一定となった(99.96 %).
LIMASのユースフルイールドを見積もった結果,Siイオン30周(R = 17,000)で3×10-3,1000周(R = 620,000)で2×10-3となった.この値は,Cameca ims 6fのUYである7×10-3 (R = 4,000)と同等の結果を示した(Hervig,. et al 2006) .