日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT30] 統合物理探査

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*茂木 透(北海道大学大学院理学研究院付属地震火山研究観測センター)、山中 浩明(東京工業大学大学院総合理工学研究科)、中里 裕臣(農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所)、山下 善弘(応用地質株式会社)

17:15 〜 18:30

[MTT30-P01] 地熱貯留層探査技術フィールド実証試験
―山川地熱地域における3次元弾性波探査について―

福田 真人1、*青木 直史2新部 貴夫2佐藤 馨2阿部 進2 (1.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2.株式会社地球科学総合研究所)

キーワード:地熱、山川、断裂、フラクチャー、3次元、地震探査

国内の地熱貯留層の多くは縦型の断裂系と称される高傾斜の断層からなり、地熱資源開発の初期段階ではその位置や構造形態を詳細に把握することが重要となる。しかしながら、地下構造の探査は不確性を伴うため、想定していた位置に地熱貯留層が存在しないといったリスクが存在している。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源が地熱発電技術研究開発事業として実施する地熱貯留層探査技術開発では、弾性波特性を用いた断裂系探査技術と他の探査データの総合解析手法により、地熱貯留層の位置や形状を高精度で捉える技術の開発を行っている。平成27年度にはフィールド実証試験として、鹿児島県山川地熱地域において弾性波探査が実施された。
山川地熱地域は阿多カルデラ(Matumoto, 1943)内部に位置する地熱地帯にあたり、地熱発電が1995年(平成7年)より行われている。貯留層はフラクチャーネットワークが形成された比較的透水性の良い地層より構成されており、特に優勢な貯留層は生産領域中央に貫入した石英安山岩の周辺に分布することが判明している。実証試験では石油分野において掘削成効率の向上に多大な貢献を果たしている3次元弾性波探査が実施された。調査エリアは約36km2(東西約8km、南北約4.5km)であり、データ収録は有線テレメトリー方式と独立型の探鉱器を併用し、振源にバイブレーターを用いて実施されている。本実証試験の目的は地熱貯留層の詳細構造把握に弾性波探査が有効であることの実証に加え、取得データにおいて受発振点の間引きテストを実施し、国内の地熱地域の多くが位置する山岳部での弾性波探査における課題である疎なデータ取得配置の影響を掌握し、費用対効果に優れるデータ取得配置を提案することにあった。本調査におけるデータ取得配置は間引きテストを想定し、山川発電所を中心とする約12km2(東西約4 km、南北約3 km)のエリアの受発振点密度が高められているほか、受発振点間隔10mによる東西8 kmの稠密2次元測線の抽出が可能なデザインが採用されている。
取得データは、総受振点数が4,989点、総発振点数が3,262点であった。受振測線は全体の62.8%に当たる3,134点で有線式システムが、残りの37.2%に当たる1,855点で独立型探鉱器が使用されている。センサーはジオフォンが使用された。発振作業は大型バイブレーター(18t)と中型バイブレーター(7.4t)をそれぞれ4台導入して行われた。調査地域の平野部では農耕が盛んであり、区画整理により網目状に整備された農道は発振点の確保に寄与した一方、埋設管が設置されている区域では状況に応じ出力や台数が制限された。大型バイブレーターは全体の30.2%に当たる988点で使用され、残りの69.8%に当たる2,274点で中型バイブレーターが使用されている。振源周波数の低周波数側への拡張を目的にMaximum Displacement Sweep(MDスウィープ)を採用し、大型バイブレーターでは3-60Hz、中型バイブレーターでは4-60Hzの発振が行われた。スウィープ長は16秒、標準スウィープ回数は3または4回/点としたが、同時に解析が行われる屈折法データの品質向上を目的とする高エネルギー発振(8または12回)が、全発振点の19%に当たる622点(屈折法77点を含む)で設定されている。
データ解析が現時点(平成28年2月)で進行中であり、中間成果として通常処理フローに基づく反射法重合記録とともに屈折トモグラフィー解析結果が得られている。これら解析結果には当地域での活発な火山活動を反映した複雑な地質構造が描き出されており、既往データとの高い整合性も示されている。今後は間引きテストを通じて直交配置、並行配置などの3次元測線と2次元測線の比較を実施するほか、次期はFull Waveform Inversionやアトリビュート解析等の高精度解析とともに、坑井情報や重力・MT等の他の探査データとのとの総合解析の実施などが検討されている。