日本地球惑星科学連合2016年大会

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[O-02] 高校生によるポスター発表

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、久利 美和(東北大学災害科学国際研究所)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山田 耕(早稲田大学政治経済学術院)

13:45 〜 15:15

[O02-P38] 自作電波望遠鏡を用いた太陽電波観測

*鈴木 洋佑1齋藤 遥香1 (1.福島県立磐城高等学校)

キーワード:太陽電波、気象条件、自作電波望遠鏡

1 研究動機
私たちは電波望遠鏡を自作し、太陽電波を観測した。そして日々の観測の中で太陽電波が時間の経過とともに太陽電波の値が変化していることに気づいた。その理由を探るため、気象条件と太陽電波との関係性を調べた。今回は特に太陽電波と水蒸気量・気圧・天候の3点との相関に着目して研究を行った。
2 研究方法
WeatherLinkというソフトを用いて水蒸気量と気圧を観測、記録し、自作電波望遠鏡で観測した太陽電波の値と比較した。場所は太陽電波を遮るものがない屋上で、衛星の軌道にかぶらない朝に7時45分からアンテナの向きを太陽に合わせて観測した。観測日数は3月3日から3月29日までの観測が可能であった計11日間である。
3 仮定
1GHzから10GHzまでの周波数帯は電波の窓と呼ばれていて電波観測に適し、宇宙雑音が多い1GHz以下の電波と雲や雨、大気に吸収されやすい10GHz以上の電波を除いた周波数帯のことを表す。私たちが観測している電波は12GHzで、雲や雨、大気に吸収される周波数帯に属する。そのため、水蒸気量が増えて水分子が増加したり、気圧が高くなって大気の密度が大きくなったりすると、水蒸気や大気が電波を吸収して、太陽電波の値が下がると考えた。また天候に関しても、雲が電波を吸収することで曇りの日は晴れの日より太陽電波の値が下がると予想した。
3 結果と考察
水蒸気量と太陽電波の関係については、水蒸気量が増えると太陽電波の値が高くなるという結果になった。これは私たちの予想と反対の結果となった。私たちは仮説として水蒸気量が増加すると空気中の水分子が増え、電波を吸収するのではないかと考えたが、今回の結果を見て水蒸気量が増えることによって電波が大気中で屈折し、屈折した電波がアンテナに集められることで値が高くなるのではないかと考えた。大気の屈折率は水蒸気量、気温、気圧に影響するため、屈折率の計算式に観測した水蒸気量、気温、気圧を代入し、観測した太陽電波の値と比較した。ただし屈折率の変化は非常に小さいので,その変化を明瞭にするために、次のように表される屈折指数を用いた。
n=1+N*10^-6 n:屈折率 N:屈折指数屈折
指数の計算式は次のとおりである。
N=77.6*(p+4810*e/T)/T p:気圧[hPa] e:水蒸気分圧[hPa] T:絶対温度[K]
屈折指数を求めた結果、屈折指数と太陽電波の値には正の相関関係があることが分かった。このことから、大気によって電波が屈折し、太陽電波の値が高くなることが示された。
気圧と太陽電波との相関はあまり見られなかった。この理由は2つ考えられる。1つ目に、気圧の最も低い日が1010.6hPa、最も高い日が1029.1hPaでその差は小さく、太陽電波を吸収する大気の量があまり変化しないためだと考えた。2つ目に、先に述べたように気圧は屈折率と比例の関係があるが、水蒸気と屈折率との関係の方がより大きいため、太陽電波の値と気圧との関係があまり見られなかったからだと考えた。
天候と太陽電波の関係については、曇りの日は晴れの日に比べて太陽電波の値が低いことが分かった。これは初めにたてた予想と同じように、雲が電波を吸収することで電波の値が低くなったのだと考えた。しかしその後に述べた、水分子が増加すると屈折によって太陽電波の値が高くなるという考察とは逆の結果になった。これは、雲は大気中の水蒸気に比べて水分子の量が多いため、電波は屈折する前に雲によって吸収され、太陽電波の値が低くなったのだと考えた。このため、水蒸気量が多いと太陽電波の値が高くなり、雲がある時は太陽電波の値が低くなるのだと考えた。
4 まとめ
太陽電波と気象条件との関係を調べた結果、大気中の水蒸気量が増えると、電波が屈折することでアンテナに電波が集められ、太陽電波の値が高くなることが分かった。曇りの日は雲が電波を吸収することで太陽電波の値が低くなることが分かった。また、気圧との相関はあまり見られなかった。5 今後の展望大気による吸収の影響を調べるため、気圧との関係を大気の屈折率がほぼ同じ日を比較して調べたいと思う。加えて太陽電波に影響を及ぼす他の要因についても調べたいと思う。また、赤道儀を用いることで太陽電波を一日を通して観測し、太陽フレアの観測や時間の経過による太陽電波の変化について調べていきたいと考えている。